安倍政権と日本の政治① :安倍政権の評価についての私見

2020年09月01日 06:00

(1)安倍政権(第2期)の評価 ~攻めの前半/守りの後半~

先月28日、辞意を表明した安倍首相(首相官邸YouTube:編集部)

政権の総括

正直、安倍総理の辞任は予想外であった。28日に記者会見をして国民に病状を説明するとの事前情報から、可能性として、厳しい病状を踏まえての辞任もあり得るとは思っていたが、おそらくは、持病を説明しての続投だろう、と考えていた(また、そういう説を信じていた)。不明を恥じるしかない。

連続在任期間が憲政史上最長となった第二次~第四次安倍内閣(2012年12月~2020年8月:約7年8か月)を、わずか1年で退陣となった第一次安倍内閣(2006年9月~2007年9月)と分けて、便宜的にここでは、第2期安倍政権と総称するが、この第2期政権をどう評価するかをまず書いておきたい。

安倍政権を一言で評価すれば、「転げ落ちつつあった日本の状況をかなり持ち直させた」ということに尽きる。「歌手1年、総理2年の使い捨て」とは、故竹下元総理の言だが、この第2期の安倍政権がはじまるまでは、2年どころか「総理1年」が常態化していた(第一次安倍、福田、麻生、鳩山、菅、野田と、いずれもほぼ1年内外)。

相手に顔を覚えてもらえなければ、そもそも信頼醸成などままならないのは人間社会では当たり前である。第2期の安倍政権発足以前は、多くの国民が「今の総理大臣って誰だっけ?」と政治にあきれ返り、ましてや海外では「国際社会において名誉ある地位を占める」(憲法前文)どころか存在感ゼロの状態であった。日本の総理と言えば「安倍」となり、国内外で「政治」や「日本」の存在感を取り戻したことは、当然にあるべき状態を達成しただけとはいえ、実は極めて大きな成果だ。辞任会見を見つつ、私の胸にまず去来した想いは「ああ、ついにこの時がきたか。本当にお疲れ様でした。厳しい状況を立て直してくださって有難うございました。」というものであった。

攻めが目立った政権前半

さて、安倍長期政権の特徴を一言で言えば、私見では「攻めの前半、守りの後半」となる。まず、攻めの前半であるが、ここで言う「攻め」というのは、国論を二分するような難しい問題について方向性を打ち出し、成果を出したということである。具体的には、私は特に1)大胆な金融緩和、2)TPP加盟の実現、3)安保法制の見直し、の3つを高く評価したい。

いわゆるアベノミクスは、正確には財政出動や規制緩和も含む「3本の矢」での経済活性だが、実質的には大胆な金融緩和の代名詞と言ってよい。当時、多くの経済・財政学者がインフレリスクや逆にその無意味さなどから過度な金融緩和に疑問を呈していた。正直、私自身、色々な学説を見ながら、この時期に真に有効な経済政策は何であろうかと思い悩んでいた時分に、結果責任という政治リスクを省みずに、アベノミクスを打ち出し、リフレ派の黒田氏を日銀総裁に任命し、一定の成功を収めたのは、果敢な攻めの政治決断だと言ってよい。

TPPにしても、民主党政権時から加盟についての方向性は打ち出されていたが、党内の反対などで進み切れていなかったのが実情だ。農家の支援を政治基盤にしている自民党の方が、本来はTPP加盟を打ち出すのは厳しい中、オバマ政権との交渉の中で、「聖域なき関税撤廃が前提ではない」との言質をうまくとって交渉入りを主導し、途中トランプ政権誕生でアメリカが抜けるというアクシデントはあったものの、何とか11か国でまとめ上げたのは大きい。概ね道筋をつけたという意味では第2期の安倍政権「前半」の実績と言って良いであろう。

安倍政権発足時には、日本中にTPP亡国論が吹き荒れ、反対運動の嵐が巻き起こっていたが、当時、学生時代からの友人の某自民党国会議員と飲んだことがある。本人の本心としてはTPP加盟に賛成していたが、選挙区に多くの農家を抱える中、立場的にこれを認めるわけにはいかないと語っていたのが印象的であった。その彼も加わっていた「TPP参加の即時撤回を求める会」という自民党の議員連盟に、200人超が所属していたが、その状況でTPP加盟を実現させたことは政治的成果として特筆に値する。

2015年、TPP首脳声明を発表する安倍首相ら各国首脳(官邸サイト:編集部)

安保法制は言わずもがなだ。特に集団的自衛権を憲法改正せずに認めることについては、野党のみならず、多くのメディアや学者たちから、否定論が噴出しており、政権運営的な立場からは、支持率が低下することが火を見るより明らかな政策マターであった。保身を考えれば、絶対にやらない政策であると言って良いであろう。まさに「攻め」の動きであったと言って良い。

その他、安倍総理を前面に出してのオリンピック開催地へのチャレンジなども、負ければ評価を下げるリスクがあったわけだが、当時は既に国論を二分していた話ではない。基本的に皆賛同していた。そういう意味では、特に上記の3つについては、支持率低下や党内からの大反発という危険を敢えて冒しつつ、信ずる国益のために邁進したということで安倍政権を高く評価したい。

②に続きます。

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朝比奈 一郎
青山社中株式会社 筆頭代表(CEO)

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