英国のジョンソン首相は英国議会を9月9日の週から10月14日まで休会すると発表しています。9月3日に始まった議会は実質1週間程度しか開催期間がありません。その間にジョンソン首相を中心とするEUからの離脱強硬派とそれ以外の与野党がどうこの問題に取り組むか、いよいよ最終決戦の火ぶたが切って落とされました。
野党は来週の休会までに与党からの造反を取り込みながら「離脱延期案」を提出するかどうかが着目点になります。当初は内閣不信任案で検討されていたはずですが、ここにきて方針を変えた可能性があります。
一方、ジョンソン首相は腹のうちにもしも自身に不利な形成になれば来週までに解散総選挙のシナリオもあると速報で報じられています。かなり何でもありの状況です。
そうなればジョンション首相は史上最短の首相となる可能性があります。英国議会史上、ネヴィル チェンバレン首相の第二次世界大戦中のドイツへの宥和政策に対する不信任案可決事件(1940年)以来となるのでしょうか?
ジョンソン首相はどうなのか、といえば心は固まっているように見えます。「合意なき離脱」にまい進する、であります。つい一日前ぐらい前まではジョンソン氏は、離脱を決定した後、議会解散を行い、そこで政権への判断を再度問うのか、首相自身があの国民投票後、英国内が盛り上がっている中で「俺は首相はやらない」とそっぽを向いたあの二の舞もあるのでしょうか?
こうなると英国はどう見てもこの離脱の前後で一度解散総選挙となりそうです。
ジョンソン首相は表向きEUとは「交渉の余地はある」と述べているもののその余地は極めてスリムであるとみています。一つは最大のイシューが北アイルランドのバックストップ問題でメイ前首相が合意済みのこの件を「撤回」することを最大の条件としているからです。一方、EU側は本件について見直す余地は全くないとしてお互い、すり寄る余地は今のところ全く見えません。
次にEU側も主要首脳陣が改選期にあるため、落ち着いて審議するという状況にありません。新欧州委員会委員長は11月に着任です。アウトゴーイングするユンケル委員長に何か妥協策を打ち出せる任期上の時間があるとは思えません。
個人的には今週、英国議会が離脱延期法案を可決できず、解散総選挙もなければ英国の合意なき離脱は相当高い確率で起きる、と見ています。(個人的には今の時点で解散総選挙はあまりにも無謀と思いますが、10月14日に首相に再選されれば自身の方針が信任されたと自信をつけるのがジョンソン風なのかもしれません。もはや普通の事態ではありません。)
ジョンソン首相には離脱したところで大した影響はない、と考えている節があります。「英国は覚醒せよ」と言わんばかりであります。ある意味、トランプ大統領に似たスタイルで今までの議会や国民の考え方を完全に打破し、新世界を打ち出すために多少の犠牲は払ったのち、そこには苦しみを味わったものしか勝ち得ない世界が待っている、というのでしょうか。
我々一般人は今までの常識の枠を「普通」とし、はみ出ることに大きな抵抗を持ちます。ですが、今、世界では常識感が覆るようなことがどんどん起きています。歴史のステージが全く違うところに向かっていくようなそんな感すらあります。
ジョンソン首相はもともと変わり者であったのに圧倒的支持のもと、首相に選ばれました。これは英国の閉塞感に対する打破とも言えます。近年の英国ではウィンストン チャーチルとマーガレット サッチャーという偉大なる人物が英国を救いました。ジョンソン氏が3人目となる偉大で歴史に残す首相になるかどうか、我々の常識の枠を超えたところでその行方は決まるのかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年9月3日の記事より転載させていただきました。