沢尻エリカさんが「一発アウト」勘違い男の杉村太蔵さん

田中 紀子

現在、杉村太蔵氏による沢尻エリカさんへの発言がネットで炎上していますが、この人の発言を看過できない理由を本日は書いてみたいと思います。

まず、私が思う杉村氏の問題発言は以下の通りです。

「サンデージャポン」(11月16日放送)より

1. 自首しろ発言

まずはホリエモンさんとサンジャポでバトルになった

(違法薬物を使用している芸能人は)全員自首しろ。自ら降板して、警察にちゃんと言って、ちゃんと薬物治療受けなさいと。警察が逮捕するまでやり続けるのと、ちゃんと自ら反省し悔い改めて自首するのと、天と地ほどその後の人生に差がありますよ。

この発言は、今の社会システムで警察に自首したら、すべての信用を失うだけです。むしろ治療につながる機会を逸しているケースのほうがずっと多いわけじゃないですか。

警察もマトリも、現在は薬物事犯の再起を促すより、平気でマスコミに個人情報を垂れ流し、自分たちの手柄をことさら誇示するような姿勢をとっています。欧米諸国のように自ら辛い治療に向き合った人が、その勇気を称賛され、再起の道が開かれるようになるまでは、全くの逆効果です。

2. 一発アウト発言とその弁解

沢尻エリカさんに対して、「一発アウト」と発言したことで、「社会復帰を認めない気か?」と大炎上し、今度は慌てて釈明コメントを出しましたが、これがそもそも深い考えがある人ではなく、世間の風を見て主張を変えるのでブレブレで、ホリエモンさんなどからも再び失笑をかっているわけですが、その発言というのが、

『一発アウト』とは言いましたけど、社会復帰するなという事ではないわけ。テレビのような、こういった大きな影響を与える仕事に関しては、きちっと一発アウトだってことを示すことが第2、第3の沢尻被告を作らない、最も重要なポイントだというのが、僕の考え方なんです。

というものです。

いやいや、ずっと昔から芸能人なんか毎年誰かが逮捕されまくっていて、そしてそれで引退にまで追い込まれる人もいますが、別に芸能界の薬物問題一向に変わらないですよね。歯止めになんかなってないじゃないですか。

さらに、先日ワールドトライアウトで監督として再起された清原さんに対して、

二度と薬物に手を出さないでほしいですし。この戦いに勝ってほしい。全く同感ですよ、みなさんと。ただひとつ言えるのは、これだけ大勢のサポートを受けられるというのは、例外中の例外だという事は間違いないと思いますね。この期待を裏切らないでもらいたい。

オイオイあなたとは比較にならないくらいのスーパースター清原さんに対してなんちゅう上から目線。
それ、テレビの公開番組で本人の目の前で言ってみたらどうですか?「勘違い男」として、笑われるのは間違いなくあなたの方だと思いますよ。

それと、薬物事犯に対する社会復帰の支援は一般社会の方がよほど進んでいます。
出所者を積極的に雇用しようという社会の好循環を目指す温かい企業はいくらでもありますし、再犯防止法が成立以来、法制度としても確立しています。

更生保護における就労支援(法務省)

ここに書いてある通り、無職の人の再犯率は有職者に比べ4倍も高く、罪を犯した人たちの職を奪わないことは、日本の治安を守るためにも大変重要な施策です。

ですから一般社会では、そこを理解し再起を応援しよう!という取り組みが広がっています。

それに対し、芸能界や著名人に対してだけが、同じ芸能人、著名人による足の引っ張り合いがひどすぎて、社会に大きな誤解を与えているのに、その罪深さに杉村太蔵氏は気づいていない、まさに無知そのものの裸の王様状態です。

3. 「芸能人は正しいことが条件」発言

「芸能界っていうのは面白いとか、演技ができるとか、歌がうまいとかよりも「正しい」っていうことが条件。社会人として正しいことをやっているっていうのが、このステージにいる最低条件でないといけない。というのは影響力があまりに大きいですよ、一発アウトだっていうのをしっかりと示さないと駄目」

これを聞いたときは爆笑するとともに、どんだけ傲慢なんだとむしろ哀れにすら思いました。
芸能人で「正しい」人って誰ですか?

まさか杉村太蔵さんあなた自身が正しい人だと主張するつもりじゃないですよね?
小泉チルドレンのしくじり先生であるあなたが、よもやご自身のやらかしたことを忘れたわけではありませんよね?

この世に完ぺきに正しい人など一人としているはずありませんよ。
むしろ芸能界などしくじり先生の巣窟じゃないですか。
人間とはそういうものですよね。失敗や間違いを犯し、傷つき傷つけられる。
だけどそれを許しあい、支えあうのが愚かな人間たちの精一杯の愛の姿じゃないですか。

それは、聖書の時代から脈々と続く、人間の宿命ですよ。
かの有名なマグダラのマリアの話、あなたご存じないですか?

間違い、失敗を犯すことが宿命づけられている人間だからこそ、再起を果たした人たちから勇気づけられ、自分がいつ逆境に陥ってもおかしくないなと謙虚になれるんですよね。そして「お互い様」と支えあう、それが社会の好循環じゃないんですか?

杉村太蔵さんはあまりに自分のタレントとしての役割、人の逆目を声高に話す、極端な持論を展開することで目立とうとする、そういう必死さが見えて痛々しいですが、そのおかげで社会に間違った情報を垂れ流してるんですから、すでにそれだけで正しい人なんかじゃないですよね。

ご自身の持論から言ったら、大きな影響力をもつあなたこそ一発アウト状態かと思いますが、ご自身でご自身の首を絞めぬよう、お気をつけられた方が宜しいかと。

あなたがそうやって薬物事犯を追い詰めることで、苦しみ、悲しみ、孤独に追いやられている当事者や家族がいることもどうぞお忘れなく。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト