日本は将来に向けて多くの難題を抱えています。「長期的な人口の激減→超高齢化社会」「財政累積赤字拡大」「周辺国との外交・安全保障」「新型コロナ等感染症」「地震・台風・集中豪雨などによる災害」「格差拡大」「働き方改革」など。
ところが問題は山積みなのに、国会議員の多くは次の選挙での当選が最大の関心事であり、その場を取り繕う事しか考えていません。
数十年前の高度経済成長期は、日本人の真面目さ、忠誠心、協調性が経済成長・生活水準向上に繋がりましたが、今や長期人口減少が続く中、国全体の経済成長などほとんど望めず、日本人の利点・美徳とされた特質が、時代に合わず逆に足かせとなってしまう恐れがあります。
以下、私の考える「リスクとなりうる日本人の特質10」です。
1.マスメディアや他者からの情報を信じ込みやすい
日本は世界(特に先進国内)でマスメディアへの信頼度が比較的高いというデータがあります。
(参照)諸外国で新聞はどこまで信頼されているのだろうか(2019年公開版)
これは日本人の人の良さの表れでもありますが、玉石混交の情報が渦巻く現代では、知らないうちにマスメディア等に扇動・誘導されてしまう恐れがあります。
コロナ禍でいえば情報番組等で恐怖感を煽られ、ゼロリスク症候群や自粛警察になってしまうことでしょう。
2.自分の意志を抑え、周り(世間)の目を気にした言動をとりがちである
電車内のマナー違反(アナウンス)や、子供を叱る時の「そんなことしたら周りの人に怒られるよ!」がわかりやすいでしょうか。
コロナ禍では、社会全体に過剰な自粛(移動・外出・飲食・集会制限など)への同調圧力が働き、多くの人や組織がそれに合わせてしまいました。
3.思考力・創造力に乏しいが、与えられた仕事は真面目に取組み最後までやり遂げる
従業員の忠誠心・責任感を頼りに高度経済成長時代に成功した働き方を、いまだに引きずっている企業・組織はまだ結構あるようです。
コロナ感染拡大期でも会社の方針で在宅勤務や休暇取得ができず、電車に乗って過密な都心へ通勤した人がかなりいました。
4.会議等での衝突・対立を避けるため、事前に直接根回しや調整を図る
(誠意を示せば相手もわかってくれるはずという思い込みがある)
まさに日本におけるスタンダードな会議の進め方かもしれませんが、多様化した現代では皆が納 得することは難しく、変化の激しいグローバル社会のスピードにはついていけません。
コロナ禍では、生の会議や押印決済(書類)重視の弊害が、テレワーク・在宅勤務・オンライン授業などの低い普及率に現れ、日本のIT化の遅れを露呈しました。
5.国民は「お役所頼み」で権威に弱く、施策や法規(ルール)に素直に従う
役人も職務に忠実であり、既定のルールを一字一句まで守る強い遵法意識があります。
仮に政府(上層部)の立法・執行に問題があったとしても、日本のシステム上直ちに運用停止→改定はできず、役人は法を忠実に執行しますから、お上を信じやすい国民にしわ寄せがいくことになります。
コロナ禍では、「入国制限」「緊急事態宣言」「感染症指定」などの施策が遅れましたが、一旦施行されたら今度は状況変化に合わせた柔軟な対応(改定)ができません。
6.面と向かって相手を批判しないが、当人のいない所やネット上で悪口・不満を言う傾向がある
つまり陰で文句は言う割に自ら行動を起こす人は少ないという事です。
コロナ感染症対策への批判はネット上ではかなり見られますが、政府や御用学者達は大人しく行動を起こさない国民性を見抜いているのか、あまり気にかけていないようです。
7.慎重、悲観的で不安感が強く、パニックに陥りやすい
定期健康検診をこまめに受け、老後の生活のために貯蓄することの多い日本人は、生存への執着が強く長寿の要因の一つとなっています。
ところが予期せぬ事態が発生すると集団ヒステリーに陥りやすく、過去の米やトイレットペーパー同様の買いだめがコロナ禍でも起こり、マスクが長い間店頭から消えました。また新型コロナ感染に日々おびえ、疑心暗鬼になる人も増えています。
8.生産性・合理性・専門性(スキル)・改革より、やる気・協調性・学歴(学閥)・慣例を重視する傾向がある
高度経済成長期には休まず長時間働き、与えられた職務を全うすれば昇給や出世につながったはずですが、今や終身雇用が崩れ非正規雇用も増加、賃金も長期にわたって上がりません。
ところが未だに慣例・慣習に縛られ、従順な社員を非効率に働かせる組織も多くあり、日本の低い労働生産性はなかなか改善されません。
コロナ対策では、旧態依然とした政府―自治体の非効率な助成金や給付金手続き方法により、市民の手元に中々お金が(マスクも)届きませんでした。
9.親切、世話好きで利他的に行動できる人は多いが、相手が応えてくれないと攻撃的、排他的になりやすい
中野信子氏の著書「空気を読む脳」には、「利他的に生きる人ほど、裏切られた時反動で攻撃的になりやすい」とありますが、人は良かれと思う言動を無意識に絶対正義化しがちであり、応えない相手に「なぜわかってくれない!」と怒りをぶつけがちです。
コロナ禍のマスク警察、自粛警察がまさにそれでしょう。
10.地理的特殊性や経済発展も影響し、国民は安全保障・危機管理の意識が低い
日本はユーラシア大陸の東端に位置し、建国以来一度も武力で占領されたことはなく、言語・宗教を始め日本文化が抹殺された歴史はありません。
また戦後75年、日本は戦争・紛争のない平和な時代が続いたため、日本人は平和を維持する努力が疎かになったようです。
コロナ禍では、外国からの入国制限が遅れ、他国の戒厳令(国の強権発動)に相当する法律がないため、強制力のない「自粛要請」という奇妙な施策が行われました。
このようにコロナ禍での政府・自治体の施策や国民の行動は、パニック・不測の事態に弱い日本人(社会)の特徴を明らかにしましたが、私たちは将来のリスクを回避するため、どのような思考・行動様式を身に着ければよいのでしょうか?
簡単に言えることではありませんが、私は次のようにイメージしています。
「国民一人一人が情報リテラシーを身に着け、物事を客観的合理的に捉え、主体的に決断・行動することで自己解決力を高める。また広い視野で国際情勢を注視して危機管理力を高め、真の“国民主権”を実践する。」
これらが身に着くことで、日本人が元来持っている良き精神・美徳もうまく活かされるのではないかと思うのです。