米国人と言えば、自炊への関心が低いことで知られます。2017年9月にハーバード・ビジネス・レビューで紹介された調査結果によれば、「料理が好き」と回答した米国人の割合はたった10%で、15年前の15%から低下していました。裏を返せば、料理に関心のない米国人が9割ということになります。
こうした調査結果に比例して、米国人の外食頻度も日本人と比較して高いんですね。ギャラップが2017年1月にリリースした調査で、外食の頻度が「1週間に1回以上」と回答した米国人の割合は61%でした。特に若い世代に多く、ミレニアル世代を含む18~34歳では72%と、55歳以上の50%を大きく引き離しています。日本の場合、「1週間に1日外食(惣菜などの中食含む)する」との回答はわずか24%である実態を踏まえると、米国人の外食好きが伺えるでしょう。
小売売上高をみても、外食は右肩上がりをたどってきました。統計が開始した1992年当時、小売売上高全体のうち9.8%に過ぎませんでしたが、今では食品・飲料やオンライン小売を指す無店舗とほぼ変わらず、12.4%を占めるに至っています。外食費も順調に増加し、2017年で1人当たり前年比6.7%増の3,365ドル(約36万円)と、2017年の平均時給上昇率である2.6%増の3,154ドルを上回りました。
こうした米国人の食への意識に加え、2018年で労働人口の約3分の1まで増加したフリーランサーの存在のほか、料理配達サービスの普及が外食頻度を高めている。ファストフード・チェーン大手マクドナルドが7月に公表した4~6月の決算では、米国の既存店売上高が前年比5.7%増と市場予想の4.7%増を上回りました。
店舗改築やセットメニューのテコ入れ、データ分析会社買収を通じたプロモーション強化の他に、売上増の要因として挙げられたのが、料理配達サービス企業との提携です。同社はこれまで料理配達サービスとはウーバーイーツのみ提携してきましたが、7月にはドアダッシュを加え2社へ広げると発表しました。その結果、料理配達サービスで売上高は2018年に前年比33%増の40億ドルへ増加すると予想、売上高全体の2~3%から引き上げを狙います。
マクドナルド以外の同業他社も料理配達サービスに着目し、KFCやタコベルを傘下に収めるヤム!ブランズはグラブハブ、コーヒーチェーン大手スターバックスはウーバーイーツとの提携を通じ売上増に努めてきました。
請負業者へのチップ支払い問題が存在したものの、ドアダッシュが首位を独走中。
その料理配達サービスは拡大基調にあり、2018年は前年比45%増を遂げました。料理配達サービスを利用する米国人の割合が2018年に24%と前年の14%から上昇していたためでしょう。
ボラタイルな市場の中にあって、料理配達サービスとの連携が奏功しレストラン銘柄の存在感が光ります。S&Pサブセクターのうちレストラン指数の8月第2週目までの年初来リターンは32.7%高とS&P500の14.7%高を上回っていたのですよ。投資家が関連銘柄に食指を伸ばしてもおかしくなさそうですね。
(カバー写真:Andrew/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年8月22日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。