トランプ大統領がパウエル議長に失望したと述べていましたが、私はセブン‐イレブンのセブンペイを9月末でサービス終了するという発表にひどく失望しています。
私が何に対してこれほどがっかりいているかといえばセブンペイを開発するきっかけ、やってみて失敗した際の対応、それから1カ月たって事情はよく分かりませんが、「サービス終了」としてしまう流れ全てが間違っている点であります。
仮に鈴木敏文氏がまだセブン‐イレブンを牛耳っていたならばこんなことは起きていなかったかもしれません。
セブン‐イレブンはその創業以来数々の難問を乗り越え、新しいサービスを次々と生み出し日本式コンビニエンスストアの規格を作り、それをアジアを中心に横展開していった点に於いて私はソニーやホンダと並ぶぐらい大したものだと思っています。
日本では製造業がかつてスポットライトを浴びる主役であったことに対してセブン‐イレブンのような流通小売業はそれが生活にあまりにも浸透しすぎることで「当たり前」感覚になってしまっていますが、街のインフラとなった点に於いて日本のイノベーション大賞ものであります。
そのセブン‐イレブンがここまで大きくなったのは数々の新しいサービスを生み出し、浸透させる点に於いて「あきらめない」「絶対に成功させる」という気構えだったのではないでしょうか?
私は鈴木体制の呪縛から外れた現在の姿はセブン‐イレブンの社名のついた名刺を威光とする物分かりがよく、社内営業に長け、あきらめの早い普通の成熟企業になってしまった気がします。そんな大企業は日本にはごまんとあるでしょう。これじゃダメなんです。
セブンペイをやろうとしたのは勝手な憶測ですが、ビックデータが欲しかったのではないかと思います。そのような中でLINE PayやPayPayが続々と参入し、「ならば電子マネーのnanacoで成功したんだから当社もスマホ決済をやろうじゃないか」という流れだったのではないかと察します。
つまり他社に踊らされた、というのが私の見方であります。そのPayPayだって初めには手痛い失敗をしましたが、今、しっかりとその足元を築きつつあります。なのに、セブンペイの場合、1カ月検証して「止める」という結論に至ったのはそれが一番簡単な選択肢だからであります。逆に言えばこれ以上失敗しても「責任取れないから」ということになります。そして、ここに主語がないのが日本の特徴で誰が責任を取るのか、さっぱりわからない体制になってしまったのです。
私は最近、不祥事で経営トップが頭を下げ、フラッシュライトを浴びるシーンを見かけるたびに「なぜ頭を下げるようなことになったのか?それは経営そのものが緩いからではないか?」と思っています。北米の会社でこんな頭を下げるシーンはまずもってなく、失敗した社長は即刻クビで新しい社長がその立て直し案を提示、上場会社ならその発表内容に投資家が厳しい判断を下す、という流れです。ある意味、社長業なんて大変シビアであります。
もう一つは不祥事なのか、ビジネスチャレンジをした失敗なのか、そこが日本の場合、あいまいになっています。セブン‐イレブンの場合、ビジネスチャレンジで失敗したわけで一般的な不祥事とは違います。PayPayはセキュリティコードの入力が何度もできることで不正利用問題が発生しましたが、緊急対策を翌日には行い、ほぼ1カ月で問題解消しました。さすが、孫正義氏の傘下の会社です。ところがセブン・ペイは同じ一カ月で対策がまとまらず中止です。
ところでフェイスブックのリブラが話題になっていますが、あれはフェイスブックが作ったのではなく、誰でも知っているような名だたる大企業28社がスイスのリブラ協会に出資し、そこで生まれたものです。フェイスブックは「カリブラ」としてそれをフェイスブックのインフラに乗せるという話です。
そこには世界の頭脳とマネーが投入され、最適解を見つけるべく作業や交渉が進みます。キャッシュレスへの対応はもはや電子マネーを作った時代とは全く次元が違うことを企業は肝に銘じるべきでしょう。それこそ、投入する資金のゼロの数が2つも3つも違うということです。生半可にやるべきではないともいえるでしょう。
私はセブン‐イレブンを含め、日本のコンビニ業界の次の成長路線のアイディアを楽しみに待っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年8月2日の記事より転載させていただきました。