麻生大臣も本音は微妙?マイナンバーカードでポイント還元に懸念

2019年09月05日 06:00

政府は、マイナンバーカード保有者がスマホ決済のためにスマホに入金(チャージ)を行うと国費でポイントを上乗せする方針を決めた。消費税対策とマイナンバーカードの普及促進とキャッシュレス化を進めるという三兎を追う政策だ。

写真AC:編集部

これと同様に消費税対策と中小企業対策とキャッシュレス化促進の三兎を追う政策として既に実施間際となっているのが、キャッシュレス決済をした際のポイント還元制度だが、こちらは来月からの実施を目前にして、まだこれから制度に登録する加盟店が多数あったり、決済事業者等への補助金の交付のメカニズムによく詰まっていない部分も残っているほか、不正取引の発生の懸念も依然として残っており、今後のトラブルが心配だ。

しかし、それよりも今回の政策はもっと大きな問題を抱えているように思われる。

今回の制度の原型と言える現在の自治体ポイント制度は、マイナンバーカード保有者が自治体等から付与されたポイントで買い物等をするというものだが、極端に不振の状況にあり全く全国的な広がりが見られない。

この自治体ポイント制度を大した改善策も講じないで全国ベースのポイント制度にしたところで、また低い利用率にとどまってしまうだろう。

そもそも、マイナンバーカードを持っている人の割合が全国民の1割ちょっとの状況でこの制度を導入しても大した利用率にはならない。だからこそこの制度でマイナンバーカードの普及を図るというのだろうが、この制度を利用するためにわざわざマイナンバーカードを取得する人がどれだけ出てくるか、この制度にどれだけの魅力があるのか、よく考えた方がいい。

現在の自治体ポイント制度もそうだが、マイナンバーを税と社会保障以外の目的で使用することは法律で厳しく制限されているため、これら以外の分野でマイナンバーカードを活用しようとすると、自治体ポイント制度のようにマイキーIDという別のID(本人確認証)をマイナンバーを基に作り出す必要がある。そしてこのマイキーIDを作る作業が以前もアゴラの記事で少し説明したが、とてつもなく面倒なのだ。

まず公的個人認証サービス対応のICカードリーダーを買ってきて用意する必要がある。そしてパソコンの動作環境だが、OSはWindowsの7以降はいいとして、macOSはだめだ。次に、ブラウザはInternet Explorer 11がインストールされていないとだめだが、例えば私のパソコンはInternet Explorer 10なので、これもはじかれてしまう。

仮にこれらのパソコンの動作環境が整っていたとしても、次にマイキーID作成・登録準備ソフトをパソコンにダウンロードする必要がある。

そしてその後、ICカードリーダーにマイナンバーカードをかざしてカードのICチップの内容を読み取らせるが、その際にはマイナンバーカードを市役所等で受け取る際に登録した自分の暗証番号を打ち込む必要がある。

なお、現在ではICカードリーダーではなくスマホをICカードリーダーの代わりに使ってマイナンバーカードの内容を読み取らせることが出来るが、これもスマホの適合機種が限られている(ちなみに私のFujitsu arrows M04は適合機種ではない)。したがってここのところはマイキープラットフォームというサイトに行って適合機種かどうかチェックしてみる必要がある。

仮に自分のスマホが適合機種だったとしたら、Google Playから必要なアプリをスマホにインストールした上で、パソコンとBluetoothで接続し(パソコンはBluetooth機能を備えたものでなければならない)、スマホのアプリを起動する一方でパソコンの利用者クライアントソフトも起動し、スマホにマイナンバーカードをかざして読み取りをさせるという段取りになる。

いかがだろう。こんなことを高齢者がするとはとても思えないし、若い世代でもスマホは持っているがパソコンはないという人が多い。この制度は一握りのITに通じた人だけがポイント還元の恩恵を受ける制度になっているのではないだろうか。

何かこの制度はSI屋さんが自分たちの頭の中だけで、現実を知らずに、あるいは故意に現実を無視して作り上げたシステムではないかと思わざるを得ない。

財務省ツイッターより

3日のNHKのニュースによれば、麻生副総理兼財務大臣は記者会見で「カードを活用する動きが出始めたということであり、それなりの効果が上がってくることを期待している」と述べたそうだが、閣内不一致という訳にはいかないのでこういう表現にとどめざるを得なかったのだろう。

最後の「それなりの効果が上がってくることを期待している」と言ったのは「しっかり成果を見せろよ」と言っているよう私には聞こえる。

さらにNHKの報道は麻生大臣の発言として「俺も正直言って、(マイナンバーカードは)持っていても使ったことは1回もなく、俺に言わせたら必要ない。使う必要がないものに毎年いくらカネをかけているか、アホらしくて聞いていられないと、以前から言っている」と述べたと伝えているが、おそらくこれが麻生大臣の本音だろうし、世の中の良識ある人々の考えでもあるだろう。

財務省主計局は官邸に忖度することなく、この制度の無理無駄を徹底的にそいで、その予算をもっと必要なところに回してほしい。また、会計検査院は現在の自治体ポイント制度をよく調査して、無駄な投資が行われていたら厳しく指摘してほしい。高齢化社会を迎えて社会保障関係費が膨らむ現在の財政状況の下で、我々の税金でSI屋を太らせる余裕はない。

有地 浩(ありち ひろし)株式会社日本決済情報センター顧問、人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)
岡山県倉敷市出身。東京大学法学部を経て1975年大蔵省(現、財務省)入省。その後、官費留学生としてフランス国立行政学院(ENA)留学。財務省大臣官房審議官、世界銀行グループの国際金融公社東京駐在特別代表などを歴任し、2008年退官。 輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社専務取締役、株式会社日本決済情報センター代表取締役社長を経て、2018年6月より同社顧問。著書に「フランス人の流儀」(大修館)(共著)。人間経済科学研究所サイト

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