東京都議会の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。
台風被害は甚大に
台風19号が日本列島を襲って各地域から過ぎ去っていますが、川の堤防決壊が発生したのは、21河川の24か所に上ることが国土交通省の調査で分かっています。千曲川や秋山川の救出状況など昨日からテレビで中継されて自然災害の脅威を肌で感じているところです。
千曲川は例年夏場にはラグビー関係で何度も行っていまして、私としてはいつも爽快な気分で橋を往来していました。長野駅から菅平に今年は2回入っており、あの千曲川がこんな事になっているのかと重く事態を受け止めています。今はとにかく救助そして1日も早い復旧を東京からも提案し、微力ながら努力していきたいと考えています。
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本来であれば、こちらの取材を深めるべきですが、私の立場からは次の備えに向かって走り出すことも必要と考えて、荒川下流域の洪水対策について記させて頂くこととしました。
前回、ダムの役目について私なりに書いてみました。私はあくまで工学系の人間ではなく、入り口論を書きましたが、その先の専門領域について博士後を取得されている中野区の加藤たくま区議がアゴラで補足の記事を書いて下さっているのでこちらも是非!
私の地元を流れる荒川では、今でこそ河川敷のグラウンドが見えるくらいまで水位が安定してきましたが、13日朝の段階ではほとんど見えませんでした。実際、関東では12日午後あたりから激しく雨は降り続けました。夜になって荒川氾濫の可能性を指すアラートも鳴り続け、眠れない時を過ごされた方が多くいたわけです。
墨田区は隅田川と荒川に挟まれる形の地形で、水害対策にはかなり気をつかってきた区だけに、実際に満潮を迎える13日の午前4時30分頃まで全く気の抜けない状態が続いていたのです。私はあらためて、今回、荒川第一調整池の機能が十分に発揮されたと認識しました。
荒川第一調節池の意義
この荒川第一調節池は荒川中流部に位置し、荒川の洪水調節機能を持たせて下流域の水害軽減を目的として整備されてきました。一方で、東京と埼玉の飲料水確保という利水目的もあります。
国土交通省が作成した12分の動画があります。もしお時間あればご覧ください。
荒川で洪水が発生すると調節池排水門が閉まり、小洪水時には鴨川を遡上した洪水が田島ヶ原サクラソウ自生地を冠水させ、中洪水時には羽根倉橋付近にある越流堤から調節池の上流ブロックに洪水が流入し、大洪水時には上流ブロックの水が流入堤を越えて彩湖のある貯水池ブロックへ流入します。調節池に水が入るおおよそ1時間前及び30分前にはサイレンが鳴動する。調節池排水門は、荒川の流量低減後、再び開くことになっているのです。
簡単にまとめれば、上流から流れてきた水がそのまま下流に流れると下流がパンクしますから、ここで水を吸収していく役目を担っているのです。このエリア全体で水を貯めていくことになります。
補足ですが、上流部からここにくるまでに同水系のダムでは現場職員達が様々なシミュレーションを繰り返して下流への負担を減らす努力をしてくれています。それでも、ここに多量の水処理が必要な時に調節池が効力を発揮していくのです。
ここによく言葉に出てくる彩湖があります。同エリアには道満グリーンパークがあり、ヤクルトスワローズのファーム球場やゴルフ場もあります。戸田リトルシニアという野球チームに行ったり、ヤクルト球場の取材の時に、大雨の時はここは水で一杯になるんだよと言われてきたものでした。
ですので、このエリアの治水機能はよく頭では理解していました。ところが、下流域に生活する私でありながら、その重みをもっと多くの人に伝える機会を逸していたのは間違いありません。
実際に同地にグラウンドを持つラグビー・ヤクルトLEVINS(トップイーストDiv1)の西條正隆選手から一夜明けての様子の写真や動画が届きました。これから、どれくらいで水が引くかは分かりませんが、当分グラウンドは使えません。
実際に、レビンズはシーズン中で今週土曜の19日や11月2日、あるいは台風で中止となった10月12日の順延分も含めて直近で公式戦を控えています。現在、リーグで首位となっている同チームにとっては試練の時を迎えています。洪水調節の区域だったことは重々承知で使用していたにしても、ちょっと可哀そうですね。
このレビンズは一例ですが、さまざまな犠牲があって、荒川下流域・東京のゼロメートル地帯は守られたと言えます。このシーズンをレビンズが乗り切るために、下流域の人間として私も代替グラウンドやスペースがないかと考えて動き始めました。読者の中でもレビンズを応援して下さる皆さんのお力をお貸し下さい。
彩湖の機能は元々知られていなかった
実は、この彩湖が小池都政下で注目されたことがあります。それは五輪3会場見直し問題で「海の森水上競技場」建設を中止して、宮城県の長沼やその他に会場を変更しようという頃の話です。
関連拙稿:【長沼会場】宮城県の負担は少なくて本当に済むのか???
この時に、長沼の他に、彩湖でボートをやればいいという無責任な話もありました。当時、私は様々なメディアに出て、反論を小池都政ブレーンに向かって言い続けてきました。中でも彩湖については、数十年に一度かもしれないが大規模水害対策で機能するのが彩湖である。気持ちは分かるが、オリンピック会場にするのではなくオリンピック会場を守るための調節池だと論じたこともありました。あの時に多くの人がピンとこなかった調整機能が今回、如何なく発揮されたのです。
私自身もテレビ朝日でまだ駆け出しだった頃に、災害特別番組を担当した事がありました。この時に、荒川には危険ポイントが幾つかあることを取り上げて放送をしていました。全体の堤防決壊以前に、堤防より低いところに橋が架かっている(歴史的な経緯から)ポイントがあり、その手前で食い止めないと大変なことになると考えていました。この工事計画は進んでいるのですが、直ぐに出来るものではないので、今回のような時には緊張が走ります。
公共事業の難しさ
更に付け加えると、荒川では第一調節池の上流部に荒川第二・三調節池を整備中です。いずれにしても、莫大な費用と時間がかかるため、即効性も見えづらく公共事業批判に繋がります。本当に適切な契約に基づいた公共事業は、見かけの金額は大きくなるものの、今回のように大きな効果があり、闇雲に批判すべきではないはずです。
前回でご紹介した八ッ場ダムもそうですが、やはり大きな目的・意義があります。公共事業は特定の政治家が絡んでいるという前提で話を進めていくのは、もうやめたらいいと考えます。当然、入札契約には透明性を担保させるのは当然ですが。今回の台風19号を教訓に公共事業の大切さを考えて頂きたいと思います。
川松 真一朗 東京都議会議員(墨田区選出、自由民主党)
1980年生まれ。墨田区立両国小中、都立両国高、日本大学を経てテレビ朝日にアナウンサーとして入社。スポーツ番組等を担当。2011年、テレビ朝日を退社し、2013年都議選で初当選(現在2期目)。オフィシャルサイト、Twitter「@kawamatsushin16」