【更新】「指定感染症」を解除しないとボトルネックは解消しない

池田 信夫

追記:安倍首相が8月28日の記者会見で「指定感染症(2類以上相当)の見直し」を見直すことを明言したので、26日の記事を補足して更新する。

多くの医師が要望し、アゴラでも提案してきた新型コロナの「指定感染症」の見直しが、やっと行われる見通しになった。安倍首相は記者会見で、次のような方針を発表した。

新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)といった2類感染症以上の扱いをしてまいりました。これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直します。軽症者や無症状者は宿泊施設や自宅での療養を徹底し、保健所や医療機関の負担軽減を図ってまいります。

この問題について誤解が多いが、コロナは1月28日に閣議決定された政令にもとづく「指定感染症」であって「2類感染症」ではない。厚労省はこれを感染症法の「2類相当」と説明したが、2月14日に改正された政令で「無症状病原体保有者を新型コロナウイルス感染症の患者とみなして、入院の措置の対象とする」と決めた。これは「1類相当」で、エボラ出血熱やペストと同じである。

感染症法では「都道府県知事は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる」と定めているが、これが医療現場では入院義務と受け取られ、無症状の陽性者で病院のベッドがあふれ、ホテルに収容する事態となった。

今回の対策パッケージでは指定感染症の指定解除ではなく、この2月14日の政令を実質的に撤回して、無症状者を入院対象から除外するものと思われる。首相が「軽症者や無症状者は宿泊施設や自宅での療養を徹底し」と述べたように「2類以上相当」だったコロナを「2類相当」に格下げし、無症状の陽性者は入院費が自己負担になる。

ボトルネックは「2類以上」の扱い

これは一歩前進だが、最大の問題が解決できない。指定感染症のボトルネックは、扱いが感染症法の2類以上で、全員入院・全員報告が義務づけられていることだ。このため病院の負担が重く、陽性者の半分近くを占める無症状の人がベッドを占有している。

これを放置したまま秋冬にインフルエンザ(5類)が流行すると、インフル検査で陰性になった人も、それより格が上(2類相当)の指定感染症の検査を受けなければならないので、そういう人まで指定医療機関に殺到して混乱するおそれがある。

いちばん簡単な方法は、政令を改正して、コロナをインフルと同じ「5類感染症」に指定することだ。これでインフルと同じように一般の病院や開業医が扱えるようになり、ボトルネックは解消する。

これに対して「コロナにはワクチンがないので医療スタッフが院内感染するリスクが大きい」という反対論がある。それについてはコロナ患者を受け入れる病院には患者を隔離する施設の設置を義務づけ、その設備や要員のコストを政府が全額補助すればいい。

問題はコロナをエボラのような「死の病」と同列に扱う指定感染症の規定にある。大学の休校などの措置も「指定感染症だから特別だ」というのが理由になっている。それを改正してインフルと同じ「普通の感染症」として扱うことが、過剰な自粛を解除して日常に戻す上で重要である。