こんにちは、広島市議会議員(安佐南区)のむくぎ太一(椋木太一)です。
8月6日に広島市の平和記念公園で開催される「平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)」で、左派のデモ団体が拡声器で叫んだり太鼓を打ち鳴らしたりして式典の静謐な環境を脅かしている状態が続いています。(参照『8・6広島平和式典の喧騒:「アベ帰れー」のデモは表現の自由か?』、『またも破られた静寂:原爆の犠牲者を冒とくする「アベ、帰れ」』)
広島市は今年8月6日の平和記念式典で、参列者を対象にこの騒音に関するアンケート調査を実施しました。そして、広島市は9月26日、アンケート結果を市議会総務委員会に提出しました。
提出された資料によると、アンケート調査の目的は被爆75年にあたる令和2年(2020年)の平和記念式典に向けて、式典に適した環境を確保するための対策を検討するためで、平和記念式典に参列した被爆者やご遺族ら1098人から回答を得ました(回答率36.7%)。
質問は、
①「式典中、拡声器からの音が聞こえたか」
②「音の内容が聞き取れたか」
③「音が聞こえた時間帯(式典で何をしている時か)」
④「式典中の音をどう受け止めたか(式典への影響はあるか)」
⑤「音量への対応について(どう対応すべきか)」
⑥「式典と厳粛な環境の関係について(厳粛さが必要か)」
などの10項目。また、「音が聞こえたか」「音の受け止め」「音量への対応について」の3つの質問については、被爆者・ご遺族の別建てで回答を求めました。
このアンケート結果について、いくつか特筆すべき点があります。
まず、⑥「式典と厳粛な環境の関係について」ですが、全体の71.0%(779人)が「式典全体を通じて厳粛な環境が必要」と回答しています。「一部の時間帯のみ厳粛な環境が必要」(15.8%、174人)と合わせると、86.8%(953人)が平和記念式典は静謐な環境で行われるべきだと考えていることになります。
これまで私は、平和記念式典は犠牲者の方々を悼む場であると繰り返し訴えてきました。今回のアンケート調査の数字は、まさに、このことを裏付けているのです。
さらに、④「式典中の音をどう受け止めたか(式典への影響はあるか)」では、拡声器からの音が聞こえたと回答した人(853人)のうち、58.9%(502人)が「式典への悪影響がある(例えば厳粛な環境を損なう)」と回答しており、騒音の悪質性を深刻にとらえていることが浮き彫りになっています。
しかも、そのうち、52.0%(261人)が「今後、音量を規制する措置(例えば条例制定)を講ずるべきだ」としています。被爆者・ご遺族の方々(331人)に限れば、40.5%(134人)が、条例制定などの措置を講ずるべきだと回答されています。
繰り返しになりますが、平和記念式典は犠牲者の方々を悼み、恒久平和を祈願する場です。これらの数字は、長年、デモ隊による騒音に対して苦々しい思いをしてきた被爆者やご遺族、参列者らが「静謐な追悼の場」を強く求めていることの証だと思うのです。
ところが、デモ隊の支持者の言い分はそうではありません。私がアゴラで問題提起したところ、デモをすることについて、ツイッターなどで「安倍(総理)は(式典に)ふさわしくない。『安倍帰れ』を代弁していただいて感謝している」「安倍にしゃべらせておくのは広島の恥」という反応を数多くいただきました。
また、「表現の自由」の観点からの反論もありました。しかし、犠牲者の方々が安らかに眠ることを妨げる自由まであるとは思えませんし、平和記念式典を自らの政治的アピールの場に利用しているだけで、犠牲者・ご遺族の側に立ったものではないと思います。
実際、アンケート調査では、③「音が聞こえた時間帯(式典で何をしている時か)」について、「安倍総理のあいさつ」(61.0%)が最も多い回答となっています。これでは到底、上記のような言い分は、世間の理解は得られにくいのではないでしょうか。
アンケート調査のほかに、広島市は平和記念公園内の5か所で拡声器の音量を測定しています。デモ隊のルート付近では、最大で106デシベルを計測したようで、この数字は、広島県の「拡声器による暴騒音の規制に関する条例」で規制対象となる音量(85デシベル)を超えていました。
デモ隊のルート付近には、マンションや企業の事務所などもあります。デモ隊ならびに支持者らは、平和記念式典の静謐な環境だけでなく、平和記念公園の近隣住民らの住環境も悪化させていることも認識すべきなのです。
今後の対応として、市は、デモ隊に式典を行う環境を確保する協力を要請しつつ、進展しない場合は、音量規制などの条例制定を視野に検討していくとしています。平和記念式典での騒音問題は今に始まったことではありません。
このアンケートに先駆け、今年6月の市議会定例会の一般質問で、松井一実市長が「式典中にうるさいと感じる音が聞こえている状況は、式典の目的を達成する公共の福祉を損ないかねない」と答弁されています。
来年は被爆75周年の節目でもあります。「8月6日」には海外からも多くの参列者、見学者が訪れます。唯一の被爆国の最初の被爆地として、犠牲者の方々に安らかに眠っていただき、また、誇れる式典にするため、市当局と市議会が一丸となって、断固たる覚悟で条例制定に挑まなくてはならないのです。
むくぎ(椋木)太一 広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)
1975年、広島市生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務などを経て2006年、読売新聞西部本社に入社。運動部記者時代はソフトバンクホークスを担当し、社会部では福岡市政などを取材した。2018年8月に退職し、2019年4月の広島市議選(安佐南区)で初当選。公式サイト。ツイッター@mukugi_taichi1