新型コロナ:日本のレピュテーション・コスト(世界からの評判を落とす危険)を考えよ

2020年02月21日 06:02

新型コロナウィルスは、リンクの追いきれない感染が国内で確認され新たなフェーズを迎えた。たとえ感染しても死亡者を出さないように治療体制を整える国内体制の強化が一層重要になる。但し、水際対策は失敗したのでもはや水際対策は意味はないという意見があるが、それは違うと思う。

専門家によれば、ウィルスは「かかるべき人」がかかるまで感染が続くそうだ。かかるべき人が全部感染してしまうとウィルスは増殖すべき場所がなくなり段々弱体化していく。この「かかるべき人」の範囲を狭める上で水際対策は引き続き意味をもつ。

同じく、不要不急の移動や集会を自粛することによる接触の機会を減らすことや危険な状況の隔離も意味を持つ。が、私は、医療の専門家ではないので、医学的見地からの新型コロナウィルス対策は専門家に譲る。 

クルーズ船乗客2人の死亡を伝えるNHKワールド Japan News:編集部

1. 私が訴えたいのは、レピュテーション・コスト(評判が地に落ちることによるコスト)である

今、日本の新型コロナ対策に対する世界からの評価は極めて厳しい状況にあると自覚する必要がある。

私は、関係者は実に献身的努力をしているし、日本の医療水準は高いので、他国に比べて日本の状態がそこまで危険かといえば必ずしもそうではないと思う。(たとえば、カンボジアで感染者1名というのはとても信じられない。多分検査をしていないだけなのではないか。)

しかし、実際はどうあれ、「日本政府の対応は後手で緩く、きちんと事態の統制ができていない」と世界に認識されている。日本の「評判」(reputation)が落ちているのだ。その結果、日本自体が中国同様、世界からの拒否対象国となりつつある。 

中国全土を入国拒否対象にしていないこともあるが、何と言っても一番の原因は、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の感染拡大だ。国内感染はまだ73人、死亡者1名に抑えられている(他2名の死亡者は正確にはクルーズ船感染者である)のに、600人を超える感染者がクルーズ船で発生したことにより、日本の印象は格段に悪くなっている。今や、欧州では日本人は中国人同様警戒対象だ。日本開催の会議やイベントは海外からキャンセル。観光客も激減している。日本を入国拒否対象にする国もある。 

英国船籍で米国企業が運営しているクルーズ船の感染拡大の責任を全部日本がしょい込んでしまっている。もともと日本に寄港する前に感染は始まっていたわけであり、日本が全部の結果を負うような恰好になっているのは不本意でもある。

本来なら、寄港拒否しても良かったはずだが、日本人が多いから受け入れてしまった。その判断をした時点では、船内での隔離が可能だという前提でそのような判断をしたものだと思うのである程度仕方ないとも思う。

しかし、外国人については、最初から、外国人の国籍国が早く迎えにきてくれということを日本政府から呼びかけるべきであった。何も、ただの寄港地である日本が外国人の健康についてまで責任を負う必要はない。

そのような発信を行うことにより、「日本が負うべき責任じゃないのよ。この船は英国船籍で米国企業のクルーズなんだから。」ということで日本とクルーズ船を切り離すことができたと思うし、実際に対象者を減らして日本側の負担を減らすことができるというだけでなく、船内で閉じ込められて不満を漏らす外国人がいなくなれば、NYTやイズベスチヤが本クルーズについて書くニュース・ソースも減ったはずだ。

ということで党内の対策会議で私はこの点については訴えてきたが、結局、米国はじめ各国は、今や、危険な船から自国民を救助にいくといった格好になってしまい、日本政府のハンドリングがいかにもお粗末であったかのような印象を与えてしまっている。本当に残念だ。

船内での隔離が相当困難であることが判明した時点で後付けで批判するのは簡単なことであり、その時その時は一生懸命諸般の事情を総合的に判断して行動を決断したと思うので、が、宣伝戦が一貫して下手すぎるというか、そもそもそのような意識が欠如していたように思う。クルーズ船に対しても、国内においても然るべき措置を取っていることについて、英語で発信するべきだ。

たとえば、日本寄港以降に感染拡大したわけでなく、もともと日本寄港前に感染していた方々が発症しているのであり、日本の隔離により拡大は抑えられていると示せる証拠があるなら、それは日本語だけでなく英語でも発信するべきだ。ただ、紙を巻くだけでなく、英語で「専門家が」会見を行うべきだ(通訳を使えばいい)。

2. 日本を「緩い国」と認識させる理由となっているもう一つが水際対策の不徹底である

米国や豪州やロシアやシンガポールなどが軒並み中国全土を入国拒否対象とする中、世界で2番目の感染者数がありながら未だに入国拒否対象は湖北省と浙江省に限定されているのは理解できない。

対中配慮とビジネスに対する配慮かもしれないが、短期的には損失を減らせたと思っても、「日本は対策がなっていないので安全ではない」と思われることのコストは、結局、観光客が来なくなるにとどまらず、ひいてはオリパラ開催が危ぶまれることにつながる。そうなれば、経済的損失も日本の国際的評価も数か月の我慢とは比べ物にならないマグニチュードになってしまうだろう。

3. いかにして日本に対するパーセプションを変えるか

日本は東京オリパラ開催国である。オリパラ前に、日本政府は新型コロナに果断に適切に対処しており事態はアンダーコントロールだと「世界が」認識するようにイメージが転換させなければならない。そうでないと、本当に、東京オリパラの開催が危ぶまれるだろう。 

それでは、日本に対する評価をいかにして変えるか。

中国全土入国拒否だが、人道的な理由(家族の交流)とかビジネス上どうしても必要な場合などは例外的に許可するといった体制を組めばいい。そして、発表自体は、基本「中国全土を入国拒否対象」として対外発信することだ。だいぶ印象も変わるだろう。

エアロゾル感染については、一番言いにくい中国保健当局が可能性があるといっているのだから、エアロゾル感染することを前提に考えるべきだ。そうすると、やはり集会などについては、できるだけ自粛するべきだということになるだろう。

加藤大臣は、先ほど、「感染拡大を防ぐためには、今が重要な時期」と正しい指摘をし、「開催の必要性を改めて検討してもらう」ように要請した。が、「一律の自粛要請を行うものではない。」とわざわざ言う必要があったのだろうか。

加藤勝信厚労相(写真は14日、厚労省サイトより:編集部)

マスコミは「一律の自主規制を行うものではない」という部分だけ強調して報道している。これでは、また、日本は本当に危機意識がないな、と誤解されないか心配だ。

むしろ、「基本的には自粛してもらいたいところだが、どうしても開催する場合は以下以下と言った諸点に気を付けてもらいたい」ぐらいネガポジ入れ替えた発表の仕方にすれば良かったように思う。結局、突き詰めれば同じないようなのだけれど。

今回の新型肺炎が日本経済に与える影響が本当に心配だ。終息までどれぐらいかかるかわからないが、テレワーク、遠隔診療、面談のオンライン化、ビデオ会議システムなどあらゆる手段を用いて、不要な接触を減らすことは必要だ。中国では、マスク不着用では店にも入れないが、日本はそうではない(むろん中国の危険度と日本とは全然違うとはいえ)。この1、2か月これ以上ないぐらい厳しい措置を取るべきだ。一定規模の集会とか他地域の人を集める集会とか、一定の要件は加えても良いが、一定規模集会の一律自粛は早く決めた方がいいと思う。

そうでないと日本に対して向けられている世界の見方は変わらないかもしれない。日本が「緩い国」「危機に対して適切なコントロールが取れない国」と思われるリスクは何も感染症に限らないと思う。テロだってサイバーだって安全保障だって根幹は同じことだ、最悪の事態を想定して果断な措置を取れるかどうかということなのだから。

危機意識がないこと以上に、「危機意識がないと見られること」がリスクなのだ。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏(自由民主党、大阪選挙区)の公式ブログ 2020年2月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。

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松川 るい
参議院議員(大阪選挙区、自由民主党)

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