超スマート時代のメディア成長戦略を

2020年07月20日 11:30

規制改革会議 投資WGに呼ばれ、2年ぶりに通信・放送融合についてお話しして参りました。
会議は非公開につき、WG後に事務局が記者向けにブリーフィングした内容を越えない範囲でメモしておきます。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/toushi/20200316/agenda.html?fbclid=IwAR37WXNxGBX3fOi_eNacBp6bAhYcR34jQGSQGBd8C1KDM4diz2VJvh-For4

2年前の模様はこちらに。
「通信・放送融合2.0」
http://ichiyanakamura.blogspot.com/2018/06/20.html

前回の議論後、放送法が改正されNHK同時配信がスタートしました。大きな成果、大きな進展です。ただ、通信・放送融合という言葉が生まれて28年、NHK同時配信はBBCの12年遅れ。
通信・放送は2011年に法体系が抜本改正され、法制度はほぼ対応が終わっていて、残る宿題がNHK同時配信だったわけです。

法改正から10年、放送は地デジ以外の変化がなく、通信は成長して、NTT一社の営業利益でキー局がまるごと買収されるくらいの格差が開きました。
ネットフリックスはじめ米国の巨人が上陸し、もうすぐ中国資本も攻めてくる。同時に、AI・データ時代にさしかかる。その中での放送を考えるのが、今のミッション。

1年前、放送法改正に当たって国会に呼ばれ申し上げたのが、英国の事例。BBCと民放が一丸となって、ネットフリックスやアマゾンに立ち向かう姿勢が鮮明。1.配信プラットフォーム、2.IPクラウド、3.データ利用の3施策を打っています。

特に2.IPクラウドに注目。英国はハード・ソフト分離で、ハード=送信をアウトソース。コンテンツをIPベースで、クラウドに集中してソフトウェアで管理し、有線・無線全ネットワーク、全デバイスに配信する仕組み。これが通信・放送融合の進化系で、BBCはいずれ地上波を返上するとも言われています。

今回、放送法はNHKと民放の協力義務規定を置きました。これに注目します。共同プラットフォーム、IPクラウド、データ利用、この3点セットをNHKと民放の連携で作れるか。受信料2.5%、200億円弱という小さい話ではなく、数千億円規模でこうしたインフラが作れないか、が一つのポイント。

放送は4兆円。通信は15兆円。融合というと、その交わり、公約数を見がちだが、公倍数をどう伸ばすか。トータルな市場を見据えた成長戦略を描くべき。放送業界への外資規制を考え直す必要があるのか。マスメディア集中排除や、NTTのメディア出資規制などの規制はなお必要なのか。あたりが新しい論点でしょう。

次に残るのが著作権。通信・放送の融合が進む中、著作権法上の通信・放送の区分がネックになっている面があります。20年ほど問題提起していますが、日本の制度がガラパゴスで、ネット流通を阻害している面が問題となります。

ぼくのプレゼンはここまでで、後は同僚の菊池尚人慶應義塾大学特任教授が著作権制度を世界基準に合わせるべきと問題提起しました。ネットフリックス、NTTぷらら、NTTドコモ、スカパーなど映像プラットフォーマーからもプレゼンがありました。

英国や米国の放送局の対応動向について質問がありました。英国のテレビ局は政府に促されてというより、自らの判断で対米戦略を講じているが、コンテンツについては自信を持っていて、むしろネットフリックスなどを世界的な販路として活用する姿勢です。

米国の放送局、3大ネットワークはケーブルテレビの一部門とみるのが妥当。ABC、NBC、CBSともに巨大メディア資本の傘下で、映画会社も同居していて、配信プラットフォームと対決している。日本は放送も通信も映画もバラバラで、対抗軸になるスケールが描けません。
加えて3点コメントしました。

1)利用者からみて光であれ電波であれ、テレビであれスマホであれ、どこにいても受けられるサービス、となるとオールIP、オールクラウドに進むだろうが、そのためには事業者が連携・合併してまとまるか、大きなプレイヤーが巻き取るか。そのリアリティがあっていい。

2)米国メディアの激しい合従連衡が日本に起きても驚かない。かつて孫さんとマードックさんがテレ朝を、ライブドアがフジを、楽天がTBSを買おうとした。サイバーエージェントとテレ朝はAbemaを作った。これらを促す政策があり得るのか、は検討材料かもしれません。

3)吉本興業が参考になるでしょう。「火花」をネットフリックスの資金で制作して世界配信し、その後にNHKで放映した。従来のウィンドウ戦略と全く異なる。NTTぷららと大阪チャンネルを作り、放送コンテンツを配信している。制作プロダクションがプラットフォームやテレビ局を活用する事例です。

総じて申し上げた趣旨は、制度課題は(著作権を除き)特になく、それよりもテレビ局を含む民間・ビジネス側の戦略やビジョンが問われているということです。米中の攻勢とテクノロジーの転換にどう立ち向かうのか。ぼくは政府にではなく、メディア企業に聞きたいです。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年7月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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