防衛省にも防衛産業にも当事者意識&能力はない

2020年02月16日 06:00

防衛産業、官民で販路開拓 防衛省が経団連と意見交換会(に)(日本経済新聞)

防衛省は経団連と連携し、防衛産業の競争力強化を進める。昨秋に河野太郎防衛相が参加する意見交換会を立ち上げた。今夏に示す2021年度予算の概算要求に生産基盤の強化策などの反映をめざす。国内に防衛産業は1000社以上あるが採算性の低さが問題になっている。海外への販路開拓や防衛機密の保護も課題となる。

率直に申し上げて無駄な悪あがきです。
防衛省にも経団連にも当事者意識&能力が欠如しています。

防衛省には防衛産業がわかる人間がいません。経団連の企業の防衛比率は小さく、経営者が注意を払うレベルではありません。しかも現場は親方日の丸の国営企業体質です。

官民で輸出頑張るぞ、ごっこなんぞ止めたほうがいい。C-2やUS-2の民間転用なんぞできっこないのにできると言い張ってきました。そもそもコストが高すぎるし、耐空・型式証明を後からとるならば数百億円はかかります。何機売ったらもとが取れるか、子供でも分かる話を、官民ともわかっていないか、わかっていないふりして「ヤルヤル詐欺」をやってきました。

第71航空隊のUS-2(Wikipedia)

そして経団連企業はベンチャーや中小企業の参入も妨害してきました。既存の防衛産業は出来もしないのにできるといって仕事をとってきます。日立のUAVやUGVがいい例でしょう。他国の後追いにも関わらず、開発は遅く、クズのような性能で使い物にならない出来損ないを他国の製品の何倍もの値段で納めています。

本来ならば90年代ぐらいからでも業界で自主的に防衛産業の再編や撤退をすすめるべきでした。なんとか再編が進んでいるは艦艇建造ぐらいでしょう。航空機、特にヘリはひどい。3社もあってほぼ全部が防衛省丸抱えです。開発能力はほぼ皆無です。これらは一社に統合すべきですが、それができずに高コスト、低性能な製品を作り続けて税金を浪費しています。

コマツがいい例です。稀代の経営者と謳われた坂根本会長ですら、防衛部門には手を付けずに先送りして退任しました。結果、散々税金食い散らかしたら挙げ句に装甲車からは事実上の撤退です。砲弾のビジネスも同じ道を辿るでしょう。せめて後10年前に走行車両は三菱重工と、砲弾はダイキンあたりと統合していれば状況は大きく違ったでしょう。
経団連の経営者は自社の防衛部門が税金に寄食し、国家の安全保障を脅かしているという危機感がありません。

海外の見本市にしても川重にしろ、NECにしろ、ほとんど売れた実績がありません。展示なんぞ高校の文化祭の展示レベルです。そもそも本気で輸出市場で勝負する気なんてサラサラありません。

業界再編を自ら行い、リスクをとって海外市場に打って出て、防衛部門を自立した商売に成長させる気がない大企業には退場してもらうのが一番いいでしょう。

少ない開発費用、少ない開発機会、厳しい市場経済にさらされていないので品質と性能を保てず、コストは高い既存の国内防衛産業は税金を食いつぶしながら緩慢な死を迎えるでしょう。

根本的に改善するなら、防衛省も企業もお雇い外人、商社関係者をいれるなりして意識と組織の改革をしないと無理でしょう。

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
財政制度分科会、防衛省調達の問題点指摘

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自の駐屯地のほとんどは医官がいないので、健康診断では看護師が勝手に医官のハンコをついて、医官があたかも仕事をしているように
みせかけている、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年2月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

過去の記事

ページの先頭に戻る↑