会社法の一部改正法律案はなぜ修正されたのだろうか?

11月5日にこちらのエントリーにて告知いたしました大阪弁護士会・CGネット共催公開シンポジウムもいよいよ今週金曜日に迫ってきました。おかげさまで本日(11月26日)現在、定員をはるかに上回る260名の方々に参加申込をいただき、弁護士会館2階ホールの設営も変更させていただきました。

紺色らいおん/写真AC(編集部)

やはり改正会社法の成立により、上場会社に社外取締役が義務化される、という機運が高まってきたことによるものでしょうか。ともかく当日に向けて精一杯準備いたしますので、どうかよろしくお願いいたします。

ということで、本日は改正会社法の話題です。

昨日(11月26日)、会社法の一部を改正する法律案(一部修正案)が衆議院本会議で可決され、今国会で改正会社法が成立する可能性が高まってきました。

提出時の法律案から一部修正され、株主提案権の改正のうち、議案提出権(会社法304条)は現行法のまま、議題提案権(議案要領通知請求権 305条)の議案の個数制限だけが改正されるということになりました(305条の修正案はとても読みにくいですね)。「目的等による提案の制限」は議案提出権、議案要領通知請求権いずれも改正から外れたことになります。

株主提案権の濫用事由を法文で列挙することにより、会社側の判断のみで権利行使を阻止できるとするのは過度の株主権制限である、一部の濫用事例が認められるだけでは権利制限を一般化する立法事実とは認められない、濫用かどうかは極めて難しい判断であり、問題があれば司法判断や会社法の過料の制裁で対応することで足りるのではないか…といったところが修正の理由になっているように思います(こちらの衆議院法務委員会ニュース参照)。

しかし、それを言い出すと会計帳簿の閲覧制限(会433条2項)や株主名簿の閲覧制限(同125条3項)、総会における取締役の説明義務の免除(同314条)といったところはどうなるのでしょうかね?

それぞれ重要な株主権の行使場面ですが、抽象的な濫用的要件をもって会社側で権利行使を制限できるという点では同じような気もしますが。。。株主提案権の制限廃止だけが問題になるのであれば議長の議事整理権で区別がつきそうですが、総会前の議題提案権の制限についても修正(廃止)が認められましたので上記の株主権制限規定の趣旨と区別できるのでしょうか。

会社法制(企業統治関係)部会での法改正の審議でも、「目的等による提案の制限」はそれほど熱心に審議されていなかったように思います(もっぱら議案の個数制限ばかりが議論されていたものと記憶しております)。私の中では「なぜ株主提案権の目的等による制限」のみ修正されたのか、いまだによく理解できておりません。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録 42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年11月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。