赤ちゃんの病気がわかった妊婦支えるクラウドファンディング

2019年05月14日 06:00

去る3月、「新型出生前診断」として知られるNIPT(non-invasive prenatal genetic testing)の施設要件緩和の新しい方針案が日本産婦人科学会より出され、各社でニュースとなりました。これを受けて、現状の問題点について、ほかのメディアでも記事を書きました

新型出生前診断拡大を前に必要な支援とは。どんな「選択」も尊重する体制を(ビジネスインサイダー)

新出生前診断の施設拡大。それで孤立する妊婦は救われるのか?(ビジネスインサイダー)

NIPTとは、妊婦の採血で胎児のDNAを検出し、ダウン症などの染色体異常を高い感度、特異度で検出する検査であり、その簡便さと高い精度から、近年検査を受ける人が増えています。

わが国では、長らく、出生前診断・出生前検査にかかわることはタブー視されてきました。それは、1999年に厚生科学審議会先端医療技術評価部会が、当時出生前検査として行われ始めた母体血清マーカー検査に関して、「妊婦に検査の情報を知らせる積極的に知らせる必要はない」という方針を出したことも関連しています。

また、これまで、「検査を受けることは優生学につながる」といった報道が繰り返されてきて、出生前検査に関して、妊婦にあまり情報が与えられないまま、漠然と、「検査を受けることはいけないことだ」という罪悪感が醸成されてきたと言っても過言ではありません。

前述の他メディア執筆の際にお話を伺ったNPO法人「親子の未来を支える会」の林伸彦医師は、「『健康な赤ちゃんを授かりたい』という気持ちをもつことは、誰もがもつ自然な気持ちで、必ずしも優生学とつながるものではないと思います」と語りました。林医師は、出生前検査によって生じる家族の不安や葛藤に寄り添うイギリスの支援団体「Antenatal Results and Choices(ARC)」で研修した経歴を持っています。

林伸彦医師(写真左、ARCスタッフと):本人提供

現在、日本でも、高齢出産が増え、出生前検査・出生前診断への関心が高まっています。しかし、日本では上記の経緯があったために、検査に関して、正確な情報を提供する体制や、必要に応じた妊婦への支援体制が整っていると言いがたい現状があります。

胎児の疾患がみつかり、ひとりで悩んでいる妊婦さんも多くいます。林医師はこれまで、NPOの活動で、「ゆりかご」という、出生前検査前後の方や、妊婦健診のなかで赤ちゃんの病気がわかった方などが利用できる掲示板を運営してきました。その掲示板は、匿名で書き込むことができ、同じような病気や障がいと関わる家族や専門家とつながりをもつことができる仕組みでした。

「ゆりかご」への相談は多岐にわたり、検査結果を受け入れられないという方や、夫婦での意見が異なっているという方、次の妊娠に向けてできることはないかと模索している方、子育てにかかるお金の不安を持つ方などから相談がありました。

同NPO法人は、このたび「胎児ホットライン」として事業再編をし、現在運営している「ゆりかご」のほか、電話やLINEなどによる相談窓口も設置する予定とのことです。まずは第一歩として、妊娠を続けるときに役に立つ情報、妊娠を中断するときに役立つ情報をまとめたブックレットを作成しています。次に、その選択が周りの人達に理解されるように、色々な立場の人が使えるブックレットを作成し、また、いずれは、医療従事者への勉強会なども行っていく予定とのことでした。

同NPO法人は現在、クラウドファンディング「−1才(うまれるまえ)の命に向き合うお手伝い、“胎児ホットライン”設立へ」(5月15日まで)を行っています。

Ready forより:編集部

林先生の活動が、悩んでいる妊婦さんたちの支えになり、徐々に周知され、日本でも、情報提供と支援体制が整うことを願わずにはいられません。

松村 むつみ
放射線科医・医療ジャーナリスト
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松村 むつみ
放射線診断医、医療ジャーナリスト

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