キヤノン、ミラーレス一眼新機種開発発表:死の淵から生還できるのか?

長井 利尚

2020年2月13日、キヤノンは、フルサイズミラーレス一眼としては3機種目となる、「EOS R5」を開発中であることを発表した。発売時期の見通し、価格、詳細なスペックは明らかにされていない。

キヤノン「EOS R5」(公式サイトより)

これまで私がアゴラに寄稿してきた通り、近年、ソニーが、超高性能なフルサイズミラーレス一眼ボディやレンズなど、魅力的な製品を多数発売している。一眼カメラ市場で、ソニー一強体勢は、ほぼ固まりつつある。

昨年は、ソニーから「α7R IV」と「α9 II」が発売されたので、敢えてキヤノンの一眼カメラを選ぶ合理性はほぼゼロになった。キヤノン製品を長年使用してきたプロやハイアマチュアなどの多くが、既にソニー製品に乗り換えを進めている。「思い切ってキヤノンを捨て、ソニーに乗り換えて良かった」という声をよく耳にする。

ソニー「α9 II」(公式サイトより)

今回、開発発表された「EOS R5」は、スポーツや報道などの「戦場」で多用されてきた一眼レフの旗艦機「EOS-1D系」のミラーレス版ではないものの、死線をさまようキヤノンが背水の陣で開発している意気込みは伝わってくる。詳しく解説したい。

まずは、連写性能が凄い。電子シャッター使用時で20fps、メカシャッター使用時で12fpsの実現を目指すという。電子シャッター使用時の連写速度でソニー「α9 II」に並び、メカシャッター使用時には10fpsの「α9 II」を上回る。メカシャッターを使用する際には、物理的にシャッター幕を高速で動かす必要があるため、かなりパワーのあるモーターを採用することになる。

今回の発表では、CMOSセンサーのスペックには一切言及されておらず、ソニーが「α9」で採用した「アンチディストーションシャッター」(動体歪みの発生を抑えた電子シャッター)のようなものが採用されるのかどうかは、今のところ、全くわからない。動体歪みが発生しない、メカシャッター使用時で12fpsの連写性能は、他社より早くキヤノンが実現すれば、フルサイズミラーレス一眼では世界最速となる見込みだ。

8K動画の撮影が、このサイズのカメラでできることも凄い。現在発売されているデジタルカメラは、ほぼ4K動画対応になってきているが、8Kは4Kの4倍の解像度なので別格だ。高精細な静止画の切り出しや4K動画への加工も可能になる。8K動画の撮影ができるということは、CMOSセンサーの画素数は、最低でも33MP以上あることになる。

キヤノンは、レンズ内手ブレ補正機能の開発は早かったが、ボディ内手ブレ補正機能の開発は他社よりかなり遅れていた。ようやく、「EOS R5」には、キヤノンで初めてボディ内手ブレ補正機能が搭載される。

RF28-70mm F2 L USM」のように、レンズ内手ブレ補正機能が搭載されていないレンズを使用する際にも、イメージセンサーを動かすことで、手ブレの発生を抑えることができるようになる。また、レンズ内手ブレ補正機能が入っているレンズを使用する際には、協調制御することで、シャッタースピードがかなり遅くても手ブレを防ぐことができるようになるという。

キヤノン「RF28-70mm F2 L USM」(公式サイトより)

また、データ記録媒体のデュアルスロット化がなされるので、失敗の許されない撮影にも安心だと思う。

このように、「EOS-1D系」ほどの防塵防滴性能・耐衝撃性能は期待できないものの、昨年発売されたソニーのフルサイズミラーレス一眼旗艦機「α9 II」のスペックを上回る部分がいくつか確認できる「EOS R5」は、ソニーに乗り換えたカメラマンたちをキヤノンに戻すことができるのか、引き続き、開発の進捗を見守ってゆきたい。