伊藤傑兵庫県議はぜひ家族会につながって欲しい

昨日8月21日に、伊藤 傑 兵庫県議の息子さんが、大麻を譲り受け逮捕されたというニュースが飛び込んできました。
しかしこういう有名人の家族のニュースがある度に、○○の息子とわざわざ書かなくともいいのにと思います。
読売新聞なんかひどいですからね。

薬物乱用防止に取り組む県議の長男、大麻譲り受け(読売新聞)

なんとご本人の名前は書かずに(別に書く必要もないですが)、お父さんの名前だけ書いています。
未成年者じゃあるまいし、大の大人の犯罪に親の名前なんて関係ないですよね。

伊藤傑県議Facebookより:編集部

しかし今回、私もあえてこうしてお名前を書かせて頂いたのは、伊藤県議は県議という公職にあり、薬物乱用防止に取り組んできたとのこと。
またHPを拝見しましたが、刑の一部執行猶予制度にも関心を持たれ、議会で質問などもされているんですね。
さらに保護司さんとしても活動して来られ、「非行少年の更生」といったことにも度々触れられております。
私は、これらのご経歴に特別な意味があると思っております。

何故なら、伊藤先生はこの度、薬物問題を抱える家族となられたわけです。
それはもちろん望まざることだったでしょう。青天の霹靂と思われているかもしれません。
けれども先生に限らず、多くの家族が真面目な市民として生活してきたにもかかわらず、ある日突然、薬物問題を抱える家族となるのです。
「一体、何故!?」家族自身が一番その思いに苦しみ、気付けなかったことを悔やみ自分を責めています。

けれども薬物問題とはそういうものなのです。
家族だからといって、発見できるものでも気がつけるものでもありません。
症状に気付いた頃には、かなり悪化しています。

ところがいつまでたっても薬物問題を精神論としてかたずけてきたために、家族はひとたび問題が発覚すると、自分たちだけで抱え込もうとし隠そうとしてしまいます。

伊藤先生にとっても、現在大きなショックを受けられ、世間に顔向けできないような、恥の気持ちでいっぱいになっておられるかと思います。
その心中はお察しするにあまりあります。

今、伊藤先生のお気持ちを一番わかって差し上げられるのは、我々依存症者の家族です。
そして、伊藤先生のお立場を考えれば、先生がこの世で授かった使命の一つは、この薬物問題の家族として、他の家族達を助けていく役割を担っておられるのではないでしょうか?

今は、まだ他人のことなど慮る余裕などないかもしれません。
けれども、先生が今一番やるべきことは、薬物の家族会に繋がることです。
これだけは間違いございません。
息子さんが逮捕され、今後親はどう関わって行くべきか?
何をやって、何をやってはいけないのか?
特に、手出しをしてはいけないことをしっかり学ぶ必要があります。

家族会にいらっしゃれば、多くの同じ経験をした仲間達が、先生に惜しみなく、経験からくる知恵と情報を授けてくれることでしょう。
家族の知恵に勝るものはございません。

怒涛の様な日々が過ぎ去ったあとには、きっと先生も余裕や落ち着きを取り戻されることでしょう。
すると地位や名誉のあった人ほど、家族の恥とされるような経験について蓋をし、二度とこの問題に触れてくれるな!となかりに、時には私たちに対して攻撃的にすらなる人がいます。

けれどももし先生が家族会に繋がって下されば、薬物依存症問題の本質が見え、やがて先生の使命に気付かれることと思います。

伊藤先生、先生も息子さんに「薬物はダメ絶対」と教えてこられたはずです。
当然、私たちも皆、そう教えてきました。
でも、こうなってしまったのです。

ですからダメ絶対教育だけでは、薬物問題を防ぎきれないこと、むしろ「ダメ絶対」と強調し、早期発見や社会復帰の観点をあえて触れないように操作してきたことで、現在、薬物問題を犯した人は、社会で居場所を失い孤独と孤立に苦しめられていること、伊藤先生もその苦しみを味わいたくはなかったと思いますが、否応なく経験することとなられました。

どうか今の不安や恐れ、憤り、やるせなさ、悲しみ・・・そういったお気持ちをお忘れにならずに、何事もなかったかのように隠してしまわずに、今後はあえて「薬物問題を抱えた経験のある家族」として議員活動をなさって頂けたらと願います。

それはこれまで積極的に、薬物乱用や再犯防止策に関わって来られた、先生の生きざまの証しではないでしょうか?
それでなければ、ただ綺麗事を言ってきただけの人になってしまいます。
勇気を持って、家族会に繋がってきてください。

また、どうかゆめゆめこの件で、伊藤先生が息子さんの代わりに謝罪をなさったり、ましてや離党や議員辞職などなさいませんように。

私たちの仲間は、正直これまで伊藤先生のことを良く存じ上げませんでしたが、いまこそ伊藤傑先生にご期待申し上げております。

伊藤傑先生、薬物問題を抱えるご家族となられた現実から逃げずに、どうか真正面から受け止め、私たちの仲間となって下さい。
私たちも、きっと先生のお力となれることでしょう。
そして多くのまだ見ぬ家族の仲間達を助けて下さい。
宜しくお願い致します。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト