進次郎氏の環境相就任、河野太郎氏の抜擢とダブる安倍総理の深謀

2019年09月13日 06:00

就任後の記者会見で結婚披露の会見について聞かれ、「記者の皆さんの質問にお答えした。いわゆる会見に近いものは、横須賀の実家前じゃないですか」と応じた通り、小泉進次郎新環境大臣の出身地は筆者の故郷でもある軍港市、神奈川県の横須賀だ。

小泉進次郎衆院議員の実家の前で取材に応じる進次郎氏と滝川クリステルさん(ANNニュースより:編集部)

彼の父純一郎氏の母校であり、筆者も半世紀ほど前に学んだ県立横須賀高校の自慢の一つは、総理大臣(小泉純一郎氏)と五輪金メダリスト(東京大会柔道重量級:猪熊功氏)とノーベル賞受賞者(物理学賞:小柴昌俊氏)を輩出したことだが、進次郎氏は関東学院なので筆者に親近感はない。

それに横須賀市は、ここしばらく日本で最も人口流出の激しい市として知られていたように地盤沈下に歯止めが掛からない。中央では人気があるかも知れぬが、地元に何の恩恵ももたらさない国会議員など、事情を知らない人に時たま「ワー凄い!」といわれる程度で、大して役に立たない。

とはいえ50年前に父純一郎氏が衆院選に初出馬(落選)した際にも、3年後の72年に初当選した時も、筆者の周りにはその選挙を手伝った知人が五万といるので小泉親子を腐すのはこれくらいにし、その若干38歳の進次郎氏を環境大臣に抜擢した今回の安倍人事に話を移したい。

筆者はこの人事が2年前に河野太郎氏を外務大臣に据えた絶妙な人事とダブって見えた。要するに人物とポストとに、如何にも安倍流の辛辣さが出ているということ。当人にとっても、またそのポストを相手にする側にとっても、実にキビシイと思わせる人事と思うのだ。

政府インターネットテレビ、官邸サイトより:編集部

それにはもちろん二人の父親、すなわち河野洋平氏と小泉純一郎氏が大いに関係している。この二人の性格も国家観も政策すらも、安倍氏のそれとはまったく違っていると筆者は思う。それは洋平氏の歴史観や信条の違いであり、純一郎氏のここ数年の執拗な反原発アピールとの違いを指す。

官邸サイトより:編集部

河野太郎氏の国家観や歴史観を筆者は余り知らないが、かなりの反原発主張の持ち主だったはずだ。が、安倍内閣は原発を重要なベースロード電源と位置付けている。政策の面でも安倍総理の保守ぶりは、中国や韓国が歴史修正主義者のレッテル貼りをするのを見れば判る。

洋平氏が談話の原文にはない強制性を口頭で認めた河野談話を安倍総理は否定した。韓国との慰安婦合意の際に岸田外相が認めてしまった軍の関与について、中山恭子議員の質問に「移送や衛生管理面での関与」と答弁したのを聞いた時、よくぞ質問し、よくぞ答えた、と感じたのを覚えている。

外務大臣といえば中国や韓国との付き合いの中で歴史問題にもろに直面する立場だ。この職責を河野談話の張本人の息子に担わせるとは、安倍総理も過酷だなあと感じた。果たして河野太郎氏は、期待以上に立派に職責を果たし防衛大臣に横滑りした。今や有力なポスト安倍の一人になった。

河野親子の歴史認識問題ほどではないにしろ、原発再稼働や福島の汚染土壌・汚染水の処理は、歴史認識とはまた違った形で左右のイデオロギーが深刻にぶつかる問題だ。目下話題の廃プラ問題も然りで、たいていの反原発論者はプラスチック製ストローの熱心な廃止論者でもある。

その反原発を熱心に唱える元総理大臣を父に持つ進次郎氏の、この問題についての持論は如何に、と筆者は耳をそばだてた。果たして、大いにがっかりした。汚染水浄化後の処理水について、会見で「環境相の所管の事柄ではない」と前置きして逃げた。経産大臣の所管だという訳だ。

そして原田前環境相が「海洋放出しかない」と述べたことについて「努力してきた方々の苦労をさらに大きくしてしまうことがあったとしたならば、大変申し訳ない」と詫びた。が、筆者は、原田大臣よく言ったと思う。処理水をどうしたら良いと進次郎氏が考えているのか、筆者はぜひ問いたい。

「所管でない」などという進次郎氏に国民は期待もしない。いつもの歯切れはどうした?そんな姿勢で国民の支持が得られると思っているならだめだ。福島問題や処理水に韓国がネチネチし始めた。アゴラの読者なら海洋放流に何の問題もないことを知っている。が、残念ながら全国民が読む訳ではない。

会見では復興大臣政務官になって以来親交のある漁業関係者との交流のエピソードを述べた。それがどうだというのか。科学的に問題のない処理水の放流を阻んでいるのは、漁業関係者がそのことによる風評被害を懸念しているからに他ならない。筆者もその気持ちは理解する。

だが、地元の漁業関係者の説得も、未だに福島やその近県の水産物などを輸入禁止している韓国や台湾の説得も、優れて政治家の仕事のはず。汚染土の処理は環境省所管だが処理水をどうするかは経産省の所管だなどと逃げを打ってはいけない。それこそ韓国に足元を見られる。

廃プラスチック問題は、分別はやめてペットボトル以外はまとめて回収し、焼却場やセメントメーカーなどで燃やすのがベスト。そもそも劣化しないのが売りのプラスチックを捨てたり埋め立てたりするから問題になる。再生も、少しでも異種のプラが混ざれば用途は極めて限られる。

レジ袋有料化やプラストロー締め出しなどの類の、ピントのずれたほとんど役に立たない小手先の策を弄するような気がするので釘を刺しておく。分別と回収の仕方を改め、高熱で燃やせる安価で高性能な焼却炉の開発と普及に努め、それを世界に広めることが大事ではないかと思う。

安倍総理は今回の内閣改造に関する会見で、進次郎氏に対する期待を次のように述べた。(太字は筆者)

環境相という責任ある立場で、いかんなく能力を発揮してもらいたいと思うが、すでに農林部会長や厚生労働部会長を務めている。当時の私よりも年季が入ってるなと、政治的な技術においてだが、そう思う。結果をぜひ出してもらいたいと期待している。

進次郎氏には、河野太郎氏のように次の次辺りの総理に、と周りに押し出されるような成果を大いに期待したい。

最後に余談。河野洋平氏の神奈川選挙区の地盤は、小泉純一郎氏の当初二回の選挙で参謀を務めた某県会議員(高校の後輩)の娘さんが引き継いでいる。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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