不甲斐ない野党こそが与党の最大の支援者であり政権運営が弛緩する背景であるが、国民民主党の玉木雄一郎代表の打ち出す政策(や人柄)には埋没させたくないなにかがある。そこで玉木代表に心を込めて諫言を申し上げる。0.2%とも報じられる低支持率(参照:時事通信)を打開するなんらかの糸口になればと思う。
「羹に懲りて膾を吹く」国民
羹(あつもの)とは民主党政権時代、膾(なます)とは現在の国民民主党のことである。どういうことか。
「悪夢の3年間」民主党政権時代は思い出したくもないが、「高速道を無料に」、「ガソリン値下げ隊」、「財源はある」等、明らかに実行できないと予測できる詐欺的公約・マニフェストで、マスメディアと共に国民をそそのかした。
彼らが無くすと偽ったガソリン暫定税率は「税に税を課す」二重課税や恒久的な「暫定的」課税など、確かに国政の矛盾点を象徴し、国民にも分かり易い不満の対象だった。他にも「本当は実現不可能な幻だが、イメージし易い具体的なビジョン」を振り撒いた。自民党と比べて、期待感を持たせる民主党政策のイメージに騙される国民は多く「一度やらせてみよう、ダメなら戻せばよい」などという“試用期間”的な位置付けで民主党政権が誕生した。これが悪夢の始まりだった。
その後、ガソリン暫定税率はそのまま、高速道路料金もそのまま、八ッ場ダムは廃止決定後再開、体当たり中国船の無罪放免、「最低でも県外」発言による基地問題再活性化など、ほぼ全ての公約は結局幻に過ぎなかった。“ルーピー”と嘲笑を浴びた鳩山総理(当時)から始まる民主党政権では次々と、日本国民にとっては信じられない国政運営を目の当たりにすることとなった。
決定的だったのは東日本大震災への対応だ。原発事故対応では、菅直人総理(当時)自ら事故現場を混乱させ被害を拡大、住民避難に関する施策の不手際や不審感しか持てない情報統制などやりたい放題で、日本を崩壊に追い込む「悪夢」が展開された。(評価については諸説あり。)
「騙されたと思って食べてみて」と言われて民主党の政策メニューを注文したら、それは日本と国民への「虐待」のフルコースだった。騙された3年間は歴史に残る「羹」の時代だった。唯一、野田総理(当時)が政権を手放したのが民主党の良心だった。
下野後「党名ロンダリング」で正体不明に
下野すると代表を二重国籍議員に変え、党名を「民主党」から「民進党」へ変え、小池都知事というメディアが担いだ、国会議員ではない人物の元で「希望の党」という党に合流しようとしたり、拒絶されて立憲民主党を立ち上げたりと、「元民主党グループ」は忙しく迷走した。国民には追跡不能な離合集散を繰り返し、そのさまは「党名ロンダリング」という言葉がふさわしかった。
もはや国民からは、(維新の会と共産党を除く)野党をまとめて「民主党ラシキモノ」または「ともに民主党」として包括的に認識されていることだろう。鳩山由紀夫氏・菅直人氏・小沢一郎氏といった存在感の大きかった民主党幹部に加え、枝野幸男氏(現立憲民主党党首)、蓮舫氏、原口一博氏、辻元清美氏ら「民主党の一員」として強く国民の記憶に残った人物の多くは、今も野党に多く残る。
しかし野党第一党とされる立憲民主党は「悪夢の民主党時代」と言えば激しく反発するが、民主党時代の失政の責任を問われれば「我々は民主党ではない」と法律上の形式的後継団体ではないことを口実に責任逃れをする。
一方、民主党のリーガルエンティティ―(法律上の組織・存在)を受け継いだのは国民民主党である。現在の代表である玉木氏は、民主党時代は特に幹部ではなかったが、モリカケ騒動へ参加したので“暗黒面(既得権益保護チーム)”の一員としての一定の負のイメージは残る。更に自由党(小沢一郎他議員)吸収の結果、民主党の負の遺産(レピュテーションリスク)も相続した。「もう民主党は懲り懲りだ」という国民の警戒心も強く、「民主党ラシキモノ」である立憲民主党や国民民主党の政策については、まともに話を聞く姿勢を持てない人が多い。
これらの結果国民民主党が、たとえどんなに良い政策(膾)を打ち出そうが、過度に警戒されて「食わず嫌い」される状態である。
毒入りフグを出されても食べられない
今、国民民主党が打ち出す国会改革をはじめとする諸政策の中には意義のあるものも多い。憲法改正や集団的自衛権に関する話など、玉木代表の考え方は現実的な解を持つ。ところが、例えば玉木代表が記者会見をしている最中に、代表の知らない別動隊の暴走が観測されるなど、どうも統制の取れた組織と思えないのが国民民主党である。どれほど優秀な人材を揃え、良い政策を提示されようが、もしも単なる「濁り」を超越した「猛毒」が含まれているならば、「清濁併せ吞む」というわけにはいかないのである。
4項類推で「フグ:毒=国民民主党:x」とおくと、解x =「旧自由党(小沢氏、森氏ら)」と同調する議員(原口氏ら)である。合併当初は「兎に蛇の頭」が付いたように見えたが、今では「双頭の蛇の片方が兎の頭」である。「対決より解決を」とスローガンを掲げながら「桜を見る会追及本部で対決を主導する原口氏」を見ると、それらは朝日新聞における「不偏不党」という綱領と同じ空虚な偽看板だと感じてしまう。
あるいは、原英史氏の個人情報を漏らしたことを玉木代表が自身のブログでは謝罪しながら国民民主党公式ホームページでは明確な代表談話として掲載しない(関連動画のみ掲載、11月26日時点)。このような党のスタンスを見ると、「邪悪な心をクリーンなイメージの包装紙で包み隠しているだけ」のようにも見える。とにかくこのままではイメージが悪い。
国民からの支持を得る必要条件とは
少なくとも、下記3点の「禊」をしないと支持率上昇は困難であろう。支持率低迷のまま次の選挙を迎えたくないならば、打開策を打ち出すことが必要である。
1.個人情報漏洩問題についての森ゆうこ議員への党としての処罰
本来、代表者が謝罪したならば、それは組織(党)としての謝罪と受け止められる。しかも今回の森議員の過失は、業務執行上の小さなミスではなく党綱領にも明記されている「基本的人権の尊重」という趣旨に違背する重大なミスである。ゆえに、党として適正な処置をしなければ、「国民民主党は個人の基本的人権を尊重する」という命題の偽(誤り)を立証する「反例」になってしまう。ここに気が付いている人物は少ないが、逆にここまで注視している人物を離反させてしまうことは、慢性的に党の活力を殺ぐことにつながるだろう。
2.民主党政権時代の総括(反省)
法的な後継団体として民主党を継いだ以上、民主党政権時代の各政策とその結果を自ら総括し、それを今後の党運営に反映することがまずは必要である。「信用できない出鱈目な基礎の上に立派な建物は建たない」ので、将来に向けての政策を語る上では、過去の政策に関する自己評価と反省の表明は地味だが大切だ。
3.政策は「宝くじ」に見習え
この小見出しは誤解されそうだが、「博打的政策を出せ」という意味ではない。宝くじの還元率は、一般に50%を切ると言われており、確率の「期待値」の考え方を知っていれば「投資」としては決して買わない。しかし実際に売れるのは、「期待値」+「ワクワク感」>「費用」の人が多いからである。つまり宝くじとは「ワクワク感」というエンターテイメントを購入しているのである。
政策も同様である。汗をかいて付加価値を生み出すのは、日本においては他でもない国民自身である。その国民が付加価値を生み出す活動は、結局「希望や夢」という心の動機が必須である。国民民主党が「『希望や夢』を国民が抱き、『ワクワク感』を持って生きて行ける社会」というストーリーを提示できた時、「他にましな野党がないから自民党」という層の票を集める追い風が吹くだろう。
批判に聞こえたら残念だが、玉木代表には期待しているからこその提案のつもりだ。
田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。