ガンダム論:『勧善懲悪』が死語化した令和の時代のアニメとは!?

2020年02月11日 06:00

↑口でiPadを操作する筆者

*この記事は難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者かつサッカーJリーグ・FC岐阜元社長で、京都大学大学院航空宇宙工学を修めた『宇宙に魅せられた男』恩田聖敬が、アニメ(ガンダム)について口によるiPad操作により丸2日かけて全力で語った記事です。

昨年のNHK朝ドラ『なつぞら』はアニメーション黎明期に、主人公がアニメーターを目指すというものでした。当時のアニメはいわゆる子供向けのものだったと言われていました。

しかし私が生まれた40年前を思うと大人向けも子供向けも結局のところ同じだった気がします。

『勧善懲悪』

今や死語になりつつある言葉ですが、私の子供の頃の作品にはほぼこの思想が入っていました。すなわち善と悪が明確に決まっており、善が悪を懲らしめるというものです。アニメで言えばタイムボカンシリーズがいい例ですが、大人向けの時代劇も水戸黄門、暴れん方将軍など勧善懲悪の際たるものです。バラエティにおいてもたけちゃんマン、仮面ノリダーといったように勧善懲悪を描いています。

結論、私が生まれた頃は大人も子供もとにかく『わかりやすい構図』を好む時代だったと言えると思います。その時代に一石を投じたのが、富野監督による『機動戦士ガンダム』です。

今でこそガンダムと言えば、誰でも名前は聞いたことがある存在となっていますが、実は最初の放送時は途中打ち切りとなっています。時代がガンダムの世界に追いついて無かったのです。しかしその後徐々に評価されて、8年後に続編が放送されます。

写真AC:編集部

ガンダムの世界はとにかくわかりにくいです。勧善懲悪とはかけ離れた世界です。けれども現実世界に勧善懲悪などあり得ません。この世はややこしく理不尽で、何が正義なのか誰にもわからない世界です。今この瞬間も互いの正義を振りかざし、世界の何処かで争いが起こっています。ガンダムはそんなこの世をそのまま描いています。だからわかりにくくて当然なのです。それ故にわかった時の感動・共感が絶大になるのです。

なつぞらの中ではアニメを『ありえないことを本当のように描く』可能性があるものと捉えていました。私はこの考えの延長線上にあるのがいわゆるジブリ作品だと思います。どれもこれも名作揃いです。しかしガンダムはこの考えとも少し違う気がします。

そもそもガンダムが描く世界は今の現実世界の未来です。設定は次の通りです。未来には世界は地球連邦という一つの統一国家になっており、人口増加によりこれ以上地球に住めない人類は宇宙への移住を開始します。これを機に暦を西暦から宇宙世紀に変更します。宇宙への移住はスペースコロニー(1960年代にソ連の物理学者オニール博士が提唱)をラグランジュポイント(惑星の引力が釣り合いその場にとどまることができる位置)に浮かべることで可能にしました。その後時は過ぎますが、地球連邦国の政治家のお偉方は宇宙に行くことなく地球から宇宙の統治を続けます。

宇宙世紀0079、その腐敗政治に業を煮やしたサイド3(住所のようなもの)のジオン・ズム・ダイクンはジオン公国建国を宣言し、地球連邦軍に独立戦争を挑みます。いわゆる『一年戦争』の開戦です。開戦当初圧倒的な力を発揮したのが、ジオン軍のモビルスーツ(人が操縦するロボット)のザクです。しかしながら、そもそも現代の兵器にロボットなどありません。というか必要ありません。ミサイルや空爆の方が遥かに有効的だからです。しかしガンダムの世界ではミサイルや空爆を無効にする物質が発見されています。『ミノフスキー粒子』です。

この粒子が散布された空間ではレーダー等が不安定となり、ミサイルの照準が定まらず飛行機の位置情報も正確にわかりません。ミノフスキー粒子の発見によって、兵器は遠距離戦から近距離戦を得意とするものに変化を遂げます。その変化の過程でジオン軍がいち早く開発に成功したのがザクです。その破壊力は凄まじく、連邦軍も対抗出来るモビルスーツ開発に着手します。その結果誕生したのがガンダムなのです。

このようにガンダムの世界にはロボットが登場する必然性がしっかりとあるのです。他の背景も含め、ここまでリアリティな設定にこだわったアニメを私は他に知りません。そして腐敗政治を繰り返し、独立戦争を挑まれた側のモビルスーツが主人公ガンダムなのです。そこには勧善懲悪のカケラもありません。

その後ガンダムシリーズはΖガンダム→ダブルΖガンダム→νガンダム(映画、逆襲のシャア)とストーリーを続けていくのですが、このストーリーの軸にあるのが初代ガンダムのパイロットであるアムロ・レイとジオンの息子で『赤い彗星』の異名を持つシャア・アズナブル(本名キャスバル・レム・ダイクン)との関係です。

連邦政治の腐敗と矛盾に振り回され続けるアムロ、父ジオンを鎌倉幕府の如く側近ザビ家に暗殺され政権を乗っ取られて偽名で生きるシャア、この時点で既に難し過ぎます。しかしそれは、まさにこの世で起こりうることです。

そしてもう1人重要人物を紹介します。歴代ガンダムを搭載した母艦、ホワイトベース、アーガマ、ネイルアーガマ、ラーカイラムの艦長を務めたブライト・ノアです。その経歴の通り連邦軍を代表する艦長です。

令和の時代、アニメに関わらず多種多様な表現が当たり前になりました。その時代に40年前から勧善懲悪でない世界を描き続けたガンダムが帰ってきます。ガンダム新作はブライトの息子ハサウェイ・ノアが、連邦軍に反旗を翻すというものです。小説版の待望のアニメ化、私の中では上記したガンダム4シリーズに加えて、0080ポケットの中の戦争、0083ジオンの残光、を合わせて、初代ガンダムの流れを組む世界の完結編です。ハサウェイは何故反旗を翻したのか?父ブライトの取る行動は?地球連邦政府と宇宙移民人類との関係は変わるのか?

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』この夏公開です‼️
絶対観に行きます(^ ^)

*この記事は私の独断と偏見と記憶に基づいて書いています。また私のガンダムの世界はF91で止まっていることを予めご了承ください。

●ガンダムの世界を象徴する一言
0083よりジオン軍アナベル・ガトー
『腐った連邦に属さなければ、キサマもこんなに苦しむことも無かったろうに…』

京都大学大学院航空宇宙工学修了
ALS患者
恩田聖敬


この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ元社長)のブログ「ALSと共に生きる恩田聖敬のブログ」2020年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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恩田 聖敬
株式会社まんまる笑店代表取締役社長

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