森ゆうこ議員の通告問題:朝日新聞の記事には注意が必要だ

2019年10月21日 06:01

本論からずれるのだが、朝日新聞10月16日の記事に誤りがあったので指摘しておく。

森ゆうこ議員「質問内容が流出」 政府側への事前通告(朝日新聞デジタル)

通告は、参議院規則で、会議での発言者に定められた義務である。

第91条 会議において発言しようとする者は、予めその旨を参事に通告することを要する。但し、やむを得ないときは、この限りでない。

他方、朝日新聞では、議員が通告をすることは、「法令などで定められた義務ではなく、あくまで「慣例」」と書かれている。なお、上記参議院規則は、Googleで、「参議院規則 通告」というキーワードで検索すると、数秒かからず誰でも読むことができる。

また朝日の当該記事で、通告は「各省庁の事前準備の負担軽減を目的」に、「質問内容を伝えるもの」としているが、「省庁の負担軽減」は通告の目的ではなく、通告をする際に議員がすべきスケジュール的な配慮の話だ。

もう少し補足すると、通告で足りない情報をレクで補足したりするが、いずれにしても「通告」や「レク」という形で「議員→各省庁」に質問前に質問内容の概要を伝える行為の本来の目的は、私は何度も述べているが、質問議員と省庁の質問内容の相互理解を深めることで、国会での議論を意味のあるものにするためだ。

イメージしやすいように、適当な創作事例をもとに解説しよう。

例えば、委員会や国会で質問する議員が、防衛省が平成24年度に、イージス艦2隻のコンピュータの入れ替えにあてた予算とその目的が、自分の質問に重大な影響のある情報であったとする。仮に防衛省に何の通告もなく「平成24年度に、イージス艦2隻のコンピュータの入れ替えにあてた予算はいくらで、目的はなんですか?」と聞いて、防衛大臣がすぐ答えられるだろうか?無理である。

無理な場合、大臣答弁は「答えられる情報がございません」となり、質疑は空転する。

それでは税金の無駄遣いとなるので、自分の質問を意味のあるものにするために、担当省庁の官僚に事前に情報を集めてもらうために実施するのが「通告」であり「レク」である

この「通告」が遅れてしまうと、今回のように官僚が帰宅できなくなるため、できる限りはやく通告を提出したり、通告の提出期間に余裕を持たせるスケジュールを組んだりする議員側の配慮を発露とした振る舞いが、朝日新聞の言う「各省庁の事前準備の負担軽減」を目的とした行為だ。

逆に、できる限り通告を遅く提出したり、深夜にいたるまで何度も通告内容を差し替えたりする行為は、「各省庁に対する嫌がらせ」なので、朝日新聞の記者はこの際よく覚えておくとよいだろう。

この前提を書かないと、「通告は、議員が省庁の官僚に対していたわりの心から実施している行為」と、国民の理解をあらぬ方向にミスリードすることになる。

日本が誇るクオリティペーパーを自任するのであれば、もう少ししっかりと下調べをしてから紙面化するべきだろう。それとも、これらの誤りは「通告なんてしなくてもいい」という、アナーキズム的方向に国民を導こうとする意図があってのことだろうか?

高橋 富人
千葉県佐倉市議会議員。佐倉市生まれ、佐倉市育ち。國學院大學法学部卒。リクルート「じゃらん事業部」にて広告業務に携わり、後に経済産業省の外郭団体である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で広報を担当。2018年9月末、退職。出版を主業種とする任意団体「欅通信舎」代表。著書に「地方議会議員の選び方」などがある。

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