「債務超過」で破産危機に陥る米教会

2019年09月27日 11:30

バチカン・ニュース独語電子版が24日、報じたところによると、ローマ・カトリック米教会のニューヨーク州8司教区の中で、聖職者の性的虐待で犠牲者に支払う賠償金の工面に追われ、債務超過状況に陥る司教区が出てきた。賠償金総額が教会側の総資産を超えた状況で、遅かれ早かれ破産手続きに強いられるという。教会司教区が破産するという前代未聞の状況が生まれてきたのだ。

聖職者の未成年者性的虐待問題を協議するためバチカンで開催された「世界司教会議議長会議」の全景(2019年2月、UPI通信)

債務超過の直接の原因は今年8月中旬、法改正が実施され、十数年前の過去の性的スキャンダルに対しても犠牲者は賠償金を請求できるようになったからだ。その結果、同州8司教区で400件以上の賠償請求要求が新たに出てきた。

バッファロー司教区(ニューヨーク州北西部)、ロックビル・センター司教区、オールバニ司教区、そしてオグデンスブルグ司教区は債務超過で破産手続きをするかどうかを検討中だ。オグデンスブルグ司教区によると、「同4司教区は法律、財政、保険問題の各専門家と協議を重ねている。債務超過による破産手続きは選択肢の一つだ」という。

バッファロー司教区のリチャード・マローネ司教は、「わが司教区は債務超過保護を申請する直前だ。司教区に新たに140件の賠償金要求が提出されたばかりだ。ニューヨーク州8司教区の中でロチェスター司教区が9月中旬、債務超過申請第1号だ。これまで米国全土で20の司教区が債務超過を申請しているという。

シカゴ大司教区では2000年以来、聖職者の未成年者への性的虐待問題で犠牲者に約2億ドルを支払っている。ドイツのカトリック通信(KNA)が今月17日、同大司教区の説明として報じている。

例えば、ミネソタの犠牲者団体が8000万ドルの賠償金を受け取っている。8000万ドルは犠牲者160人分だという。加害者(聖職者を含む教会関係者)はほぼ50人だ。犠牲者1人当たり50万ドルを損害賠償金として受け取る計算になるという。もちろん、犠牲者の中には100万ドル以上の賠償金を受けとる者がいる一方、数万ドルの賠償金に留まるケースが出てくる。シカゴ・トリビューン紙によれば、シカゴ大司教区は来年にも更に1億5600万ドルを聖職者の性犯罪の犠牲者に支払う予定だという。

聖職者の性犯罪に抗議する犠牲者団体「Ending Clergy Abuse」(ECA)=ECAのHPから、2019年2月24日、バチカンで

ところで、教会は宗教法人であり、その資金は信者からの献金が主要な収入源だ。その総資産を上回る賠償金の支払いを命令された場合、教会の支払い能力を超えるため、債務超過状況に陥り、破産宣言する以外に他の選択肢がなくなるわけだ。

ボストンのローマ・カトリック教会聖職者による未成年者性的虐待の実態を暴露した米紙ボストン・グローブの取材実話を描いた映画「スポットライト」(トム・マッカーシー監督)が第88回アカデミー賞作品賞、脚本賞を受賞した。教会関係者による未成年者への性的犯罪は欧米社会で大きな衝撃を投じた(「『スポットライト』は神父必見映画だ」2016年3月4日参考)。

フランシスコ法王の友人でもあった米ワシントン大司教区のテオドール・マカーリック前枢機卿(88)に対し、バチカン教理省は今年2月16日、未成年者への性的虐待容疑が明確になったとして、教会法に基づき還俗させる除名処分を決定したばかりだ。2001年から06年までワシントン大司教だったマカーリック前枢機卿は1970年から90年の間、神父候補者を誘惑したほか、少なくとも2人の未成年者に性的虐待を行ってきたことが明らかになっている。

マカーリック前枢機卿のスキャンダルを暴露した元バチカン駐米大使カルロ・マリア・ビガーノ大司教は通称「ビガーノ書簡」の中で、「フランシスコ法王は友人のマカーリック前枢機卿の性犯罪を事前に知りながら、隠蔽してきた」と指摘、フランシスコ法王の辞任を要求したことはまだ記憶に新しい。

もちろん、聖職者の性犯罪の犠牲者への賠償金支払い問題は米国教会だけではない、ベルギーのローマ・カトリック教会は2012年から15年の4年間に届けられた聖職者による性犯罪の犠牲者への賠償金が約400万ユーロになったことを明らかにしたことがある。

4年間の間に届けられた犠牲者件数は1046件だった。オーストリアのカトリック教会や独教会でも聖職者の性犯罪の犠牲者への賠償金の支払いを行っている。ローマ・カトリック教会が欧米でこれまで聖職者の性犯罪犠牲者に支払った総額がいくらになるかは不明だが、数十億ドルになることは間違いない。

聖職者の性犯罪は教会の信頼性を損ない、脱会者は年々増加。同時に、犠牲者への賠償金も年々増えてきた。教会への献金が聖職者の性犯罪の賠償金の支払いに回されることは避けられない状況だ。「自分の献金を性犯罪を犯した聖職者の犠牲者への賠償金に使用しないでほしい」という声が平信徒から飛び出してきても不思議ではない。

バチカンでは今年2月、世界から司教会議議長たちが結集して、聖職者の未成年者への性的虐待対策を話し合ったが、犠牲者への賠償金支払い問題が大きな問題となってきている。財政危機で破産宣言を余儀なくされる教会が今後増えることが予想されるわけだ。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年9月27日の記事に一部加筆。

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