抗体を気にするな。BCGで活性化する大食細胞・T細胞がカギ --- サトウ・ジュン

アゴラ

新型コロナウイルスに対する抗体を作るワクチン開発は不毛だと思います。というのも、中国の初期の研究によると、回復した患者の中には抗体を持っていない人がいたからです。無症状の患者まで含めると、抗体を持たない人の数が回復した患者の大半を占めることになるでしょう。

海外で行われるドライブスルー方式の抗体検査(Florida National Guard/flickr:編集部)

日本で実施された信頼できる抗体検査の結果は、陽性率が東京都で0.6%、東北地方で0.4%にとどまりました。東京の0.6%はPCR検査患者の10倍、東北地方の0.4%はPCR検査患者の100倍です。これらは何を意味するのでしょうか?

  • 私たちがPCR検査で追跡できるよりもはるかに多くの感染者が存在しており、同じことがどこの国についても言える
  • 抗体の産生率は地域によって10倍異なり、東北のPCR検査の実施数は東京の10分の1

まあ、抗体検査ではこの病気の全体像はつかめないというのが唯一のポイントです。

エビデンスはありませんが私自身の経験や聞いた話からすると、東京都内で20%程度の人が感染しているのではないかと推測しています。私の周りでも「今シーズンはいつもの風邪より長引く風邪をひいてしまった」という人がたくさんいます。

抗体検査や抗体作製ワクチンでは、この新型コロナの世界的流行は全く解決できないでしょう。

そこで、抗体以外の要因を見てみましょう。

CD4+T細胞とCD8+T細胞が新型コロナウイルスと戦えるとする論文や、今回の世界的流行が起こる前から非感染者の3460%は新型コロナウイルスに反応するT細胞を持っていたとする論文がいくつか出てきています。これらの事実が、この世界的流行を解決するカギになると思います。

新型コロナ感染者と非感染者における新型コロナウイルスに対するT細胞応答のターゲット(Cell)

重要なことは、新型コロナウイルスに反応するCD4+T細胞が非感染者の約40~60%で検出されたことであり、流行している“普通の風邪”のコロナウイルスと新型コロナウイルスとの間にT細胞認識の交差反応性があることを示唆している。

新型コロナの患者に見つかったT細胞は長期免疫にとって「吉兆」である(AAAS)

ベルリンにあるシャリテ大学病院のティールらは68人の非感染者の血液を分析し、34%が新型コロナウイルスを認識するヘルパーT細胞を有していることを発見した。

ラホヤ免疫研究所のチームは、現在の世界的流行が始まる前の2015年から2018年の間に集めて保存している血液サンプルの約半分から、この交差反応性を検出した。

研究者らは、これらの細胞が、風邪を引き起こす4種類のヒトコロナウイルスの1 つに過去に感染したことによって惹起されたものである可能性が高いと考えている。これらのウイルスに含まれるタンパク質は、新型コロナウイルスに含まれるタンパク質によく似ている。

これらの論文は、4つのヒトコロナウイルスによる普通の風邪に過去に感染したことがそれらのT細胞が作られるのを惹起するかもしれないと述べています。

これにはある程度同意しますが、完全には同意できません。私の反論のポイントは以下の通りです。

  1. 風邪をよく引く人もいれば、めったに引かない人もいます。前者は(ヒトコロナウイルスの)風邪に自然免疫を十分持っておらず、後者は(ヒトコロナウイルスの)風邪への自然免疫を十分持っています。
  2. ヒトコロナウイルスの風邪は、世界のほかの地域よりもアジアでより毎年流行っており、それでアジア人は新型コロナに対する免疫力が高いのではないかという人もいます。でもちょっと待ってください。だとすれば、ヒトコロナウイルスの風邪がアジアで毎年流行っているのはなぜでしょうか?アジア人がヒトコロナウイルスに免疫があることが多いのであれば、アジアでのヒトコロナウイルス風邪は少ないか、少なくとも減っているはずです。矛盾しています。
  3. なぜ西欧や北米にいる日本人の死亡率は、アジア系アメリカ人やアジア系ヨーロッパ人の100分の1なのでしょうか?彼らの多くはそこに長く住んでいます。

私はBCG/結核がT細胞の応答を強化するカギだと考えています。「BCG T Cell(BCG T細胞)」でGoogle検索してみてください。以下のような論文がたくさん見つかります。

ウシ型結核菌由来のBCGワクチン接種は、成人において炎症性T細胞応答か制御性T細胞応答いずれかを誘導する(CVI)

現在利用可能な唯一の結核ワクチンであるウシ型結核菌由来のBCGは、成人の様々な防御を誘導する。防御の免疫との相関は不明であり、保護されている群とされていない群との比較におけるサイトカインを産生するT細胞サブセットの分析では、一貫性のない結果が得られてきた。

われわれは、成人へのBCGワクチン接種によって誘導される一次T細胞応答について、炎症性T細胞応答および制御性T細胞応答の両方を研究した。

ツベルクリン皮内反応検査とQFT検査で陰性、かつBCG未接種の12人の健康成人被験者にBCG接種を行い、追跡調査した。BCGワクチン接種はこの小さな若年成人群のなかで、予想外に2つに分かれた免疫応答を誘導した:

BCGワクチン接種は、インターフェロンγ(IFN-γ)インターロイキン-2(IL-2)腫瘍壊死因子α(TNF-α)を産生する多機能性CD4+T細胞と、IL-17Aを産生するCD4+T細胞およびIFN-γを産生するCD8+T細胞を同時に誘導するか、あるいは対照的に、制御性CD8+T細胞を誘導して実質的にサイトカイン応答のない状態にするかのいずれかであった。

インターフェロンγ(IFN-γ)インターロイキン-2(IL-2)腫瘍壊死因子α(TNF-α)を産生する多機能性CD4+T細胞の誘導や末梢血単核細胞(PBMC)によるインターフェロンγ(IFN-γ)の産生が有意だったのは、強い免疫誘導による局所的な皮膚の炎症や血清CRP値の上昇がみられる個人だけに限られた。

逆に、炎症が軽度の個人では、制御性CD8+T細胞が特異的に誘導された。

このように、BCGワクチン接種は、局所的な炎症反応を伴う広範な炎症性T細胞応答を誘導するか、あるいは対照的に、軽度の局所炎症と不良なサイトカイン誘導しか伴わず、多機能性CD4+T細胞を欠いた、制御性CD8+T細胞応答を優勢に誘導するかのいずれかであった。

古典的な免疫マーカーと非古典的な免疫マーカーを用いてBCGワクチン接種に対する不均一な宿主応答をさらに詳細にマッピングすることで、正反対に見える免疫反応を誘導するメカニズムとその決定因子についての理解が深まり、またそれらがBCGの結核に対する防御免疫誘導能にどのように影響を与えているかについても理解が深まるだろう。

ウシ型結核菌由来のBCGワクチン接種により生成されたメモリーT細胞は、CD4 CD44 lo CD62 リガンド hi 集団内に存在する(NCBI)

ウシ型結核菌由来のBCGを接種したマウスの肺では、活性化されたエフェクター表現型CD44 hi CD62 リガンド lo (CD62L lo)を発現するCD4細胞が蓄積しており、インターフェロンγを分泌する能力を持っていた。

しかし、細胞移入の際に、休眠/ナイーブ表現型(CD44 lo CD62L hi)を発現する細胞は、ウイルス攻撃感染からレシピエントを防御することができ、このサブセット内からのT細胞メモリの出現を示唆していた。

もう一つの大きな要因はマクロファージにあるようです。BCG/結核はマクロファージを著しく活性化させます。

下の日本人臨床医師のYoutube動画をご覧ください。B細胞抗体を持っていなくても、私たちの体が新型コロナウイルスとどのように戦っているのかがよくわかると思います。説明がシンプルでわかりやすいです。これは聞く価値があります。

私は2~3週間前から免疫の勉強を始めましたが、私たちの免疫がいかに複雑で、多層・多段階からなっており、また相互に関連し合うかなど、まだまだ知らないことがたくさんあることに驚かされました(そして圧倒されました)。

しかし、感染症学にとっての免疫に関しては、B細胞が産生する抗体だけで判断していることに強い違和感を覚えました。様々な層や回路、複数の段階はどこに行ったのでしょうか?インフルエンザがR0=2.5で毎年私たちの6割がかかるなら、すでに人口が減っているのではないでしょうか?感染症は他にも多くありますし、人類は絶滅に向かっているはずです。

私たちは自分の体を守る層を増やしており、今回の新型コロナの場合は、BCGワクチン/結核によって活性化されたマクロファージとT細胞がカギを握っているようです。

(5月28日追記)

下の図は、宮坂先生がフェイスブックへの投稿で使用したものです。全く同感です。

BCGワクチンかBCG関連のワクチンにお金や時間を使うべき時が来ています。遺伝子組み換えBCGワクチンVPM1002は、容易に大量生産できるようなので有望そうです。

私の以前の記事を読んでくださった方はご存知だと思いますが、BCG東京株が一番効果があるように見えます。私は、BCG東京株由来のリコンビナント 72f BCGワクチンを見つけました。新型コロナのワクチンとしては、これが最も効果的で迅速な製造も容易なワクチンになるかもしれません 

岡田全司「新しい結核ワクチンの開発

今回の新型コロナの世界的流行を解決するために、このワクチンに取り組んでいる岡田全司先生が呼ばれることを期待しています。

岡田 全司(科学研究費助成事業データベース)


編集部より:この記事はサトウ・ジュン氏のブログ「JSatoNotes」2020年5月16日の記事より和訳して転載させていただきました。快く転載を許可してくださったサトウ氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJSatoNotesをご覧ください。