コンプライアンス社会:蓋をされてしまう子供たち

一昨日、文科省の委託事業で行っている「ダメ絶対だけではない依存症予防教育モデル授業」を、岡山県で開催させて頂きました。
お陰様で、お盆のど真ん中でありながら、沢山の方々にご来場いただき会場は満員!
台風が迫る中、ご来場頂いた皆様方本当にありがとうございました。

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今年は、高知東生さんに体験談をお願いしているのですが、この体験談で、高知さんが生い立ちから事件の渦中、そしてその後の生活や今の現状について、赤裸々に語って下さっているんですね。

高知さんは、小学校5年生まで親類のおうちに預けられ、本当のご両親を知らずに育てられた方なんですね。
お母様がいわゆる本妻さんではなかったり、いろいろ複雑な環境で子供時代を過ごされ、17歳で天涯孤独の身の上となられました。

このあたりはセミナーでお話しされていますし、今後、インタビュー記事などにも出てくると思うので、そちらをご覧頂けたらと思うのですが、私も、父親が会社のお金を横領し解雇された横領犯の娘で、母がすごすごと戻ってきた実家の祖父が、近所でも有名なギャンブラーかつ、女遊びの激しい人だったんですね。

ですから家庭環境は決して恵まれたものとは言えず、また当時のことですから、母子家庭で一人っ子といえばかなり偏見もありました。
何よりもとにかく貧乏で苦労しました。

そして祖父母には「お前らがで戻ってきてどれだけ恥をかいていると思うんだ!」とか、「お前がいると金がかかって仕方がない!」と言われるので、自分は何で生まれてきたのか?よくわかりませんでした。
自分という存在を否定し、自分はこの世にいてはいけないものと思い、自分を責めて生きてきました。

で、今回この事業でつくづく思ったのは、世の中がどんどんコンプライアンスに厳しい社会になって、我々のような社会的には後ろ指をさされるような親を持つ子供達って、まるで存在しないかのように扱われていると思うんですね。
きれい事しか言わない、言えない社会。
とすると、かつての我々のような子供達というのは、ますます孤立化するしかないのではないでしょうか?

例えば、違法薬物を使っている親、刑務所への出入りを繰り返す親、反社会勢力に身をおく親、ギャンブルでお金を使い果たす親、アルコールを飲むと人格が変わる親、犯罪を犯し新聞沙汰になる親、そういった親を持つ子供達が今の世の中にも沢山いるわけですよね。
そんな環境にある子供達に、あえて進んで手を差し伸べられるような社会になっているでしょうか?

コンプライアンス、コンプライアンスと言われ周りが他人の目しか気にしなくなり、みんなが綺麗事しか言わない社会になると、社会の大人達はこういうレールから外れてしまった人達を忌み嫌い、「自業自得」とばかりに孤立化させ、当事者のみならず保護されるべき子供達も見捨てているのではないでしょうか。

子供は親を選んで生まれてくることなんかできない訳ですし、親に保護されるべき子供達が、保護を受けられていない場合に、周囲の大人達に求められることは、偏見のめがねを外すことではないでしょうか。

恐ろしいのは、綺麗事社会では周囲の大人達が、こういった子供達が実際には「いる」ということに、気がつかなくなってしまう、見えなくなってしまう、思いを寄せること、想像することすらなくなってしまうことです。

「いる」のに透明人間になってしまう状況がどんどんひどくなってきています。
そしてそういった社会で透明人間になることが求められる子供達が、一番依存症リスクが高いんですよね。

今回の依存症予防教育モデル授業では、私や高知さんの体験談も含め、一番の困難な環境にある子供達にアプローチできない予防教育を広めても仕方がない、むしろそれは逆効果でしかならない・・・ということを伝えています。

綺麗事の「ダメ、絶対」では、「ダメ、絶対」に手を出した親を持つ子供達を救うことなんかできないじゃないですか。
そんなことしたらますます自暴自棄になるし、社会に対する恨みと絶望しかなくなりますよね。

今回の、依存症予防教育モデル授業では、びっくりするくらいの正直な話、タブーをひっくり返すような話がバンバン出てきます。
残りはあと1回。

いよいよ高知さんの生まれ故郷、高知県に参ります。
ここでは、ますます色んなびっくり話が飛び出すことでしょう。
8月30日、是非高知県にお越し下さい。
※高知県の会場は申し込み多数のため「高知商工会館」に会場が変更になっておりますのでお間違えなきようお願い致します。

お申し込みは、こちらから!
「ダメ、絶対」だけではない依存症予防教室モデル授業(高知会場)

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田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト