NHKの「森ゆうこ報道」から国民を守りたい

新田 哲史

国民民主党の森ゆうこ(裕子)参議院議員の質問通告が事前に「情報漏洩していた」などと的外れな主張をしていることについて、北村規制改革担当相は18日の記者会見で、毎日新聞記者からの質問に対して「内閣府から通告内容が漏えいした事実はないと確認している」と一蹴。原英史氏が、予算委に出席を打診されたことを関係者に伝えたことについても「質問通告を受けた私人が内容等を第三者に伝えることについては、特段の定めはない」と述べたことで、森氏らの主張は失当だったことであっさり決着した(発言の全容は政府インターネットテレビの9:06〜)。

記者会見する北村氏(政府インターネットテレビ

それでも、森氏や原口氏は週明けも意味不明の逆ギレを繰り返すのであろうが、これ以上、不毛な主張を続けて党全体のブランドをひたすら毀損する道を選ぶのだろうか。

森氏らの間抜けな言動はまたあとで糾弾するとして、それよりもこの問題の本質である原氏への「人権侵害」であったり、台風前夜遅くまで、森氏が追加質問を小出しにしたことで霞が関の官僚たちが悲鳴をあげて、ツイッターで告発したことだったりといった論点が、産経と日経を除き、マスコミでほとんど報道されないことに怒りを覚える。

北村大臣の発言を伝えたNHKの記事も見出しが『国会質問漏えい疑い 「民間人が第三者に伝えた」 地方創生相』だ。これではまるで森氏らが主張するように、通告を受けた私人が第三者に伝えたことがまるで違法行為であるかのように、視聴者は印象を持ってしまう。さらに記事を読んでも、今回の問題のきっかけ、つまり官僚たちがツイッターで告発した経緯がすっぽり抜けてしまっている。

しかも、NHKの初報をさかのぼって見ても、森氏らが記者会見したところからスタートしている。その前段はこういう内容だ。

国民民主党などは、森ゆうこ参議院議員が政府側に通告した質問について、委員会の開催前に外部に漏れていた疑いがあるとして、事実関係の調査を始めることになりました

国民民主党によりますと、15日の参議院予算委員会で質問に立った森ゆうこ議員が、閣僚らが丁寧に答弁できるように政府側に通告した質問の内容について、委員会前日に放送されたインターネット番組に取り上げられるなど、外部に漏れていた疑いがあるということです。

記事中にあるインターネット番組とは、高橋洋一氏らがこの問題でコメントした「真相深入り!虎ノ門ニュース」のことだが、高橋氏が論評したのは、ツイッターの事件がまず最初にあったからであって、NHKがここに触れないから、視聴者は断片的にしか判断材料を示されず、問題の本質が伝わらないのだ。当然、国会改革や霞が関の働き方改革につながる国民的な議論が起きるきっかけもない。

参議院インターネット中継より

もちろん、このままの報道のされ方では、論点ずらしに懸命な森氏らの思う壺だ。

まさかとは思うが、このような「切り取り」報道では、国民民主党側に何か忖度して「報道しない自由」を行使しているのではないか、と疑念を抱く視聴者も出てくるだろう。

若い世代は、新聞もテレビも見ないという人が増えているとはいえ、ネットメディアの発信力はNHKに比べようもない。国民の知る権利が阻害されている。NHKは、民放と違い、全国にあまねく視聴者から法律に基づいて強制的に受信料を徴収できる「公共放送」であるわけだから、国民に限られた判断材料しか提供しない報道をするというのは、どういうことか。このままでは、N国にまたつけ入れられるネタを提供するだけだ。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」