半沢直樹・新シリーズにみる「創業者内紛リスク」のおそろしさ

山口 利昭

久しぶりの半沢直樹・新シリーズの第一話を楽しく視聴しました。銀行系列のグループ会社における出向組とプロパー組との確執等、「楽しく」視聴できない方もいらっしゃるかもしれませんが、やっぱり「倍返し」のドラマストーリーは面白い。今後の展開がとても楽しみです。

- YouTube
YouTube でお気に入りの動画や音楽を楽しみ、オリジナルのコンテンツをアップロードして友だちや家族、世界中の人たちと共有しましょう。

ところで今回のシリーズはIT企業(上場企業)間における「TOBによる敵対的買収」を巡る人間模様が描かれていますが、ライバル会社が突如30%を保有する大株主として登場する原因が、対象会社における創業者(共同経営者)間における内紛(ライバル会社への株式譲渡)によるものでして、これもなかなかリアルです。

現在進行形の事例としてはコロワイドによる大戸屋への敵対的TOBなどは代表的なものですし、昨年のコクヨによるぺんてる株式取得なども(ファンドが途中で関与しているものの)同様な事例かと思われます。事業規模が大きくなったり、創業者の代替わりによって共同経営者の数が増えたりすることで内紛が表面化する事案にときどき関与しますが、「資本市場の効率性」が重視される現在の経営環境のもとでは、創業者内紛リスクがどのような有事に発展していくのか、経営者としても注視しておく必要性が高まっているように思います。

なお、一方で「創業者内紛リスク」を巧妙に利用して、現経営陣が創業家の力を低下させることも考えられます。先日、朝日新聞社創業家の方の生涯を綴った「最後の社主-朝日新聞が秘封した『御影の令嬢』へのレクイエム」を読みましたが、創業家における(内紛とまでは言いませんが)経営関与への見解の相違を巧みにかぎ取り、会社側が保有比率を次第に減少させていく様子はなかなかおそろしいものでした。

ちなみに「創業家の内紛リスク」と書きましたが、私が弁護士の駆け出しのころ、資産家の3兄弟が相続争いで長年もめていて、バブルの最中にも決着がつかず、決着がついたころにはすでにバブルが崩壊していたために、多くの資産をそのまま次世代に残せた・・・という事例がありました。おそらく仲が良かったら皆さんバブルに沈んでいたことが予想されましたので、内紛=リスク、とまでは言えないのかもしれません。

日本にも100年近くにわたって創業家が株式を(ほぼすべて)保有する大きな非公開会社が(様々な業界において)存在しますが、こういった「内紛リスク」の顕在化例をみていますと、長年にわたって創業家一族の結束が継続する、ということはホントにスゴいことだなぁと感心するばかりです。


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年7月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。