元農水次官息子殺害事件から鑑みる「変われない親と変われない社会」

2019年06月04日 11:30

元農水事務次官が息子を殺害した事件ですが、川崎の事件をみて「自分の息子も・・・」と考えて殺害に至ったと報道されていますが、我々の元には、同じように考える親御さんが毎回相談会に来ます。

元農水次官の長男殺害事件について報じる NHKニュースより:編集部

今回の犯人となった父親がどこかに相談に訪れていたかはまだ不明ですが、
こういった事件をどうやったら防げるのか?
社会はどんな風に関わっていったらよいのか?
Twitterやネット記事には「孤立化を防ぐ」という常套句が並んでいますが、
じゃあ一体どうやったら孤立化を防げるのか?
具体的にどうしたらいいの?ってことが肝心じゃないですか。

そこのスキルが社会の中に殆どないんですよね。

こういった事件が起きる背景には、親が変われない場合と、社会が変われないパターンがあると思っています。

まず変われない親というのは、大体の場合プライドが高く世間体を気にしています。
この事件の父親がそうだったかどうかはわかりませんが、得てして、社会的地位が高く、固い仕事をしている人が親だと、とにかく家庭内の問題を隠そうとして、相談にも来なければ、来ても変わることができません。
時々「息子の命と、あなたの世間体とどっちが大事ですか?」と、私なんぞブチ切れる時があります。

それでも母親が「なんとかしよう!」と行動し、どこかに相談に訪れ泣きつける人だと、まだ何とかなる可能性があります。
自慢ではないですが私はこの家族介入が得意で、泣きつかれた母親と一緒に、まず父親の説得に行ってなんとか納得して貰う・・・「親父キラー」の異名をとっています。

責任感の強い父親は、とにかく失敗が怖いだけなんです。
だから、支援者が一緒になって行動してくれて、たとえ、世間体の悪い状況になろうとも、とにかく家族の安全を確保し、当事者は当事者で自立、もしくは生活保護などの支援を受けて、親と離れて生きていくことができる!と納得できれば、変わっていくことができます。

厄介なのは、母親が父親任せで外に助けを求めない・・・またはその逆パターン。
それと親子で、がっちがちの共依存状態になってしまっている時ですね。
古い時代の固定概念に凝り固まり「親が子供の全責任を持つのは当たり前」「社会に迷惑をかけてはいけない」とか、「子供がかわいそう」「ほっておけない」「育て方が悪かった」など、いい加減子供が大の大人になってもまだ「親の責任」と、思い続けているような人達ですね。
こういう人達はなかなか相談にも来ないし、来ても支援者の言葉が受け入れられず変われません。

だから「家族の問題は家族で抱え込まず相談を!」という、キャッチーなコピーを広報していくことは大切だと思います。

ところがここでまた大問題があるのですが「じゃあ相談した先に本当にスキルがあるの?」ってことです。
「相談に行っても何もしてくれない。」「説教された」「具体的な指示は何も言ってくれなかった」なんて話を、我々は腐るほど聞いています。

こういう相談機関に指定されている行政機関の最も多い答えって何だか知ってます?
・本人とよく話し合って・・・
・様子を見ましょう・・・
これですよこれ!
こういう話を聞くと本当に「バカじゃね~の!?税金ドロボー!」って怒りがわきますね。

何十年も家族だけで苦しんできてですよ、本人と話し合いなんかできないからやっと相談に来たわけじゃないですか!
しかももう何十年も腫れ物に触るように様子なんか見ているんですよ。
この「様子を見て」って逃げ口上じゃん?って思うんですよね。

せめて家族だけでも家族会や自助グループがあれば繋ぐとか、カウンセリングを受けて貰うとか、そういうネットワークを持っていて欲しいですよね。

あとですね警察などは相談に行っても「事件が起きなければ何もできない」って言いますね。
「なんかあったら来て下さい」これで家族は絶望しますね。
また医療も「本人を連れて来なさい。」で、自らは動いてはくれないですからね。

ホントね、保健所その他の公的な機関で、当事者への介入アプローチの手法を持ってるところなんて、殆どないんじゃないですか?
訪問してることなんかまずないです。

あと行政って責任問題を常に考えてるからでしょうかね?
大胆なことなかなか提案できないんですよね。
それと県をまたいだ支援ができないから、県内にそれなりの受け皿がないと、どこにも繋げられず、何年もこう着状態のまま・・・ということはざらにあります。

事件が起きるたびに「孤立化を防げ!」って言いますけど、3年に一度、行政の窓口担当者がコロコロ変わるのが現実で、熟練の支援者もいないのに、どうやって防いで行くのでしょうか?

民間団体を活用していくにしても、「どこに紹介したり繋いだりしたらよいかもわかりません!」なんて、行政が連携の引き出しを持っていないところもたっくさんありますよ。

まずは相談を!と言っても、相談に行ってますます孤立化したり、絶望したり、途方に暮れてしまうケースもあるのがわが国の実情です。

まずは経験豊富な職員配置の充実を!
そしてメンタルヘルスの問題に予算を増やすべき!
国や地方自治体がまずやるべきことはこれだと思います。


田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト

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田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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