事故を起こした業者に格別に優しい行政という問題点!

尾藤 克之

中野区では12月初旬から最近まで区のHPが閲覧できなくなり区民生活に混乱を来たしました。1月31日(金)に、中野区議会で関連する「総務委員会」が開催されたので中野区民として傍聴してきました。

注目したのは次の審査でした。「令和元年12月4日に発生したシステム障害について」(危機管理課、情報システム課)です。どのような、討議がおこなっていたか一部推測等も交えながら構成します。

事故後の対応が優しすぎる行政の問題点

「令和元年12月4日に発生したシステム障害について」(危機管理課、情報システム課)は、昨年の12月4日、NTTデータ傘下の日本電子計算が提供する自治体向けIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)「Jip-Base」で障害が発生した事故の報告です。

全国53の自治体と団体のシステムに影響が出ていて、すでに、2ヶ月以上が経過していますが全面復旧の見通しは立っていません。今回の障害をなるべく平易に説明します。

1.ストレージ(データを保存している装置)の制御プログラムの不具合により、保存されたデータが利用できなくなる障害が発生。
2.障害の影響を受けるデータを利用している自治体のサービスが停止。
3.障害の原因を特定、復旧作業をしたものの、一部のデータが消失したほか、その中には(障害時のデータ復旧に用いる)バックアップデータが保存されていないことが判明する。復旧が困難となったことが推測できる。

通常、システムは一部が故障しても運用を継続可能な構成にするので考えにくい事故です。第一の原因は、ストレージのファームウェア(電子機器に組み込まれたハードウェアを制御するためのソフトウェア)の不具合ですが、そもそもファームウェアに不具合があるという情報はストレージメーカー(米デルテクノロジーズ)からも公表されていました。「50自治体システム障害続報、不具合は米デルのストレージで発生/日経xTECH」。

それを知りながら、ストレージのファームウェアのアップデートをしなかったストレージの維持業者の不手際も一因としてあります。また、データが復旧できなくても、自治体側がバックアップデータを持っていて、復旧できた事例もあるようなので、自治体独自でバックアップを取っていなかったのも遠因となる可能性があります。

たとえば、全国規模の会社であれば、東京本社のシステムが何らかの事故でダウンしても、関西支社のシステムをメインに切り替えて、最低限の事業を継続する、といった計画を立てていることがあります。

区単位の自治体ではこのような対策は難しいかもしれませんが、とりあえずメインのシステムが使用不可能になった場合、最低限どの業務を継続できるようにするか、事業継続計画(BCP)がどうなっていたのかも気になるところです。平成30年(2018年)5月(改定)の、中野区の「事業継続計画(BCP)」を確認します。

これによれば、データ消失は防止していることになっており、バックアップも毎日とっていることになっています(P.44)。ならば、今回、データが消失してしまったのがとても不思議です。「事業継続計画(BCP)」も実情は違っていたのでしょうか。結局は自治体も、委託業者も、きちんとやるべきことができていなかったように思えてしまうのです。

時間が経過するほどデータは劣化します。すでに、事故後2ヶ月が経過しています。データ復旧を断念したようにも見受けますが実際はどうなのでしょうか。復旧できないデータも存在するはずですから、何のデータが失われたのかも明確にすべきではないでしょうか。

区は業者に対してどのような措置をとるのか

中野区では12月4日から、HP全体がダウンしたほか、1ヶ月以上にわたりHPが閲覧できない事態が生じました。区の発表では介護保険の手続きに問題が生じたとの報告がありました。しかし、不可解なのは区の対応です。再発防止策、指名停止などはもとより、損害賠償請求をするという話でしたが何一つ具体化していないからです。

同じ被害を受けた練馬区は事業者変更に移行していると報告がありました。しかし、新システム構築には時間と費用がかかるとのことから、決断を先送りしているようにも見えます。答弁も曖昧で歯切れが悪いのです。明瞭に伝えられない理由があるのでしょうか?

さらに、業者に対しては「減額の検討をしている」とのことです。これだけの事故を起こした業者に対して「減額の検討をしている」だけです。さらに、指名停止が短期間であれば次の入札にも間に合います。このような不具合がなぜ生じたのか約1年をかけて検証するようです。なにをされても怒らない中野区は業者にはとても優しいのですね。

残念なのは、委員(区議)が追求するのであれば、「復旧できた自治体と消失した自治体が生じている理由」について確認しなかった点です。そこに事故の原因を明らかにするヒントが隠されているように思います。また、「区の運用に一切のミスはないのか」という点についても確認をしませんでした。

今回はもらい事故の様相が大きいですが、事故の過失に「100対0」はそうあるものではありません。「事業継続計画(BCP)」が機能したかなど、確認すべき点はあるように思います。ちなみに、皆さまが住んでいる地域はどんな感じでしょうか。

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尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
16作品目となる『頭がいい人の読書術』(すばる舎)を出版しました。
※2/14現在、amazon・読書術、図書館情報学の2部門でベストセラー1位。