新たな依存症に認定!「ゲーム障害」

田中 紀子

いらすとや

昨日(5月25日)、嬉しいニュースが飛び込んできました。
WHO(世界保健機関)が「ゲーム障害」を新たな依存症として正式認定したというのです。

これでアルコール・薬物・ギャンブルと並んで、治療が必要な疾病となり、診断例が増えて、研究が進むのではないかと期待されています。

よかった~!
これで国内でもゲーム依存の支援や受け皿が1歩前進するとホッとしています。

このゲーム依存の認定、なんせ世界と足並みが揃わなければならない訳で、しかも途中、他国で業界側の反発などもあったと聞いており、最後まで「ど~なるんだろ…!?」とハラハラドキドキしておりました。

なにはともあれ無事認定されて本当によかったです。

ゲーム依存はこれまでの依存症より格段に若いうちから発症するというのが、何といっても大問題です。
昨年8月に厚生労働省から発表された国内の調査では、病的なインターネット依存は、中高生のおよそ14% 93万人と発表され、5年前の調査よりほぼ倍増しており関係者に衝撃を与えました。

ネット依存 中高生の14% 厚労省推計 5年で倍増の93万人に(東京新聞)

これはゲームだけでなく、SNSなどの依存も含むインターネット全般の依存調査だったので、高めに出たということもあるかと思いますが、14%って!すんごい罹患率ですよね。

若者の前途がネット・ゲームで閉ざされていく弊害を、なんとか少しでも食い止めていかなくてはなりません。
ただでさえ少子化なのに、この上、依存症で子供達の力を奪われたのでは、国力だって衰えるばかりです。

さて、このWHOがゲーム障害と認めてくれるとどんなメリットがあるかというと、まず診断基準がハッキリしたので、クリニックや病院の先生方がゲーム障害を診てくれるようになります。

では、その診断基準とは何か?
WHOが提示した主な診断基準は以下の3つです。

〇ゲームの時間や頻度をコントロールできない
〇日常生活の中で他の活動を差し置いてゲームを最優先する
〇生活に支障が出ているのにゲームを続ける

どうですか?子供達に限らずあてはまる大人も多いのでは?
「ヤバいな~」と、グサっときた方は、引き返せるうちに引き返しましょう。
「ゲームのやり過ぎで、会社を休んでしまうことがある」なんて人は、もう黄色信号ですから、専門医にかかることをお勧めします。

そして、診断できるようになると症例が増え研究が進み、予防法や対処法が開発されてくるようになるわけです。
現在、ゲーム依存を診てくれるクリニックや病院は本当に少ないです。しかも、診てくれる所も、予約は何カ月も先だったり、新患はもう受け付けません!なんて所もあります。

私たち、ギャンブル依存の家族の中にも、子供のゲーム依存の問題は起きていて、何が困るって、この受け皿が全くない事なんですね。思春期外来は依存症を診ないし、依存症外来は思春期を診ない…

どうしたらいいの!ってな状況があって、仕方なく夫のギャンブル問題を診て貰ったクリニックに頼みこむ!
みたいな状況になっています。

頼みこまれた先生だって、すぐになんとかできるものでもないですしね。
結局、右往左往する時間がすごく長いんですよね。

あと民間団体も殆どありませんが、もし私たちが今後対応していくにしても、中高生にできることって制限も多く、難しいですよね。大人なら「回復施設に行きましょう!」と言えますけど、そういう訳にいかないですもんね。

まだまだ、これからセーフティネットが整備されていくような状況で、今、困難の真っただ中にいる方々は、途方に暮れている方も多いかと思います。

でも、これで一歩進んだことは間違いないですし、我々依存症に関わる民間団体も「ゲーム依存、なんとかしなくては!」と、動いてはいますから、力をあわせて関係各位に働きかけて参りましょう。

まずは、とりあえず全国にある精神保健福祉センターが入口になるかと思いますので、今、お困りの方はこちらにお問い合わせされてはどうかと思います。

全国の精神保健福祉センター一覧(厚労省HPより)

まずはゲーム依存症に苦しむご家族だけでも、ご相談に行かれることをお勧めします。


田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト