サラリーマン、給料天引きが増えても黙っているのはなぜ? --- 井上 孝之

2019年05月12日 06:00

消費税の増税についての投稿、思うところを記して投稿します。

写真AC:編集部

私の不満のポイントは「消費税が増税されて、レジで支払う金額が増えて大変だ〜」という安直なスタンスの報道番組が多いことです。これでは私の知りたい情報は得られません。

単純に「消費税の増税に賛成か?」と問われれば、レジであと2%余分に払いたい人はいないので、全員が反対のはずです。ここで有権者として考えるべきポイントは「レジであと2%余分に払うこと(その結果として起こる景気の停滞も含む)」と「別のところで起こる別の問題」のどちらが痛みが小さいのかという比較の問題であると思っているのですが、そのような観点の報道はほとんどありません。

たぶん、テレビ局が視聴者の知的水準を考えればそのような観点で番組を作っても視聴率は取れないと考えているのかもしれませんが、果たして本当にそうでしょうか? 有権者は自分の将来がかかった問題としてバランスの取れた報道に飢えているように思います(少なくとも私はそう思っています)。それともテレビ局の記者の知的水準が劣化してそのような企画を思いつかないのでしょうか?

さて、私は経済についても財政についても大した知識があるわけではありませんが、「別のところで起こる別の問題」として下記のようなことが思いつきます。

①給料から天引きされる金額が増える

消費税を増やせないので、我々サラリーマンの給料から天引きされる社会保障費がこっそりと増やされています。ちなみに、私は今となっては絶滅危惧種となった年功序列賃金をもらっている人間なのですが、毎年、給料が少しずつ増えても、天引きされる金額が増えて相殺されるので、手取り額はほとんど増えない(というか、むしろ減っている)という状況が続いています。

多分、給与から天引きされない人たちの分の社会保障費もサラリーマンが負担させられているので、サラリーマンにとっては、「消費税を増税して、社会全体で負担させた方が得」だと思われるのですが、サラリーマンからそのような声は出ません(テレビ局の職員もサラリーマンのはずですが・・・)。

私のような年功序列賃金でない人たちは、目に見えて手取り額が減っているように思われますが、彼らが声を上げない理由は何なのでしょうか? 彼らは給料から天引きされている社会保障費が増えていることに気付かないのでしょうか?

サラリーマンの私にとってはこれぞまさしく「真に恐ろしい敵は有能な敵ではなく、無能な味方」状態です。「気づけよ、サラリーマン! サラリーマンにとっては消費税が増税された方が得なのだ」と叫びたくなります。

サラリーマンは本当に「たとえ、給料から天引きされる社会保障費が増えても、店頭で払う消費税は増やしたくない」と考えているのでしょうか?

「社会保障費を給料の天引きで支払うのか、消費するときに店頭で支払うのか」、あるいは、「社会保障費をサラリーマンに重点的に負担させるのか、社会全体で広く負担するのか」は国民にとって重要な判断事項ですが、その判断に必要な情報を提供しない報道番組はその社会的な役割を果たしていないと考えています。

②財政破綻が起こる

ずっと前から「政府債務が増えれば、財政破綻が起こる」と言われていますが、財政破綻が起こる兆候は全くありません。20年後も30年後も政府債務が増えながらも財政破綻は起こらないまま時間が過ぎていくのではないかとすら思えてしまいます。

ここで、有権者にとっては、「財政破綻にリスクを犯して消費税率を低めに抑えるのか」と「景気低迷のリスクが増えても財政破綻のリスクを小さくするのか」という選択をしなければならないのですが、それを判断するための情報提供はありません。

この議論が深まらないのは、経済学者が政府債務の限界額や財政破綻が起こらない条件を見極められていないことが大きいと思われます。また、財政破綻が起こったときにどのくらいの痛みがあるのかもよく分かりません。議論をするために必要な知見が整理されていないのでは、議論のしようがありません。

経済学者はせめて有権者が選挙で判断するために必要な知見の整理ぐらいはすべきと考えますがいかがでしょうか? この「最低限の知見の整理すらない状態」が「消費増税なんかしなくても(あるいは、消費税を減税しても)、問題ない」というような暴論を根拠もなく語るコメンテーターがテレビに出続けている理由だともいます。

現状は「(政府債務を増大させるという)悪いことをしているはずだがなぜか問題は起こらない」という状態ですが、「問題が起こらないのだから悪いことを続けてもいい(あるいは、問題が起こらないのは政府債務を増大させることは悪いことではないからだ)」と考えるのか、「悪いと思われることはできる限りやらない方向で努力する」と考えるのかの日本国民の選択が問われていると考えています。

③軽減税率の仕組みが定着してしまう

10月に消費増税が実施されれば、それに伴って現状の消費増税に組み込まれている軽減税率も実施されて、日本の制度として定着してしまいます。

この軽減税率を「バカを納得させるためには必要な仕組み」と割り切るのか、「問題が大きいから、一度リセットして考え直すべき」を判断する最後のチャンスなのですが、その判断に必要な情報を提供する報道もありません。テレビ局が「軽減税率で利益を受ける新聞社の傘下だから」ということもあるかもしれませんが、責任ある報道を求めたいと考えています。

最後に:消費税増税の延期論者への質問

テレビで「消費増税なんかしなくても(あるいは、消費税を減税しても)、問題ない」と言っているコメンテーターは、私の眼には「耳触りのいいことを言っておいて、問題が起こっても責任を取らない無責任な奴ら」にしか映らないのですが、彼らは視聴者に耳触りのいいことを言うので重宝されています。

どなたか、彼らに次の問いを聞いてもらえないでしょうか? これら問いに明確に答えられなければ、彼らはただの詐欺師だと考えています。

  • 現状の日本における最適消費税率とは何%か?
  • どこまで財政赤字を増やしても許容されるのか?
  • 将来、消費税を増やすことに切り替える場合、そのきっかけとなる出来事(あるいは指標)とは何か?
  • その根拠となる経済理論は何か?

井上  孝之
最近、10年以上前の給与明細を見つけて、税金も社会保障費も今より格段に少なかった(その当時は景気浮揚策としていろいろな減税処置があった)ことを気づいて愕然としている技術系サラリーマン

おしらせ:「消費増税に賛成?反対?」の原稿を募集中です

官邸サイトより:編集部

アゴラでは5月、「消費増税に賛成?反対?」をテーマに原稿を公募中です。

自民党の萩生田幹事長代行が4月18日、インターネットテレビで10月の消費税増税が延期される可能性に言及。安倍首相の側近である萩生田氏の発言の真意を巡って憶測が広がり、永田町やメディアは衆参ダブル選挙のシナリオも含め、連休前の政局が緊迫しました。萩生田発言の後も、政府はリーマンショック級の事態がない限りは増税の方針を堅持していますが、超高齢化に伴う社会保障コスト増大は避けられません。果たしていまの日本は増税すべきなのか?皆さんのご意見をお聞かせください。

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