韓国、GSOMIA破棄なら文大統領は失脚するだろう

2019年08月07日 06:01

韓国の日本に対する反発は日増しに強まってきており、韓国の一部高官や政治家などからも(自動更新または)破棄通告期限を今月下旬に迎える日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について、破棄すべきだとの意見が出るようになってきている。

韓国大統領府Facebookより:編集部

これに対して、韓国国防部の報道官は「検討している」としながらも破棄には否定的な立場を明らかにし、韓国の情報機関である国家情報院の徐薫(ソ・フン)院長も、8月1日に韓国の国会で開かれた情報委員会の全体会議で「GISOMIAは内容上の実益も重要であり、象徴的意味も重要だ。破棄については慎重でなければならない」と否定的な立場を示した。

一方、岩屋防衛大臣についても、「GSOMIAは日韓間の安全保障分野における協力と連携を強化し、地域の平和と安全に寄与するものだと思っている」と述べて、この協定が必要であるという考えを示した。

つまり、日韓両国とも、GSOMIAの運用に直接携わる組織はこの破棄に反対しているのである。それは、この破棄が日米韓の軍事的連携を破壊する行為であり、安全保障上「LOSE-LOSE-LOSE」の結果となることが明白だからである。

米国が、最近になって仲介的な動きをし始めたのも、このGSOMIAを破棄するようなことだけはさせないよう日韓両国に念を押す意図があったからだと考えられる。5日付の共同通信によると、米当局者の話として、「韓国政府は(GSOMIAの破棄を盾にとって)この度の規制撤回を日本に働きかけるよう米政府に求めた」とされている。

筆者には守秘義務があるので具体的な内容については触れることはできないが、卑近な例でその仕組みを説明すると、軍事情報というのはパズルにピースをはめていくような作業が基本であり、(この協定によって)日韓それぞれがはめ込んだパズルの全体像を元に情報を交換して戦略や作戦(戦術)が立案されるようシステム化されている。

そして、これには米韓、日米というそれぞれの共同作業による情報活動によって得られた成果も反映されているから、韓国のパズルは決して韓国の成果物だけで完成したものではなく、日本の場合も同様である。

また、一旦はめ込んで出来上がったパズルは一枚の絵となることによって始めて各機関や部隊などの任務に供せられることから、そこから個々のピースを再び取り出して「これは渡せる。これは渡せない」などと峻別することなどできはしない。この協定によって、韓国が日米から受ける軍事的な利益は多大であるし、日本が米韓から受ける利益も同様である。

仮に、この協定が破棄されれば、韓国が米国と共有している情報が日本に伝わらなくなり、日本が米国と共有している情報も韓国に伝えられなくなる。そして、この協定締結以来構築してきた日米韓のネットワーク体制やこれに伴う各種システムを無力化してしまうことに繋がるのである。

つまり、本協定が破棄されたならば、これが締結される(2016年)以前の状態に戻るだけというような単純なものではなく、すでに(ある情報が)入手できることを前提にこれをシステム化して運用している組織が、この情報源を失うことによって受ける運用上のダメージは計り知れない。

したがって、このような行為は、戦時作戦統制権を有する米軍(国連軍)を無視して韓国が勝手に決められるものではないし、米国が許容するはずもないということである。

そもそも、韓国は本協定によって日米から多大な恩恵を受けておきながら、日本が「韓国には安全保障上の不安要素がある」と指摘して輸出上の規制を見直したことを盾にとって「ではこの協定を破棄する」と居直るのは、まさにそれこそが「盗っ人猛々しい」と言うべき行為に他ならない。それでも、文政権が強引にこれを破棄しようとするならば、米国はあらゆる手段を尽くして文在寅大統領の失脚を試みるであろう。

以上のことから、韓国内で本協定を破棄すると騒ぐ勢力がいたとしても、わが国は黙殺するのが一番なのである。日韓の問題でいたずらに米国を巻き込む必要はないのだから。もし、わが国政府が、現在のような成り行きを読んだうえで今回のような「安全保障上の措置」をうたい文句に韓国への一連の「輸出規制の見直し」という行動を起こしたのだとすれば、この作戦は見事というしかない。

日本から安全保障上の格下げをされたうえに、GSOMIAにまで手を付けようとしたことで、文在寅大統領は完全に米情報機関などから「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」の烙印を押されてしまったと考えられるからである。

もし、この協定が破棄されるとすれば、それは米朝間で平和条約が締結されて在韓米軍が撤収してからという話だが、それまで文政権が存在していることは100%ないであろう。

鈴木 衛士(すずき えいじ)
1960年京都府京都市生まれ。83年に大学を卒業後、陸上自衛隊に2等陸士として入隊する。2年後に離隊するも85年に幹部候補生として航空自衛隊に再入隊。3等空尉に任官後は約30年にわたり情報幹部として航空自衛隊の各部隊や防衛省航空幕僚監部、防衛省情報本部などで勤務。防衛のみならず大規模災害や国際平和協力活動等に関わる情報の収集や分析にあたる。北朝鮮の弾道ミサイル発射事案や東日本大震災、自衛隊のイラク派遣など数々の重大事案において第一線で活躍。2015年に空将補で退官。著書に『北朝鮮は「悪」じゃない』(幻冬舎ルネッサンス)。

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