やっぱり終身雇用が正しかったんじゃないの?と思った時に読む話

2020年06月25日 17:30

写真AC

今週のメルマガ前半部の紹介です。猛威を振るうコロナ禍により世界規模で失業者が急増しています。一説には2億人が失業するとの予測もあるほどです。

一方で、コロナによる死者数同様に、我が国は失業者数でも驚くべき抑制ぶりを見せています。政府により緊急事態宣言が出された4月に入っても失業率は2.6%と、4.4%から14.7%にまで一気に跳ね上がった米国と比べればその底堅さは明らかでしょう。

【参考リンク】国際比較統計:完全失業率

こうした事実から、従来は問題視される機会の多かった日本企業名物“内部留保”について見直される動きも出ています。

【参考リンク】新型コロナ禍で見直される「内部留保」

はたして日本企業は内部留保という武器によって本当にコロナ禍を克服したんでしょうか。日本社会にとって終身雇用は正解だったのでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。

もっと賃上げしたい経営者、本音では賃上げしてほしくない労組

よくネット上ではこんな意見を目にします。

「日本企業の経営者はいかにして従業員を安く買いたたくか、ということばかり考えている」

【参考リンク】日本人の「給料安すぎ問題」の意外すぎる悪影響

はい、これ完全に間違いですね。そう思っていた人は今日できれいさっぱり忘れましょう。本当の所は日本の経営者の多くはこう考えています。

「もっともっと賃上げしてあげたいけど終身雇用しばりとか高騰する社会保険料のせいで出来なくて申し訳ない。頼むから外資に転職しないでぇ」

本当はもっと賃上げしたいけれども定年は55歳からどんどん伸びる一方でその間のリスクも織り込まないといけないし、社会保険料は30%近くにまで高騰しているから手取りは減り続けるしでこれじゃ優秀層なんて囲い込めないよ、というわけです。

昨年あたりから既存の年功賃金を残しつつ、年収2,000~3000万円の特別待遇コースを導入する企業が増加していますが、これはそれくらいの年収で優秀者が外資に引き抜かれまくるので尻に火がついてなし崩し的に導入しているという面もあります。

【参考リンク】ITトップ人材 業種超え争奪

余談ですが、たまに経団連や同友会の偉い人が「政府は速やかに消費税増税を」みたいな提言を出し、ネット上で「賃金も買いたたいておきながら増税提言するとは何事か!」みたいにイキっている人もいますが、ただのアホですね。

上記のアングルを理解すれば、財界としてはこんな心情から提言出してるわけですよ。

「増税しなかったらさらに社会保険料が引き上げられてボクらの可愛い従業員が苦しむことになる。負担を増やすんなら会社員だけが負担する社会保険料じゃなくて高齢者も自営業もニートも負担する消費税にしてよ」

え?だったら負担増じゃなくて高齢者の社会保障カットを提言しろって?だったらまずそれを言い出しやすい世論を作りましょうね。いきなり立場のある人にそんなこと言えというのはさすがに酷でしょう(苦笑)

ついでに労組の本音も紹介しておきましょう。やはり世間では「労組は春闘などを通じて経営側と闘い、一円でも多くの昇給を追求している」的なイメージ持ってる人が多いんですが、それも間違いです。彼らの本音はこんな感じですね。

「昇給はほどほどでいいから経営を安定させてほしい」

それじゃあ世間に流布する経営者目線イメージと同じじゃんと思う人もいるでしょうが、はいそうです。連合傘下の労組なんてほぼ経営者目線と同じなんですよ。

だって貴重な新卒カード使って入った会社で65歳まで人生の過半を預けて生きているわけで。下手すると数年で入れ替わる社長より長期的視点に立って会社のことを考えていたりします。

だから、労使で交渉はしますけど、あらかじめ落としどころは最初から決まっているもんです。組合費貰ってる組合員の手前、一応ちょこっと高めに要求は出しますけど。労使双方が「経営を長く安定させ、今回みたいな経済危機に際しても雇用を守る」というスタンスだと、最初からほとんど議論する余地はないわけですね。

共産党とかれいわの信者がよく「大企業から搾り取ってばらまけ!」って言ってますけど、連合は「おまえら貧乏人が首突っ込むんじゃないよ」と鼻で笑ってますね(笑)

上記のようなアングルを理解すれば、安倍総理の賃上げ要請に対して連合が不快感を表明していたことも理解可能でしょう。

「こっちはいろいろ考えて慎重に決めてるのに、あんたの始めたアベノミクスがパッとしないからって理由でなんで俺らがリスクとって賃上げさせられるんだよ」

彼らの本音はこんなところでしょう。今回のコロナ禍に際しても驚くべき底堅さを見せる日本の雇用を見れば、労使の慎重なスタンスは取り合えずは功を奏したように見えます。

以降、
失われた30年を生み出したもの
労使のゆがんだ成功体験はなにをもたらすか

※詳細はメルマガにて(夜間飛行)

Q:「勤務中にアイスを食べてはいけないんでしょうか?」
→A:「とりあえず法務部に相談するのはやめましょう」

Q:「いきなり新人からリモートワークはありでしょうか?」
→A:「折を見て職場経験も積ませておくべきでしょう」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2020年6月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。

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城 繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役

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