今起きているのはパンデミックの第2波ではなく、ケースデミックだ
誰もが気づいていたように、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)は北半球ではすでに終わっています。今起きているのはパンデミックの第2波ではなく、ケースデミック(casedemic)です。陽性者数だけが増えても死亡者数や重症者数は減り続けることがあり、この状態はケースデミックと呼ばれています。
Retweet please to let people know what’s happening all over Europe, and in many other parts of the world.
The #Casedemic is escalating – and societal restrictions are coming in fast based on it.
Just a few examples here – but nearly all of Europe has the same shocking story pic.twitter.com/lacFjdyx6C
— Ivor Cummins (@FatEmperor) August 18, 2020
これは東京版のケースデミックです。6月末から状況が変わってきています。(検査数が増えて)陽性者数は増えていますが、死亡者数は減っています。
東京と西欧諸国に関して致死率(CFR)の7日移動平均を計算してみたところ、致死率は4月の第1波の時の10分の1から20分の1にまで低下していることがわかりました。
なぜ致死率は劇的に変化したのか。それはウイルスの弱毒化のせいではなく、私たちのT細胞がウイルスを記憶するから
このケースデミック現象をウイルスの弱毒化のせいだとする人がいます。
私はそれが正しいとは思いません。オーストラリア、イスラエル、香港など、第1波を早くから厳格な方法で抑えていた国々も、同じ高い致死率で第2波を経験してきました。
Australia Coronavirus Update – Worldometer
Israel Coronavirus Update – Worldometer
Hong Kong Coronavirus Update – Worldometer
どこでなぜパンデミックがケースデミックへと変化したのか、以下の2つの理由で説明できます。
- 非常に脆弱だった人たちが第1波で死亡したから
- 私たちのT細胞は新型コロナウイルスを記憶し、免疫を獲得するから
第1の理由は誰にとっても想像しやすく、理解しやすいでしょう。第2の理由を説明している論文をいくつか引用します。
無症状または軽症であった回復期の新型コロナ患者における頑健なT細胞免疫
上の図を見てください。新型コロナに感染せずとも暴露するだけで、ほとんどの人のT細胞が新型コロナウイルスに特異的な免疫反応を獲得するのです!
以下の論文には一読の価値があります。
無症状または軽症であった回復期の新型コロナ患者における頑健なT細胞免疫
新型コロナウイルスT細胞エピトープは異種・新型コロナ誘導T細胞認識を規定する
新型コロナとSARSの感染経験者および未感染者における新型コロナウイルス特異的T細胞免疫
最後の論文は、2003年にSARSに感染・回復した23人中23人が17年後もSARSに特異的なT細胞免疫を持ち続けていることを明らかにしています!これは、新型コロナウイルスに特異的なT細胞免疫が長期間持続可能であることを示しています。
(BCGワクチン接種はT細胞免疫を強化する)
BCG仮説は本記事にはあまり関係ないのですが、T細胞とBCG接種の関係を付け加えておきます。私は5月に以下のような記事を書きました。今は私の予想が当たったと感じています。
上の記事で引用したのは2つの論文です。後者の論文はヒトではなくマウスについての論文ですが、これはヒトにも当てはまると仮定してみましょう。
ウシ型結核菌由来のBCGワクチン接種は、成人において炎症性T細胞応答か制御性T細胞応答いずれかを誘導する
ウシ型結核菌由来のBCGワクチン接種により生成されたメモリーT細胞は、CD4 CD44 lo CD62 リガンド hi 集団内に存在する
わかりやすく言うと、以下のようになります。近い将来、科学者たちがこれを証明してくれることを願っています。
- BCGワクチン接種はT細胞免疫のベースラインを押し上げる
- BCGワクチン接種はT細胞記憶を強化する
従来型のコロナウイルスOC43は1889年~1890年に初めて現れ、100万人あたり約625人が死亡した
では、どのような未来を予見することができるのでしょうか?未来を予見するために、歴史を振り返ってみましょう。
従来型のコロナウイルスであるOC43の歴史について、とても興味深いものを見つけました。
1889年から1890年にかけて100万人が死亡したパンデミックが起こり、それはインフルエンザウイルスが原因と考えられていました。しかし最近の研究では、そのウイルスは実際にはインフルエンザウイルスではなく、ヒトコロナウイルスOC43であった可能性があると言われています。
1889年~1890年にヒトコロナウイルスOC43が初めて現れたときには100万人が死亡しており、当時の人口100万人あたりの死亡者数は625人前後でした。この死亡率は、BCGワクチン接種が義務化されていない国の新型コロナの死亡率と同様の範囲です。これは偶然の一致ではありますが、参考になる史料であることを示しています。
1889年~1890年のパンデミックは数年間続きましたが、この新型コロナのパンデミックは1年くらいで早く終わるのではないかと思います。私たちはグローバル経済の中で生きていますので。
ブルームバーグにこれに関する素晴らしい記事があります。
現在私たちはヒトコロナウイルスOC43を恐れているでしょうか? OC43の感染者をPCR検査して隔離しているでしょうか? OC43に対するワクチン接種を受けているでしょうか? OC43に対する集団免疫の獲得を気にしたりしているでしょうか? これらの質問の答えはわかっているはずです。私たちは何度も繰り返し新型コロナに感染するでしょうが、重症化する確率は劇的に減ってきているのです。
(新たなワクチンの実用化を急ぐことは、新型コロナに感染するよりもリスクが高いかもしれない。古くからあるBCGワクチンなら効果があるだろう)
私は各国が新たなワクチンの実用化を急ぐことを心配しており、健康な若い被験者の中で副作用が出る新ワクチンを打つよりも、本物のウイルスに暴露する方がリスクが低いのではないかと考えています。もし成功すれば、風邪を予防する方法を見つけたことになるので、ノーベル賞級の発明です。
私はBCGワクチンを接種する方がはるかに安全で、かなりの効果があると思っています。UAEの病院で得られた結果を見てみてください。
キター!!
UAEの病院、出生時にBCG接種済みの病院スタッフ280人のうち71人に対して3月上旬にBCG(株種不明)を追加接種、209人には追加接種しなかった結果
↓↓↓
BCG追加接種あり71人→感染0人(感染率0%)
BCG追加接種なし209人→感染18人(感染率8.6%) https://t.co/CT4doC1yYD— J Sato (@j_sato) August 12, 2020
新型コロナウイルスは従来型コロナ風邪の1つになる
私たちが新型コロナウイルスに一度暴露すると、T細胞などの免疫がそれを記憶し、新型コロナウイルスは従来型コロナ風邪の1つになるでしょう。これは北半球のほとんどの地域ですでに起こっていることで、南半球でもこれから起こるだろうと考えています。
また、新型コロナウイルスの季節性を心配する人もいますが、夏か冬に流行していてそのスピードもそれほど変わらないので、私は季節性はあまり気にしていません。オーストラリアのデータを見る限り、冬になると1.5倍のスピードで感染するようです。つまり、夏の方が感染カーブが急ではないので、冬よりも夏に感染した方が良いということです。イスラエルは抑制戦略を放棄して、この夏にウイルスを広めることにしました。これは賢いやり方だと思います。
新型コロナウイルスは北半球では2020年末までに従来型コロナ風邪の1つになるでしょう。
編集部より:この記事はサトウ・ジュン氏のブログ「JSatoNotes」2020年8月21日の記事より和訳して転載させていただきました。快く転載を許可してくださったサトウ氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJSatoNotesをご覧ください。