米中貿易戦争をキヤノン復活の奇貨とせよ

2020年02月02日 06:01

1月30日付の日本経済新聞電子版記事「キヤノン、「第二の創業」途上 デジカメ縮小、前期純利益51%減 医療・監視カメラに活路」には、2007年12月期と2019年12月期の全社消去除く事業別営業利益を比較した図表が掲載されている。

キヤノン本社=東京都大田区(Wikipedia)

日本経済新聞は、日本経団連会長経験者である御手洗冨士夫代表取締役会長CEOに忖度して、「無策だったわけではない」「市場が変化するスピードは想定以上」と書いている。しかし、御手洗冨士夫氏には、VUCAの時代の経営者に必要な資質が決定的に欠如していることは明白だ。

この記事は、「デジカメ後を担う『4本の矢』が完全に根付くには少し時間がかかりそうだ」などと、呑気なことを書いているが、キヤノンは存亡の危機に直面していると私は考えている。

昨年10月13日の記事で、私は、ドローンに関する見解を述べた。この記事の執筆時点では、「今更キヤノンがドローン市場に参入しても勝ち目はない」と考えていたが、その後、状況は大きく変わったので、見解を変えた。解説したい。

昨年12月9日の日本経済新聞電子版記事「海保、中国製ドローン『排除』へ 情報保全に懸念」は、海上保安庁が使用している数十機のドローンを他の機種に切り替え、ファーウェイ製品に続いて、政府調達から中国製品を排除することを報じている。

世界には、非常に多くの「チャイナ・ウォッチャー」がいる。その理由は、中国の経済規模や人口が大きいからではない。中国政府の意思決定プロセスは、民主主義国とは違い、秘密のベールに包まれているからだ。

そして、中国の企業は、本当の「民間企業」ではなく、政府と「特別な関係」があることは、東日本大震災の時に話題になった三一重工あたりを調査すれば、すぐにわかる。中国の企業は、民間企業の形をとっているが、実際には政府と一体なのである。

2016年9月、キヤノンマーケティングジャパンは、産業用ドローンメーカー・プロドローン(本社・名古屋市)の第三者割当増資に応じて1億円の出資をすることを発表している。プロドローンの製品は、現在、高価な産業用ドローンばかりだ。ドローン最大手の中国DJIは、低価格のエントリーモデルから高価なモデルまで、フルラインナップを揃えている。プロドローンは、コンシューマー向けのモデルに敢えて参入しない方針をとっているが、現在のプロドローンの企業規模を考えれば、この判断は正しい。

プロドローン「PD6B-Type II」(公式サイトより)

今後、米国政府の圧力によるものか、日本政府主導になるのかはわからないが、コンシューマー向けのドローンやスマホから中国製品を排除する動きが出てきても不思議ではない。政府による規制がなくても、ユーザーが自主的に「チャイナ・フリー」を選択する可能性もある

中国企業DJIのドローン「Mavic 2 Pro」(公式サイトより)

キヤノンは、カメラ市場において、低価格モデルからプロユースの旗艦機まで、フルラインナップを揃えている。ドローンの製造に必要な経営資源の多くは既に社内に存在している。高価な産業用ドローンはプロドローンに任せても良いが、数量の期待できるエントリーモデルから100万円程度の中上位機種までは、自社で製造しても商売になりそうだ。

キヤノンを存続させるためには、VUCAの時代にふさわしい経営者が必要であり、御手洗冨士夫氏の退陣は不可欠だ。私は、投資家向け勉強会講師の仕事も行っている。紙幅の都合上、アゴラで書けることには限界がある。投資家向け勉強会講師の依頼に関しては、こちらのフォームからお気軽に問い合わせいただきたい。

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長井 利尚
経営コンサルタント・写真家

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