日銀に出口はない:MMT論者が認識していない「恐怖」

藤巻 健史

日銀黒田総裁と質疑を繰り広げる参議院議員時代の筆者(参議院インターネット中継より)

MMT論者は「借金を積み上げることはますます自転車操業になること」を認識していない。借金を増やしていくことは家庭であれ、国であれ、自転車操業をしている自転車のタイヤが年々細くなっていくのと同じだ。なにかあるとすぐコケてしまうようになる。

ご自身が毎年100万円ずつの借金を積み重ねることを考えて欲しい。100万円をA銀行から1年満期で借りた。1年後は、A銀行は、満期が来た100万円の継続と新規融資の100万円の計200万円の融資要請に応じてくれた。しかし2年後には、借金総額が300万円になる人には、もう危なくて貸せないと融資を断ってきた。

あなたは300万円の金策に走りまわらねばならなくなる。その年は、運よく、B銀行から借りられたたとしても、その翌年は、B銀行が融資を継続してくれるかわからない。過去融資分は継続してくれたとしても新規100万円の融資先を探さなくてはならない。

もしB銀行に融資継続を断られたら、あなたは400万円の金策に走り回らねばならない。そのまた翌年は500万円の金策だ。借金が増えていけば倒産リスクが増すので、貸し手を探すのはますます困難になる。借金が増えると自転車操業の度合いが高まるとはこういうこと。国の場合、問答無用で借金要請に応じてくれる(=国債を買ってくれる)のは、禁じ手中の禁じ手の財政ファイナンスを始めた中央銀行だけ。他にはいなくなる。

したがって中央銀行は、財政ファイナンスを辞められない。巨額になった借金の代替融資先が見つからないからだ。

どんなに景気が良くなってもお金をバラマキ続け、景気抑制どころか刺激してしまう。これも私が日銀を廃し、新しい中央銀行を作らざるを得ないという理由の一つ。円は紙切れになりハイパーインフレとなる。日銀に出口はない。あるのなら教えて欲しい。出口があるのは2023年に任期が切れる黒田総裁のみ。