ジャパンディスプレイの失敗にみる会社再建のあるべき方法

私は長い社会人経験の中で何が専門なのだろうと思う時があります。表層では不動産事業を看板ビジネスとして掲げていますが、実は一番長く携わったのが事業再生関連であります。

ゼネコン時代、バブルのさなかにフライしないプロジェクトを数本抱えていました。世の中が浮足立っている中、「きっとこの事業もうまくいくさ」とどうにか、前に進めようと努力したのですが、ほとんど完敗状態でした。

北米に移ってきてしばらくした後、シアトルの全事業がデッドロックに乗り上げ、シアトルの出店を解体、人材総入れ替えとなり、私の上司と私の2人でバンクーバーから管理することになりました。

毎週2日間、ワシントン州の3か所の事業所や現場に通い詰め、事業再建に努めます。運営中のゴルフ場事業は融資を受けている地元の銀行から特別管理下に、日本の親会社のメインバンクからも1円単位の管理を求められました。

その間、自分の事業であるバンクーバーの事業会社は再様なしがらみや借入金の利払いがかさみ、90年代後半には300億円を超える債務超過状態。本体の決算で開示義務が生じる可能性があり、これまた縮み上がるような日々を過ごしました。

リストラと事業再建が私にとっては当たり前となり、アメリカでは剛腕にも全事業で一気に170人の解雇をし、各事業所でそれらの従業員を前に責任者として説明をしました。カナダの会社は300億円の債務超過を解消するためあらゆるテクニックを駆使し、数年かけて段階的に大幅削減させました。事実、その会社は私が後々に買収したのですが、今ではすっかり一掃され、黒字会社として運営しています。

今、カナダで事業再生案件を手掛けていますが、これから日本でもひとつ手掛けることになるかもしれません。

会社を再生させるにはどうしたらよいのか、といえば上述のようにテクニック論もあるのですが、最終的には会社という組織のベクトルを同じ方向にそろえ、活性化を再度促進させることであります。

ジャパンディスプレイ社ロゴ(Wikipedia:編集部)

ジャパンディスプレイの迷走ぶりがいよいよ佳境に入ってきたように見えます。臨時株主総会を今日27日に控える中、中国側から前日に出資「お断り」の通告となり、再び、直前で裏切られてしまいました。今日の臨時株主総会をどう乗り越えるのかわかりませんが、個人的には一旦、法的整理させるべきかと思います。

この春からの再生プラン、そして出資者に振り回されてきた理由がどこにあるのか、といえば経営陣と会社の体質が事業をするような状態になっていない、それに尽きると思います。外部の資金を取り込みたくてもそれに応えられないのであれば、それは法的に再生をさせるしかありません。

ニュースではアップル社が更なる資金援助をすると報じられています。私にはある意味、驚きのニュースです。この会社の経営陣が経営について本当に理解しているのか不思議なのですが、ジャパンディスプレイの経営が窮地に陥ったのはアップルに偏重した経営があったからなのです。これがとにかく第一原因なのです。

これにより同社が事業のフレキシビリティをなくし、「アップル様の言う通り」になってしまっています。操業停止している白山工場もアップルの言うなりであんな投資をしてしまったのでしょう。

私は何度か、このブログでジャパンディスプレイができたもともとの組成体、ソニー、日立、東芝という日本を代表するプライドの塊の寄せ集めが足かせだったと述べました。更に産業革新機構と経産省というガチガチの上から目線管理でさらに手足を縛りあげ、自由度がほとんどない会社に仕立て上げたのであります。

そんな組織に中華系のファンドの資金が入ると考える方がおかしいのであります。彼らは金も出すが、口も出す、です。しかし、ジャパンディスプレイとその後ろにいる産業革新機構は金だけ出させるぐらいの感じだったと思います。

もしも私が再生させるならまず、法的再生をさせること、そのあと、産業改革機構と経産省に一切手を引かせること、新経営陣は外部のプロの経営者を持ってくることが第一ステップです。次いで、新しい出資者に新たなる技術開発の研究開発費を重めに出してもらうよう計らうこと、新経営陣はディスプレイビジネスの10年後がどのように変貌しているか見極めた上でそれに見合う新たな戦略を立てること、シェアという数字を追わず他社より一歩半先を行く経営をすることが重要かと思います。

日本的経営の何がだめなのか、日本の企業経営者はこのケーススタディをしっかり学ぶべきだと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年9月27日の記事より転載させていただきました。