朝日新聞も「便所の落書き」になるのか

2020年07月29日 15:00

朝日新聞の論座にDr.ナイフという匿名アカウントの記事が連載されるそうだ。内容は取るに足りない。自己紹介がだらだら続き、「有権者が主役で参加できる政治活動に期待」という陳腐な話で終わる作文で、出来の悪い大学1年生の期末レポートという感じだ。彼のツイートはこんな調子である。

こういう幼稚な安倍政権批判は、ツイッターに山ほどある。問題はそこではない。投書欄まで実名を原則とする朝日新聞が、匿名の外部執筆者に連載させることだ。これは編集局の中枢の判断ではないと思うが、論座は窓際とはいえ、朝日新聞社の経営するウェブサイトである。

これは社説や天声人語が無署名なのとは、まったく意味が違う。署名記事はその記者の主観をまじえてもいいが、社説は朝日新聞社としての主張であり、多くの論説委員の合議で決まる。普通の無署名の記事も、最低3人ぐらいがチェックする。

外部執筆者を起用する場合には、その言論の責任は朝日新聞と執筆者が連帯して負う。たとえば名誉毀損の紛争が発生した場合には、執筆者とともに編集した新聞社が被告になることが多い。匿名では、その責任の所在が不明だ。

Dr.ナイフは「朝日新聞社には個人情報を託している」というが、その情報が正しいかどうかは第三者が確認できない。そもそもアカウントが同一人物であるかどうかもわからない。極端な話、極左の犯罪者が身元を偽っていてもわからない。

これはインターネット自体の欠陥で、新聞は「便所の落書き」などとバカにしてきた。特に日本は匿名の比率が高く、情報の質が低い。これは会社などの所属集団の拘束力が強く、個人の意見と会社の意見の区別がつけにくいことが原因だろう。

それが2チャンネルのような完全匿名の掲示板が発展した原因であり、結果でもある。日本は原則実名のFacebookよりTwitterのほうがユーザーが多い珍しい国だが、その原因もこの匿名性だろう。

アゴラが実名を原則としているのも、こういう日本の貧しいネット言論を変えたいからだ。ネットがマスコミより優位性をもつのは、各分野の(実務的にも学問的にも)専門家が書くからで、これは実名でないと発揮できない。

新聞の優位性は、一次情報の編集責任が明確なことにある。よく批判される「関係者によると」という匿名の情報源も、新聞社が責任をもつから辛うじて成り立っている。みずから責任を負えない匿名アカウントを使うのは自殺行為である。

これから朝日が匿名アカウントをどんどん使い始めたら、新聞はネットと差別化できなくなる。この程度の記事は、専門知識も取材もなしで書けるからだ。朝日新聞がみずから便所の落書きになるのを、現場で取材している記者はどう思うだろうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長(学術博士)

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