「お前の性格を変えるんだ」米中対立激化!

4連休に入る直前のニュース番組は、GoToキャンペーンの話題ばかりでしたけれども、他にも大きなニュースが流れました。

7月21日に、トランプ大統領がテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の72時間以内の退去を求めました。ヒューストンにある中国総領事館がアメリカ国内における中国のスパイ活動の拠点になっているという理由で、実際に中国は退去期限の24日までに中国領事館職員は退去しました。

ちなみに国際法では、領事関係に関するウィーン条約というのがあり、領事館を設置するためには、設置先の国との同意が必要で、同意がなくなれば終了、いわば退去となります。

領事関係に関するウィーン条約
第四条(領事機関の設置)
1 領事機関は、接受国の同意がある場合にのみ、接受国の領域内に設置することができる。

中国のスパイ活動は国家レベルで行われているわけで、スパイ活動を批判しているアメリカもまたスパイ活動を行っています。ロシアやイギリスもスパイ活動や諜報活動を行っていますが、それら行為をやっていないのは日本ぐらいでしょう。それにしても、日本国内でも中国はスパイ活動を行っているにも関わらず、取締る法律となるスパイ防止法がない事は日本にとって問題だと私は思っています。

それにしても、総領事館を閉めろという要求は異例中の異例ですから、私は「凄いことになっているぞ」と思いました。中国はこの退去要求をまず批判し、その後すぐに報復措置として中国の四川省成都にあるアメリカ総領事館の閉鎖を求めました。

「総領事館を閉めろ」ということは、はっきり言って宣誓布告のようなものです。
中国に閉鎖要求を出した直後の23日に、アメリカのポンペオ国務長官はまさにそういう発言を、演説の中でしています。

その内容を簡単に要約すればこうなります。
アメリカをはじめとした国々は50年近く中国を国際社会に迎え入れてきたけれども、中国はスパイ活動などで、知的財産や貿易機密などを盗み取り、南シナ海の島々も盗んできた。よって自由主義諸国は中国共産党を変えなければならないとして、その根本は独裁的な全体主義を信奉している習近平国家主席であり、世界の覇権を握ろうとするその野望であったとしています。しかし、アメリカ一国では無理だから、国際機関や世界の国、特にインド太平洋地域の民主主義国の尽力が必要だとしています。もう完全に中国がやっている事実関係が問題だというよりは、中国国家の根本が問題だと言っているわけです。

さらにこれには伏線があります。
5月20日にホワイトハウスが公表した中国に対するアメリカの戦略的アプローチです。
こちらも簡単に説明すると、過去のアメリカの中国に対するアプローチが間違っていたと認めて、原則に基づく現実主義に転換するとしています。そこで、Principled realism (道義的現実主義)という言葉を使っていますが、その意味するところは中国を経済発展に導いていけば、中国は民主化するということを理想だとした理想は間違いだという意味です。ついでに言えば中国と貿易の取引をしようとしていたトランプ政権の間違いというのも認めたことになると私は思います。ではなぜそうなったのかといえばやはり新型コロナウイルスですね。

新型コロナの流行が中国から始まった。その時、中国政府は情報を隠蔽した。そして、「アメリカがウイルスを持ち込んだ」という発言までしました。これらによってトランプ政権の態度を硬化させてしまいました。さらに、11月の大統領選挙でトランプ氏は今、不利な状況におかれています。それもこれもコロナが原因で不利な状態になったということがあるからです。

これまでは貿易戦争、ここからはイデオロギー対立になりますが、これはかなり大変なことです。
すごくわかりやすく言えば、これまでは「金の貸し借りを清算しよう」と言っていたのが、今度は「お前の性格を変えるんだ」となったことです。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。