新型コロナは夏のうちに感染したほうがいい

池田 信夫

7月31日の東京都の新規感染者数が463人で史上最多になったとマスコミは大騒ぎだが、これは検査人数も5665人と史上最多で、検査キットの感度も上がったからだ。東京の陽性率が0.5%としても7万人なので、今後も毎日4~500人の陽性は出るだろう。問題はそこではない。

7月の東京の死者は5人、全国でも31人だった(30日現在)。月間の陽性者数1万5668人で割ると、致死率は0.2%。インフルエンザとほぼ同じだ。「死者が増えるのは感染の1ヶ月後だ」などという人がいまだにいるが、6月下旬に検査が増えた後、1ヶ月たっても死者は増えない。いま増えている陽性者は、微量のウイルスをもって発症しなかった人をPCR検査で見つけているだけなのだ。

東洋経済オンラインより

小池知事は「都独自の緊急事態宣言を発することも考える」というが、緊急事態かどうかを判断する上で大事なのは、医療資源が逼迫しているかどうかだ。重症患者は増えているが、全国で累計87人。毎日20~25人増えていた4月とは違う。人工呼吸器の使用率も、ピークの1/3以下である。

これは、ある意味では想定されていた状況である。2月24日に専門家会議の出した方針では、こう書いている。

このウイルスの特徴上、一人一人の感染を完全に防止することは不可能です。ただし、感染の拡大のスピードを抑制することは可能だと考えられます。[…]これからとるべき対策の最大の目標は、感染の拡大のスピードを抑制し、可能な限り重症者の発生と死亡数を減らすことです。

つまり日本の新型コロナ対策の目的はウイルスを根絶することではなく、図のように「医療対応の限界」を上げるために医療対応の体制を強化すると同時に、流行のピークを下げるピークシフト戦略だった。

これはイギリス政府が初期に打ち出した方針と同じく、ゆるやかに感染を拡大して集団免疫を実現する戦略だった。だがその被害想定が死者25万人と過大だったため国民の反発をまねき、イギリスはロックダウンに転換した。日本でも西浦博氏が「8割削減」を打ち出し、ピークシフトは忘れられてしまった。

しかし結果的には、日本のとった方針はピークシフトに近い。緊急事態宣言でもロックダウンせず、移動率はピーク時にも6割程度しか下がらなかったが、人口あたり死亡率は欧米より圧倒的に低かった。

日本のコロナの集団感染の閾値は(自然免疫を勘案して)たかだか10%程度だと思われるので、インフルと同じく1000万人ぐらい感染することはありうるが、それ自体は大した問題ではない。検体にウイルスが6個(検査陽性の最小値)あっても重症化して死ぬことはなく、他人にうつすリスクもないからだ。

同じ感染するなら、そのピークは夏に来たほうがいい。夏にはコロナウイルスの活動が衰えるからだ。いま無理に感染をおさえると、秋以降にピークが来て重症化するおそれがある。

コロナを恐れるなとはいわないが、インフル程度に恐れれば十分だ。やみくもにウイルスを撲滅しようとするのではなく、専門家会議の原点だったピークシフト戦略に戻るべきだ。