トランプ大統領が令和最初の国賓として来日中だ。「おもてなし」の度合いが話題になっているようだ。「属国論者」がこの機会を喜んでいるはずがないのは、想像するまでもない。
昨今は「日本は米国の属国だ」をテーマにした本が何冊も出ていて、プチブームのようになっている。米国を特別待遇することを感情的に許すことができない層の人々が、高齢者層であるかどうかは知らないが、日本に一定数いるのは確かなようだ。トランプ大統領の来日とは無関係に、とにかく日本はアメリカの属国、と主張する「属国論者」の方々である。
だが日本にとってアメリカが特別な国であることは、誰でも知っている端的な事実だ。ほとんどの国民は、それを知っている。それが嫌なら、中国にお世辞を使って上海協力機構に入れてもらったり、欧州人にお世辞を使ってEUやNATOにでも入れてもらったりするなどの代替案を考えければならない。それらがいずれも現実離れした代替案でしかないことを、国民のほとんどは知っている。
トランプ大統領は、日米の「特別な関係」を発信し、「歴史的時期に唯一の主賓」などと語ってくれている。アメリカ人の多くが、米中間の「新冷戦」の不可避性を語る緊張した時期に、そのように言っているのである。国力が停滞し、未曽有の人口減少時代に突入し始め、韓国との間の深刻な関係悪化を抱える日本に、アメリカの大統領がそう言っているのである。それが日本にとっていいことか、悪いことかと言えば、シンプルに、いいことだ、と考えざるを得ない。
ついでに日本への外国人観光客が増えるような見せ場を作って副次的な効果を狙うのも、理にかなっている。
安倍首相は過去に、トランプ大統領との長時間のゴルフについて「きつくなかったですか」と聞かれ、「アメリカの大統領からもうハーフやろうって言われたら断れないよ。別にそこまでゴルフが好きじゃない。日本のために必死でやったんだよ」と答えたという。
『シンゾーがいないと寂しい』トランプは片思いかストーカー?安倍外交は日本を取り戻したのか【後編】(FNN PRIME)
シンプルすぎる発想だろうが、間違ってはいない。
やはり物事は最後にはシンプルに考えるのが、とりあえずは一番強い。
野党側も、数が限られた特定の投票者層だけではなく、国民の大半に届くシンプルなメッセージを持っていくことを、もう少し考えてみるべきだろう。
篠田 英朗(しのだ ひであき)東京外国語大学総合国際学研究院教授
1968年生まれ。専門は国際関係論。早稲田大学卒業後、