NHK改革を地上波にのせたN国党の功績

足立 康史

1. NHK改革を地上波にのせたN国党の功績

N国党の立花代表と丸山さんが会談して入党を決めたと報じられていますが、相変わらずマスコミは低レベルの報道に終始していて辟易してしまいます。

立花氏は、私に対するものを含めて名誉毀損等を公言しながら実行する破天荒なところがあり、そうした手法には、引き続き訴訟も視野に検討していくつもりですが、今朝のフジテレビ「とくダネ!」はじめ地上波にNHK改革をのせた功績は、認めざるを得ません。

これまでの既存政党は、自民党であれ立憲民主党であれ、一定のイデオロギーがあって、日本政治の中で、自民党は国民政党=キャッチオール・パーティとして戦後の日本政治を独占してきたし、立憲民主党も、かつての社会党と同様、反自民として万年野党化を加速させてきました。

そうした中で、万年与党と万年野党とが予定調和的に馴れ合いながら権力を行使する自民党的な政治、いわゆる「55年体制」及び一昨年から始まった「新55年体制」だけでは、どうしても解決できなかった問題、放置されてきた問題に改めて光を当てる政治集団が出てきたのです。

2. 「問題解決型政党」維新に続くN国党の挑戦

そうした政治集団を、ここでは「問題解決型政党」と呼びたいと思いますが、問題解決型政党のさきがけは、言うまでもなく「大阪維新の会」です。維新は、かつては経済の大坂として繁栄を謳歌した大都市を再生する、大阪を豊かにすることを最優先の戦略目標として掲げ、そこに全ての政治リソースを投入してきました。

維新の大阪再生に相当するのが、N国党の「NHKのスクランブル化」です。今でも放送電波はスクランブルされ、受像機のCASシステムで解除しているわけですから、厳密にはスクランブル化ではないのですが、そのCASの有する視聴者識別機能をフル活用して、NHKを有料放送化してしまえ、という主張には、大変に重要な視点が含まれています。

立花氏がよく説明に使う、水道・電気・ガスといって公益サービスとの比較は秀逸です。こうしたサービスはすべて「払わないなら止める」原則に従い運用されていますが、NHKだけは「使わなくても払え」という消費者=視聴者を無視した受信料システムに従い制度が組み立てられています。

3. NHK受信料システムに与しない権利

先の通常国会、衆院総務委員会で放送法改正案が審議された際、参考人である東京大学の宍戸常寿教授に、この点を問うたところ、現行の放送法に規定する受信料システムでは、

テレビを持たないということによって「放送全体を支えるということ」(足立注:受信料を払うこと)に自分はくみしないという方の自由というのは、これを放送法は保障しているわけでございます。

とし、【NHKを見たくないなら、テレビ受像機を持つな】ルールの下に制度が出来上がっていることを説明して下さいました。

重ねて私が、『NHKは必要ないんだけれども、でも、だからスマホを持つなとは、今の現実的なネット配信を考えると、私はそれは解にならないと思うんですが、そこに解はありますか。』と問うたところ、

宍戸先生は、

一つのやり方は、例えばNHKの番組、あるいはNHK以外も含めて、民間放送も含めての同時配信を受けるというような場合に、何か端末に、例えばアプリを入れて専用のビューアーで見る、そういうふうな方については、スマホをテレビとしていわば使うということなので、受信料あるいはそれ相当の負担をしていただく、それを入れていない方はそうではない、端末をテレビとして使われているわけではない、そういった線引きができるのではないか、これが一つのアイデアでございます。

と答弁されました。

既に察していただいているように、放送電波の時代には、『テレビを持たない』ことが選択肢としてあり得たかもしれませんが、ネット通信の時代に、【NHK(による放送のネット同時配信)を見たくないなら、スマホを持つな】ルールを適用するのは、さすがに国民の理解を得られないだろう、ということであり、NHKがネット同時配信サービスを展開していくためには、有料NHK専用アプリを導入するしかなくなる、という、放送と通信の大融合時代にNHKに突き付けられている現実は、NHKの受信料システムにとって極めて厳しいということなのです。

だからこそ、先の通常国会に上程され成立した改正放送法は、NHK放送のネット同時配信を、ネット配信サービスとして正面から認めることをせず、あくまでも放送サービスの補完的サービスとしてネット同時配信サービスを位置づけ、いわば、放送電波の領域に「籠城」することを決めた瞬間だったのです。

放送電波の領域では受信料システムを維持することは出来ても、ネット通信の領域ではスマホアプリを導入することにならざるを得ず、現在の受信料システムが崩壊するのは「放送と通信の融合」というイノベーションの必然なのです。

4. NHK改革はイノベーションの必然

N国党の立花さんが議席を獲得したことを受けて、石田総務相が(NHKをスクランブル化したら)「民間放送との二元体制を崩しかねない」と述べたと報じされていますが、当に、その通りであり、私に言わせれば、NHKと民放との二元体制などという視聴者を無視した古い制度は、「放送と通信の融合」というイノベーションに正面から向き合えば、早晩、瓦解するのは必然なのです。

先の参院選にあたって、日本維新の会のマニフェストに

NHK改革。防災情報など公共性の高い分野は無料化し、スマホ向け無料配信アプリを導入。有料部分は放送のスクランブル化と有料配信アプリの導入。

と書いたのは、そうした認識の下だったのですが、日本維新の会に大阪再生以外の改革に向けた熱量はほとんどなく、この一点では、N国党に惨敗したと言わざるを得ないのです。

いずれにせよ、本稿で私が強調したかった点は2つ。一つは、NHK改革を地上波にのせたN国党の功績は限りなく大きいということ。もう一つは、NHK改革は放送と通信の融合というイノベーションの「必然」であるということです。もちろん、イノベーションの「必然」も、政治が放置し続ければ、映像配信分野における世界の大競争から日本が遅れるだけ。

私は、イノベーションの「必然」に正面化から向き合い、一刻も早く、NHK改革を断行するとともに、民間を含めた放送事業者には地上波を返上するくらいの気概でネットの世界の大競争に飛び込み、そのコンテンツ制作力を競い合っていただきたいと願っています。そして、国会では、日本維新の会とN国党との間で、その政策構想力と実現力を正々堂々と競い合って参りたいと存じます。


編集部より:この記事は、衆議院議員・足立康史氏の公式ブログ 2019年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は足立氏のブログをご覧ください。