新型コロナについての現状認識その3(4月5日時点)

4月5日時点、全世界での新型コロナウイルスの感染者は117万人、死者数は6万4千人にまで達してしまいました。

日本は感染者3,600人、死者数85人に留まりますが、4月5日には東京で130人以上増加しており、感染ルートが見えないケースも増えて続けています、政府も、近日中に緊急事態宣言を出す可能性があります。

今、何がおきているのか、再びまとめたいと思います。

1. 中国・イタリア・スペイン・アメリカでは何が起きたか

新型コロナ感染による死者数はイタリアで1.5万人。スペイン1.2万人、米国8500人の順です。感染者の最大は31万人の米国になりました。中国は、感染者数では世界5番(8.3万人)、死者数6番(3,500人)となっています。

特に死者数が増加している背景には、医療崩壊があります。例えばスペインでは(※1)、1000人あたりの病床数は3.0床で、3.2床のイタリアより少なくなっています(日本は13床)。医療従事者も少なく、治療を受ける前に亡くなったり、人工呼吸器を提供する患者の選別が行われてしまいました。また数十の介護施設でも感染が広がっていますが、病院に受け入れてもらえず、治療を受けられずに老人が死亡、遺体も放置されている現実があります。

※1 スペイン、介護施設で遺体放置も イタリアを上回る医療崩壊の苦境(日経ビジネス)

2. 日本国内の感染状況

4月5日に東京では新たに130人以上が感染しました。こうした日本の状況は、政府の専門家会議が4月1日に詳しく説明していますので是非ご覧ください(※2)。

この中で、ここ1-2週間で東京・大阪など都市部中心に感染源がわからない患者数が増加していること。病院内感染、福祉施設内感染、海外への卒業旅行などがクラスター化している傾向が説明されています。

また残念ながら、都市部にかぎらない全国各地で感染が相次いでいて、都市部での感染が、地域にも広がっている状況があります。

※2 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月1日)

3. 限界がきつつある医療体制

国内の感染が広がる中、医療体制は十分なのでしょうか。日本集中治療医学会による理事長声明では、厳しい現状を次のように説明されています。

「イタリアの死亡率が12%であるのに対し、ドイツが1.1%にとどまっているのは集中治療体制の違いにある」(ICUベット数は人口10万人に対してイタリアは12床だが、ドイツは29-30床)
「日本のICUベッド数はイタリアよりも少なく10万人に5床であり、死者数のオーバーシュートは早く訪れる」
「また、新型コロナ対応には4倍のマンパワーが必要であるため、6,500床のICUのうち現実的に収容可能なのは1,000床に満たない可能性がある」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する理事長声明(4月1日)

他方、すでに感染症病床の半分ほどは陽性患者に使用されている現実があります(※3, 図参照)。軽症者が多いので対応できているのでしょうが、既に医療崩壊の一歩手前になっている状況と推察されます。

4. 軽症者向けの「臨時病院」を緊急でつくる必要

そうした中、4月2日に厚労省は、軽症者を自宅やホテル等で療養することを促す事務連絡を行いました(※4)。ICUが埋まりつつある中、都道府県の対応をうながすものです。

他方、中国武漢やイタリアミラノでは、医療機関がパンクになった後、軽症者が自宅に戻されたことで家庭内感染が次々と発生したという状況があります(※5)。アパホテルや楽天三木谷会長が提供したように、軽症者を受入れてくれる民間ホテルを探したり、臨時病院を設置する準備を都道府県は休日返上で進めているところです。

※4 新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について(厚生労働省)
※5 感染爆発の中国とイタリア、軽症者の自宅療養で拡大(朝日新聞デジタル)

5. 個人はどのように対応すべきか

まず、緊急事態宣言がでる可能性は高まっています。ただ、東京都が説明しているように(※6)、現在の自粛要請と法的には大きく変わりはありません。ただ報道等の伝え方は変わり、社会の雰囲気は変化するでしょう。

「3つの密」(密閉・密集・密接)を避けることは周知されましたが、裏を返せば1つの密なら問題ないと考える人が少なくありません。その意味では、家族以外とは2メートル以内に近づかない「ソーシャルディスタンス」の徹底が必要だと一人一人が考える必要があります。

出張や帰省を避ける必要もあります。地方での感染もふたたび増えつつありますが、東京など感染拡大地域に行ったり来たりした人が少なくありません。地方は都市部よりも医療体制がより脆弱であり、高齢化率も高くなっています。今年のゴールデンウィークの帰省は避けざるを得ません。

※6 「緊急事態宣言」が出た場合 東京都の対応(NHKニュース)

最後に

欧米ではすでに各国で数千人の死者が出ていますが、日本はまだ二桁に留まっています。しかし、この状況が続くと楽観的に捉えることは私にはできません。都市部だけでなく地方でも感染者が増え、医療が限界となり、命の選別のような事態が日本でも起きてしまうことを想定せざるをえません。

ただ、行政や医療関係者が、この瞬間も懸命な努力を払っていることは確信を持っています。悲しく辛い状況があっても関係者を尊重し、冷静に行動し続けるようでありたいと考えます。


編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2020年4月5日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。