柴門ふみ最新作『恋する母たち』は『東京ラブストーリー』を超えている

2020年05月15日 16:00

この春の話題といえば、以前、社会現象となったほどの人気ドラマの続編、リメーク版が多数、放送されていることである。厳密には、新型コロナウイルスショックで、放送延期になったものも多数なのだが。『半沢直樹』『ハケンの品格』そして『東京ラブストーリー』だ。

このうち、予定どおり放送(配信)されているのは『東京ラブストーリー』のみである。このドラマが放送されていた1991年春、月曜日の夜は街から女性が消えたという伝説がある。それほどの人気ストーリーだ。小田和正の歌う「ラブ・ストーリーは突然に」もミリオンセラーとなった。

この作品は『あすなろ白書』などとならび、柴門ふみの「代表作」とされる。私も文庫本で持っているが、たしかに面白い。まあ、今の時代だったら、スマホ、SNS、メッセンジャーツールがあるから、様々な微妙な駆け引き、展開が秒で終わってしまう可能性もあるのだけど。

もっとも、彼女に限らずだが「代表作」や、さらには「全盛期」なるものは、失礼な言い方だが「流行っているからチェックしていた広く一般の人」が評するものであり。実際は、売れ行きなどはともかく、作品の充実度などに関しては、ずっと追っているファンからすると、まったく評価が異なるだろう。

その売れ行きに関してすら、ファンが思い込んでいるだけということがよくある。私はプロレスファンだが、よく飲みの席で「猪木が現役で、長州や藤波、タイガーマスクが活躍していたほど、プロレスって流行っていないね」と言われると「えっと…」と絶句してしまう。

あの頃はたしかに、地上波のゴールデンタイムでみんなが見ていたが、東京ドームでプロレスをやる時代ではなかったし、グッズは明らかにいまのほうが飛ぶように売れている。ネット配信など、楽しみ方、課金の仕方も変わった。

恋する母たち (6) (ビッグコミックス)
柴門 ふみ
小学館
2020-04-27


本題なのだけど、何が言いたいかというと、柴門ふみの最新作は、『東京ラブストーリー』をはるかに超えるくらいに、面白いということだ。もう、息もつかせぬ面白さ。しかも、巻が進むたびに展開が劇的になり。今どきの社会問題を盛り込みまくっており。

なんせ、コロナのニュースだらけだけど、それでも不倫報道は止まらない。著名人のこの手の報道を見てあなたはどう思うか?「けしからん!」と思いつつも、実は羨望と失望が入り混じった感情でみていないか?多くの人は「どうでもいいわ」と思っているかもしれないが。

不倫というと、人聞きが悪いが、どこまでが不倫だろう?恋ならだめなのか?それがこの本のテーマでもある。

柴門ふみの最新作は恋する3人の母たちの姿を描いたものだ。3人とも子供が名門高校に通っているが、全員成績不良者。夫は駆け落ち、不倫、ニートなど様々な事情を抱えている。

彼女はこれまでも様々な恋愛や、家族のあり方、女性の生き方を描いてきたが、世界観、設定、ストーリー展開など、これは新しい代表作と言って良い完成度だ。問いかけるのは「人は誰と生きるのか?」ということだ。

性は「心が生きる」と書く。仕事や家事の役割分担などが変わる中、また恋愛の姿が婚姻関係を超えることもある中、物語に登場する女性たちは、罪悪感が漂いつつも、どこかイキイキしている。旧来のものさしで不倫を糾弾する社会に対し、この柴門砲は強烈な問題提起だと言えるだろう。

最新刊が本当に、かたい頭に釘を打ち込んだかのような面白さで。ぜひ、読んでもらいたいのだ。以前、ドラマで『東京ラブストーリー』を見ていた人も、今回リメイク版を見た人も。誤解なきように『東京ラブストーリー』は傑作だし、大ヒットしたドラマである。歴史に残る作品だと言っていい。でも、『東京ラブストーリー』で止まっていて、この作品を読まないなんて、もったいない。一部、試し読みもあるようなので、ぜひ。


編集部より:この記事は千葉商科大学准教授、常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2020年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部准教授

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