首里城募金の使い道未定!玉城県政、国と対立のツケ

2020年01月01日 06:01

カルロス・ゴーン被告の海外逃亡騒動にやや霞んでしまったが、沖縄県が、全国から寄せられた首里城再建寄付金の使い道をこれからアンケートをして決めることが明らかになり、年末からネットで批判の声が噴出している。アンケートの動きについては琉球新報が12月31日に報じた。

首里城再建寄付金の使い道をアンケートへ 沖縄県が方針、意見踏まえて条例化(琉球新報)

沖縄県サイト、NHKニュースより

国主導の再建方針で思惑にズレ

首里城焼失直後から全国で支援の輪が拡大。沖縄県と那覇市には12億を超える浄財が寄せられているが、使い道についてこれからアンケートするのだという。

もともと、城郭内は国立公園であり、安倍政権が国主導で国費で再建を進めることで方向性を早々と決めたことで県のコミットが宙に浮いた。12月中旬には地元紙に「県主導の再建を求める声は行き場を失いつつある」(沖縄タイムス)と指摘される状態になった。

そうなると、巨額の浄財の使い道もペンディングになる。国費で再建した場合、地元では政治側だけでなく、メディアも含めて、焼失した建物の再建以外のところ(中城城跡や円覚寺などの復元、日本軍第32軍司令部の地下壕跡の整備など)を提言しているようだが、琉球新報の記事で県側が「寄付者は正殿本体に使ってほしいところもあると思う」と自覚的にコメントしているように、多くの寄付者はあくまで焼失した建物の再建をイメージしていたのは間違いはない。

すでにネット上では、玉城県政に批判的な右派の人たちだけでなく、実際に寄付した人たちからも反発の声が出始めている。

国も微妙だが、玉城県政も梯子を外される理由がある

思うに県も国も、よく言えば「スピーディー」、悪く言えば「見切り発車」で突き進んだことでズレが生まれた。那覇市のクラウドファンディングのサイトが立ち上がったのは火災の翌日だ。この時点では火災の事後対応が優先だろうから、国と県で再建に向けてどういう役割分担をするか、あるいはすべてを公費で賄うのか、浄財も活用するのか、決まる前の段階で、ネット時代らしいスピード対応で募金集めが始まった。関心が高いうちに順調にお金は集められたし「巧遅より拙速」、初動はよかった。

11月、首里城復元のための関係閣僚会議で発言する安倍首相(官邸サイト)

しかし国の当初からの肩入れぶりは地元が困惑・邪推するほどだった。実際、沖縄タイムスは火災から4日後に「首里城火災で政府与党、異例のスピード対応」と題した記事を載せ、政権与党側の対応について「選挙で苦戦を強いられている沖縄で、県民の要望に応えることで理解を引き出したい思惑もにじむ」と論評している。

公平にみて私は、沖縄側が安倍政権にこの再建問題で梯子を外され、まんまと政治利用されてしまったのではと思う。ただし、沖縄県側も昨年2月に国から管理を移管され、出火原因もその不手際である疑いが強くなってきた経緯を考えれば、翁長県政時代からの国との対立があったとしても、そもそも国側に信用されなくても仕方がないのではないか。

以前も書いたように、再建後も沖縄県が引き続き管理するのであれば、私自身は玉城県政下での再建には反対するのは指定管理者としての能力に疑問を持っているからだ。

今回の事態は、石原都政が東京都による尖閣買収費用として全国から募金を募った際、民主党の野田政権が先に尖閣を買い取ってしまって、14億円を超える浄財の使い道が宙に浮いた先例と重なるものがある。あの時も、いまの国と沖縄の関係ほど険悪ではなかったものの、地方(石原都政)と国(民主党政権)の相性はお世辞にもよいとは言えなかった。

しかし、尖閣募金のケースと異なるのは、政治的に急ぐ必要はない。安倍政権は年末に100兆円を超える膨張予算を閣議決定する大盤振る舞いをしているが、財政難の折に、国民が浄財を出してくれたわけだから、集まった金額の半分でも、焼失した城郭の再建費用に生かしてはどうか。

国も県も地元紙も「大人の対応」を

沖縄の自民党関係者は、県によるアンケートのことが報じられてから、SNSで玉城知事を吊し上げる構えを見せているが、財政逼迫の折に公費一辺倒ではない令和の時代の再建モデルづくりに向けて、中央と橋渡しをするくらいの「大人の対応」をしたところで決して損はないと思う。むしろ、したたかな政治技術を培う良い機会だ。

一方で玉城知事や県政与党側もなぜ梯子を外されているか、よくよく自省することだ。知事も国政を経験しているのだから、国の財政を見据えた観点から交渉するのは言うに及ばず、そもそもなぜ県の指定管理下で火災が起きたのか原因究明、説明責任がとても十分になされているとは言えない。

思い切って管理能力不足を認めて指定管理を返上するくらいの大胆な決断と、この問題に限っては政治的に「休戦」するのだという真摯な姿勢を一貫させ、二階幹事長あたりの「調整」が得意な実力者に懇願してはどうか。それも大人の対応だ。

もう一つはいたずらに国との対立路線を煽る地元2紙も、この問題で募金の使い道が宙に浮く可能性を騒いでばかりでは困る。新聞が売れなくなってきたとは言え、あなたたちの県民世論形成への影響は依然として小さくない。アンケートの動きもストレートニュースで、県政を無批判に報道するだけでなく、たまには事態を右や左にこじらせるのではなく前に進めてみたらどうか。

対立や利害を乗り越え、しかも公費をなるべく抑えて首里城が再建される日は来るのだろうか。

写真AC

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」

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