オクスフォード大学のシミュレーションでは、イギリス人の半分以上がすでに新型コロナの免疫をもっている可能性を示唆している。これは現在のイギリス政府の方針の依拠しているインペリアル・カレッジの報告書とはまったく違う。この違いの最大の原因は、感染がいつ始まったと想定するかである。
インペリアル・カレッジはイギリスで死者が初めて出た3月上旬を感染の起点と想定しているが、オクスフォード大学は1月下旬を起点にしている。死者が出るのは、感染が始まってから1ヶ月以上後だからである。新型コロナの基本再生産数が2.25だとすると、この1ヶ月で感染が急速に拡大し、3月15日にはイギリス国民の50~60%が免疫をもっている計算になる。
同じことが日本にもいえるとすると、日本国内(クルーズ船を除く)で初めて死者が出たのは2月中旬なので、潜伏期間2週間を考えると、昨年12月末には感染が始まったことになる。
新型コロナの症状はインフルエンザと見分けにくいので、大部分はインフルエンザや普通の風邪と診断された可能性がある。イギリスと同じ感染速度を想定すると、日本ではコロナの上陸から3ヶ月たっているので、すでに国民の60%以上が免疫をもち、集団免疫が成立している可能性がある。
オクスフォード大学の論文では「抗体検査などの技術への投資が緊急に必要だ」と提言し、イギリス政府は抗体検査キット350万人分を発注した。日本でもすでに新型コロナの抗体検査キットが市販されており、これで抗体が確認できれば新型コロナ対策は大きく転換する可能性がある。
今まではほとんどの人に免疫がないという前提で、コロナウイルスを封じ込めるために隔離や自粛などの対策がとられてきたが、大部分の日本人がすでに抗体をもっているとすれば、封じ込め政策は無意味である。むしろ感染をゆるやかに進め、集団免疫を安定させて医療資源の限界内にとどめたほうがいい。
東京のような都市部では、今後も局所的な感染爆発が起こる可能性もあるが、集団免疫が成立しているとすれば平均に回帰するので、心配する必要はない。これは抗体検査で検証(あるいは反証)可能な仮説である。抗体検査は血清さえあれば簡単にでき、検査キットも1個1000~2000円だ。
これで1000人ぐらいランダムサンプルを抽出して検査すれば、日本人がコロナにどれぐらい免疫をもっているかがわかる。日本政府も抗体検査キットを発注し、疫学的な抗体検査をすべきである。
追記:感染期間の計算に誤りがあったので訂正した。