FIT法改正の方向性 ~再エネ主力電源小委報告書を読み解く~

2020年01月16日 06:00

経済産業省で12月12日に再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会(以下単に「委員会」)が開催され、中間とりまとめ案が提示された(現在パブリックコメント中)。なお「中間とりまとめ」は役所言葉では報告書とほぼ同義と考えていい。

同委員会では長らくポストFITの制度のあり方について議論されてきたわけだが、今回は特にメガソーラー事業者に対する影響が大きい競争電源に関する議論を中心に、報告書に記載された制度改正の方向性をまとめることとしたい。

Q1:FIT制度抜本見直しにあたっての考え方は?

まずは全体論として、ポストFIT制度の構築にあたっての基本的な考え方についての中間とりまとめの記載を確認したい。

「FIT 制度の抜本見直しにあたっては~電力市場でコスト競争に打ち勝って自立的に導入が進むことが見込まれる電源(競争電源)と、地域で需給一体的に活用されることにより、災害時のレジリエンス強化やエネルギーの地産地消に資する電源(地域活用電源)とに分け、それぞれ~支援制度の詳細設計を進めていく必要がある。」

これまでも繰り返しまとめたが、今後再エネ電源は、大型の太陽光―風力発電などが「競争電源」として、その他の小水力や小規模地熱やバイオマス発電および自家消費型の低圧の太陽光発電などが「地域活用電源」として扱われ、異なる支援を受けることになっていく。

競争電源に関しては他の電源と同様に電力市場への統合が求められ。多方地域活用電源には災害時のレジリエンス強化や地産地消といった文脈で地域への貢献が求めらえるようになっていく。

Q2:競争電源と地域活用電源は今後それぞれどのように支援されるのか?

では続いて競争電源と地域活用電源がそれぞれ具体的にどのように支援されていくのか、という点についてのそれぞれ中間とりまとめの記載を確認する。

<競争電源について>

「技術革新等を通じて発電コストが着実に低減している電源、又は発電コストが低廉な電源として活用し得る電源については~電力市場への統合を図っていくべきである。その際、現行 FIT 制度で確保されている投資インセンティブについては、再エネの更なる導入拡大のため、引き続き確保する必要がある。一方、現行 FIT 制度における市場取引の免除については、~見直しが必要である。以上を踏まえると、電力市場への統合を図る新制度の在り方として、欧州等で導入が進んでいる FIP (Feed in Premium)制度を念頭に検討していくことが適当」(P4)

このように、競争電源についてはFIT制度から引き続いて再エネへの投資インセンティブは付与するものの、現状免除されている市場取引については、今後事業者に求められることとなり、欧州のFIPを念頭においた制度設計が為されていく方針が示された。

<地域活用電源について>

「需要地に近接して柔軟に設置できる電源(例:住宅用太陽光発電、小規模事業用太陽光発電)や地域に賦存するエネルギー資源を活用できる電源(例:小規模地熱発電、小水力発電、バイオマス発電)は、地域活用電源として、災害時のレジリエンス強化やエネルギーの地産地消に資することが期待されるものである。したがって、自家消費や地域と一体となった事業を優先的に評価するため、一定の要件(地域活用要件)を設定した上で、当面は現行の FIT 制度の基本的な枠組みを維持していくことが適切」(P7~8)

続いて地域活用電源についてだが、こちらはいくつかの特性と具体的にそれに当てはまる電源を例示している。

その上で、こうした電源については自家消費や地域との一体性を図る一定の要件(地域活用要件)を設定し、それに当てはまるものに関しては現行のFIT制度の基本的な枠組みが維持されるものとされた。

なお小規模風力発電の扱いは保留状態にある。

Q3: FIP制度はどのようなものになるのか?

続いて、これが最重要論点かと思うが、競争電源に適用されるFIP制度がどのようなものになるのか、中間とりまとめの記載をかなり長くなるが確認したい。

<FIP制度の基本的な仕組みについて>

「FIP制度は、発電した電気を卸電力取引市場や相対取引で自由に売電させ、そこで得られる市場売電収入に、『あらかじめ定める売電収入の基準となる価格(基準価格(以下「FIP 価格」という。))と市場価格に基づく価格(参照価格)の差額(=プレミアム)×売電量』の金額を上乗せして交付することで、発電事業者が市場での売電収入に加えてプレミアムによる収入を得ることにより投資インセンティブ を確保する仕組みである」(P5)

<FIP価格について>

「FIP価格は、~調達価格等算定委員会の意見を尊重して、電源区分・規模等~毎の FIP 価格を決定するか、入札制を活用して FIP価格を決定するかのいずれかの方法によって定めることが、適当である。特に入札制については積極的に活用してコスト低減を促すべきであり、現行 FIT 制度における入札制を参考に、価格の決定方式、上限価格、 募集容量、入札回数等について定めていく必要がある 」(P5)

<参照価格について>

「~参照価格の期間や算定方法の決定に当たっては~日中・季節変動の中で価格に応じた発電・売電行動(価格が安い季節に定期メンテナンスをする、蓄電池を活用する等)に誘導できるような設定を行う必要がある。 その際、仮に、参照する市場価格の期間を長くして、かつ、プレミアムを長期的に固定した場合、直前の参照期間の平均市場価格を参照すると、当該期間の平均市場価格が大きく増加(または減少)した場合に市場価格がもともと高い期間に高いプレミアムを付与すること(またはその逆)になる。また、当該期間の平均市場価格を参照することとすると、プレミアムの額の決定が事後的になる。こうした点も考慮しながら、参照する市場価格の時期を決定する必要がある。 なお、FIP制度は再エネの導入支援策であることから、FIP価格が参照価格を下回る場合であっても、 ネガティブ・プレミアムを再エネ発電事業者に支払わせることは避けるべきである。」(P5~6)

以上まとめると、

・FIPは「売電収入の基準となる価格(FIP価格)」から「市場価格に基づく価格(参照価格)」を差し引いた「プレミアム」を発電事業者に交付することで投資インセンティブを確保する仕組みである

・FIP価格は調達価格等算定委員会での議論をベースに決めるか、入札制によって決める。なるべく入札制を活用する。

・参照価格の決定は様々な論点を考慮しながら、価格が安い季節に定期メンテナンスをする、蓄電池を活用する等といった発電・売電行動を誘導するように設定する。

・「参照価格>FIP価格」という状況になってもネガティブ・プレミアムは発電事業者に払わせることはしない。

といったところである。

Q4:再エネ発電事業者はどのように市場取引に参画していくことが想定されているのか?

最後にFIPの対象となる再エネ発電事業の市場取引への関与の仕方についての記載を確認する。再エネ発電事業者は、市場取引をするにあたっては「kWh価値」「環境価値」「インバランス」と向き合うことが求められるわけだが、それぞれに関する中間とりまとめの記載は以下のとおりである。

<kWh価値について>

「~想定される kWh 価値の主な取引方法としては、自ら卸電力取引市場における取引を行う方法、小売電気事業者との相対取引を行う方法、アグリゲーターを介して卸電力取引市場における取引を行う方法が想定され、こうした取引を通じて再エネ発電ビジネスの高度化や電力市場の活性化が期待される。~アグリゲーターを電気事業法上に位置付ける規定を設け、分散リソース活用のための計量制度も合理化する方向性で検討されている。」(P6~7)

<環境価値について>

「~現行 FIT 制度における環境価値は、認定事業者ではなく賦課金を負担する全需要家に帰属する。~FIP 制度は自立化へのステップとして、再エネの市場統合を目指すものであることを踏まえると、FIP 制度においても、再エネ発電事業者が自ら環境価値を相対取引又はオークションによって販売していく仕組みとすべきである。なお、FIT 制度の下で販売された電気は、費用負担調整機関が FIT非化石証書を販売しその収入を国民負担の抑制に充てていることとの整合性の観点から、詳細設計に際しては、非化石価値相当額が再エネ発電事業者自らの収入となることを踏まえた上でプレミアムの額を設定する等の留意が必要である。」(P7)

<インバランスについて>

「電力システム全体の調整コスト削減効果を最大限引き出すため、FIT 制度で設けられてきたインバランス特例を改め、再エネ発電事業者もインバランスの発生を抑制するインセンティブを持たせるべきである。~また~現行 FIT 制度では買取義務者にインバランスリスク料が交付されていることも参考に、再エネ発電事業者のインバランス負担軽減のための経過措置等も検討すべきである。ただし、軽減の程度を徐々に減らすなど、インバランス抑制のインセンティブとも両立させる工夫が必要である」(P7)

以上まとめると、

・kWh 価値の主な取引方法としては、

  1. 自ら卸電力取引市場における取引を行う方法、
  2. 小売電気事業者との相対取引を行う方法、
  3. アグリゲーターを介して卸電力取引市場における取引を行う方法

が想定されている。

・アグリゲーターに関しては、電気事業法上に位置付ける規定を設け、分散リソース活用のための計量制度も合理化する方向性で検討されている(現状では計量法上の確認を受けた計量器を用いなければ電力に関わる取引はできないとされている)。

・現行のFIT 制度では環境価値は、再エネ発電事業者に帰属していない。しかしFIP 制度では、再エネ発電事業者が自ら環境価値を販売していく仕組みを作るべきである。その際には非化石価値相当額が再エネ発電事業者自らの収入となることを踏まえた上でプレミアムの額を設定する(=割り引く?)等の留意が必要である。

・FIT 制度では免除されてきたが、FIPでは再エネ発電事業者もインバランスの発生を抑制するインセンティブを持たせるべきである。その際現行 FIT 制度で買取義務者にインバランスリスク料が交付されていることも踏まえて、再エネ発電事業者のインバランス負担軽減のための経過措置等も検討すべきである。

といったところである。以上長くなってきたが、競争電源に関わる論点を中心に中間とりまとめに記載されたポストFIT制度の在り方を見てきた。

これを逆風と捉えるか、チャンスととられるかは各事業者の立場にもよると思うが、いずれにしろ再エネ事業の在り方が多様化していくことは間違いない。

今後は各事業者ともいわゆる「じり貧」となる状況を避けるために受け身ではなく、より積極的なスタンスで事業戦略を考えていかなければならなくなるだろう。

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宇佐美 典也
作家、エネルギーコンサルタント、アゴラ研究所フェロー

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