マイクロソフト・グーグル・IBM訪問②

2020年02月02日 06:00

前回に続き、米国西海岸視察の模様を紹介したい。 

Wikipedia

まずは、グーグルだ。サンノゼの北側に所在するグーグルクラウドを訪問した。私がAIホスピタルプロジェクトの概要を説明した後、グーグル側の活動、特にデジタル病理学の説明を受けた。これまでに文献で得ていた知識以上のものはあまりなかった(もちろん、秘密で出せない部分があるかもしれないが)。

しかし、現地を訪問することで身が引き締まる思いがした。どんなデータを入力して、AIに解析させるのか、そこが鍵だと感じた。確かに、人工知能は入力するデータが多ければ多い方が、精度が上がるのだが、やはり、入力するデータの質が良くなければ、この原理は働かない。腐りかけの食物を食べすぎれば下痢するのと同じだ。やはり、栄養価の高い質の高い食事が効率的なのと同じだ。人工知能は遅れていても、日本には質の高いデータを集める点で優位ではないかと考えている。

そして、Play & Plugというベンチャーがひしめき合う施設を訪問して、AI開発ベンチャー2社のプレゼンを聞いた。Play & Plug はベンチャーファンドとベンチャー支援の両方を担っており、さらに、この企業を通してベンチャーが大手企業とお見合いをしているような感じだ。現地で働いていた日本人女性の溌溂とした姿がまぶしく映った。2社のプレゼンの前に私が20分の概要説明を行った。

2社の活動は全く異なっており、一方はアバターを合成してカスタマーに対応できるような人工知能を作成する企業で、私がAIをインフォームドコンセントの補助に利用するために、画面上にいろいろな人物像を表示し、好みのタイプを選んで説明してもらう仕組みを作り上げようとしたコンセプトと同じようなものだ。

また、今は簡単に特定の個人の音声を人工的に作り上げることが可能だ。詐欺などに使われれば大ごとだ。人工的な音声を見極める機能などの付加価値のついた電話が必要かもしれない。おそらく、さまざまな受付業務などが人工知能に置き換えられる日も遠くないだろう。

もう1社は、視線を追いかけることで、認知症の早期診断を補助することを目指したAIベンチャーだ。確かに客観的に評価できる強みがあるし、重症度も図れるような気がした。自閉症や行動障害児などの動きの追跡や脳の働きの解明にも利用できるだろう。

そして、最終訪問地はIBMの研究所だった。ここでも、冒頭にプロジェクトの紹介をした。各20分ずつだが13回はかなり厳しいものがあった。私のアバターを作って、代理で発表してもらえればと思った。

サンノゼにあるIBM研究所(公式サイトより)

IBMのワトソンAIは、アメリカのクイズ番組で博識人間を打ち破ったことで、一躍有名になったが、ウキペディアの情報を記憶させて速やかに検索しただけだと口の悪い人が言っていた。しかし、歴史のある企業で、私もIBMのノートパソコンを使っていたことがあるので、なつかしい想いもした。

糖尿病の合併症発症時期予測システムの紹介があったが、血糖のコントロ―ル状況を考慮しなくていいのかどうか疑問だった。また、神経症や網膜症は糖尿病罹病期間に比例して発症率が上がるのだが、どのように時期を予測しているのか科学的な背景もわからないままだった。人の考えが及ばない解析を人工知能が計算していたのだろうし、ブラックボックスが人工知能の特徴だと言えばそれまでだが、腑に落ちないものが残った。

と弾丸ツアーを終えた。多くの知識を得ることができたし、普段、1か月12時間の会議でしか、顔を合わさない多くのメンバーと話をする機会が持てて楽しかった。30日のSIP評価委員会で「このプロジェクトはOne Teamで頑張っている」と言っていただいた委員もいたが、あと3年力を合わせて日本の医療に、そして、患者さんに貢献したい。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年2月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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