2019年個人的に「刺さった」と思う本“8傑”

2019年12月30日 21:00

今年は個人会社(ソーシャルラボ)があまり儲からなかった割に、アゴラの業務や参院選対応など諸事に追い立てられ、近年の中では読書の時間が取れなかった。常井健一さんが中村喜四郎氏の独白を引き出した『無敗の男』もまだ積ん読状態になっていて、しかも望月衣塑子記者の問題なども出てしまってついつい時間が取れず…あぁ。

ただ、「政治とメディア」という専門領域のところで気になった話題本を中心にチェックはしており、アゴラで書評を書いたものも、書く時間もなかったものもあるが、ひとまず自分なりに来年以降の活動をしていくための知見を磨く上で「役に立つ」「刺さった」というものを厳選すると以下の通りだ。

なお、必ずしもあくまで個人的なセレクトなので、この時期によくある「ブックイヤーセレクト」とは異なり、刊行年は今年とは限らない。

自民党というと政策面は官僚に丸投げという印象を一般的に持たれがちだが、政策面を専門的に取り扱う辣腕職員が存在する。しかし全政党を見回しても著者の田村重信さんに匹敵する方はそういない。政策立案は官僚でもできるが、それを社会に実装していくために必要な調整力が目を引く。これを読むと野党にそんな力がないこともよくわかるので、野党再建をしたい人ほどよく読むべきだろう。

原英史さんとは臨時国会で思わぬ形で“濃密”なお付き合いをすることになったが、本書は半年以上前の刊行直後に購入していて読んでおり、その時点では面識もなかった。モリカケの影響で規制改革のイメージが悪くなった側面はあるが、日本が戦後に成功した時のシステムが旧態として残り、新陳代謝を阻んでいることが平成30年間の停滞の要因のひとつ。この国がなぜ変われないのか、現場に根ざした経験談、制度論は今後も参考になりそうだ。

3月に発売されて現在もなおアマゾンで200位以内にとどまっているだけある。上述の原さんの本のテーマとも絡むが、結局日本は21世紀のゲームに適したルール整備が遅れ、デジタルシフトが遅れに遅れている。中国やアジアの新興国と行き来する人たちが「日本が後進国になったことを知らないのは日本人だけ」と自虐的に言うが、本書は中国の社会生活におけるデジタルシフトの凄まじさを紹介してくれる。今年読んだ中では、個人的に最も刺激を受けた。

古巣の新聞社のデジタル戦略のことをこれほどつまびらかに書いた本はなく、私も在職中はほかの部署にいたので初めて知る内容も多かった。ただ内情を知る、ある読売OBは本書の内容でいくつか間違いがあると憤慨もしているのだが、それはさておき、ヤフーのようなネット企業でもそのバックエンドは、ビジネスのドロドロした苦闘をしていたことがわかって興味深い。

ゼロから起業するよりも、すでに存在する中小企業を個人的に買収したほうがローンチはスムーズという目から鱗のビジネス指南本。読んだのは世間より周回遅れとなったが、事業承継が社会問題になるご時世とあって、ロングセラーだ。私は自分の会社をゼロから作ったが、事業を買うという選択肢はたしかにある。デューデリをどうするか、買取価格交渉はどうするかなどの実践的な部分にも言及されているが、個人的には来年以降、展開するつもりの新規事業を模索する上で役立った。

今年で自民党と公明党が連立政権を組むようになって20年経つが、公明党の支持母体である創価学会はどういうものか、国政の今後を占うでそもそもの成り立ちを知る必要があった。田原さんがやや好意的に記述している部分はあるものの、創価学会が戦前戦後とベンチャー宗教としてゼロからいかに市場開拓をしてきたのか、若き池田大作氏の「伝説的な営業マン」ぶりで勢力拡大に寄与したくだりは、毀誉褒貶半ばする評価を別にして興味深い。

その公明党の存在もあって進まない憲法改正だが、我が国の憲法論議が戦後まもなくからいかに憲法学会の独自解釈で歪められてきたか、本書で鮮やかなまでに欺瞞を暴く。憲法9条で禁止する「戦争」とは、1928年の不戦条約で禁止された「国際紛争を解決する手段としての戦争」であって、自衛権まで否定してないのは明白なことも学べる。ただ、本書を読むと安倍政権が不可欠とはいえない憲法改正を目標にする余り、切迫しているこの国の構造改革を投げ出すダメさも感じてしまった。

年の瀬に出たばかりの渡瀬さんの新刊。堅苦しい見た目とは裏腹にとても読みやすく1日で読了。「分断」は来年の米大統領選でも焦点の一つになるだろうが、リベラル派の問題意識と視点が異なり興味深い。それは著者が選挙マーケティングの経験を踏まえた実務家の立ち位置があるからだろう。本書については年明けにもまた触れてみたいが、暗号通貨、デジタル通貨が、国際政治、日本政治のパワーゲームを劇的に変える大胆な予測はほかになく、新しい政治を模索する野心のある人は必読だ。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」

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新田 哲史
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