柿崎記者の補佐官登用報道にみる、菅政権の強みと弱み

2020年09月28日 11:31

共同通信サイト、官邸サイトより引用

この週末、菅政権が、共同通信の柿崎明二・論説委員を首相補佐官に登用する方向で検討していることが報じられ、ネットで話題になった。

スクープをしたのはサイゾーの電子版。24日深夜に配信し、

菅政権の“目玉人事”が判明! 共同通信・柿崎論説委員が首相補佐官に内定の裏事情

約1日空けてから、北海道新聞も追いかけてきた。

首相補佐官に柿崎氏 政府検討(北海道新聞)

共同通信の配信原稿なのかはわからないが、共同系の47NEWSで配信もしていることから、ほぼ確定的な人事とみていいかもしれない。万一、漏れたことで内定取り消しになり、柿崎氏が失業するような事態になると気の毒でしかないが、いずれにせよ、人事を検討する動きがあったのは間違いないようだ。

左右ともにボロクソの評判だが…

一方で、ネットの反応をみていたら、保守、リベラルを問わず不評だ。柿崎氏はテレビにもよく出演し、安倍政権に辛辣な物言いをすることで知られていた。政権支持の保守層からすると、菅首相に、アンチ自民系のリベラル側からすると、柿崎氏に、それぞれ「裏切られた」ような印象が強いからだろう。

サイゾーの報道は政権に批判的なスタンスをにじませながらも、ストレートニュースに重きを置いた分、柿崎氏の覚悟を代弁するかのような匿名の政治部デスク氏のコメントでバランスをとっている。これが同じサイゾー系のメディアでも、反権力の急先鋒としておなじみのリテラは容赦ない。

政権に批判的なメディアやジャーナリストにまで手を伸ばし懐柔する菅首相

といったトーンで、補佐官登用後の柿崎氏を使って政界、マスコミ工作をするなどと警戒をあらわにしている。

菅首相が『ひるおび』で安倍政権批判をしていた柿崎明二・共同通信論説委員を首相補佐官に! リベラルも取り込むメディア工作(リテラ)

改めて言うまでもなく、日本の大手メディアの政治部記者の中には、ある種のエージェントとなって政治のプレイヤーとして動く人がいることは、いまや公然の秘密だ。

柿崎氏が同じ秋田出身である菅首相に食い込んで、最近話題の中曽根元首相にとっての渡辺恒雄氏のようなブレーン的な立場だったのかもしれないが、一つ疑問なのは、政界、マスコミ工作といえば、小泉政権で首相秘書官をつとめ、安倍政権では特命担当の内閣官房参与だった飯島勲氏が有名で、先頃再任したばかりだ。

多様な情報収集が力の源泉

菅氏と飯島氏の関係性が悪い印象はなかったのだが、もし柿崎氏登用となれば、左派の人たちが警戒するような「裏仕事」は飯島氏とダブってしまうようにも思う。

もちろんインテリジェンスの世界は、さまざまな情報ソースを増やしておくことが重要なので、飯島ラインと柿崎ラインで役割分担をするのかもしれない。

菅氏の力の源泉が生の情報収集力にあるのは間違いない。きのう(9/27)の首相動静によると、アゴラでおなじみ渡瀬裕哉氏と面会していた。アメリカ大統領選の動向についてレクチャーを受けたとみられるが、これまでの首相であれば、会わなかったタイプの有識者だろう。

それこそリテラが指摘するように、お友達としか会わなかった安倍首相と違い、菅氏の人脈は幅が広い。都合の悪い情報こそ部下に上げさせていた後藤田正晴・元官房長官を想起させるが、永田町・霞が関の論理に埋没して視野を狭めないように細心の注意をしていることはわかる。

ではなぜ記者経験者を雇うような大胆な人事をしてまで情報収集に力を入れるのか。

ここで小泉政権との類似性を挙げたい。最近、筆者が書いた以外にも菅政権と小泉政権の類似性を指摘する人が増えてきた。

菅首相の改革路線は小泉政権型? 本格的な規制改革で共通点も…実務問題対処型に大きな違い(夕刊フジ:高橋洋一氏)

「角栄」「小泉」「橋龍」…菅首相はどのタイプ?(産経新聞)

「飛耳長目」登用が示唆するリスク

自民党総裁選で圧勝した菅氏(公式Youtube)

先の総裁選に至るまでの過程で、あっという間に主要派閥の支持を取り付けたように、派閥間のパワーゲーマーとしての菅氏の実力は、歴代の官房長官でもトップクラスだ。ただし、産経の記事に出てくる一橋大・中北浩爾教授と私の意見も一致だが、かの小泉政権も初期は党内基盤が盤石だったとはいえず、菅氏は当時の小泉氏以上にコアの足場があるとは言い難い。

つまり、菅氏は、党内情勢についても常に神経をとがらせる必要がある。官房長官人事では意中の梶山弘志氏を据えられなかった。いまは勢いがあっても、風向きが変われば党内に「菅下ろし」の風が吹き、官邸が「孤塁」と化す恐れは大いにある。

そうならないためには政局の見極めが生命線だ。国会議員や秘書とは違う観点、ルートからの情報を含めて次の行動を判断したい。そして、その任を任せられるのは極めて信頼ができ、かつ情報収集力があり、時には「密使」もできる人材が必要となる––。

小泉政権時代は飯島氏がまさに党内情勢も含めて「飛耳長目」の役目を発揮したが、菅氏が柿崎氏に白羽の矢を立てたのは、そういうことではないだろうか。

優秀な飛耳長目の配置は、菅政権の強みであると同時に、それは弱点への「不安」を示唆するようにもみえる。

P.S  もし柿崎氏が登用されるのであれば、将来的には政界転身で故郷・秋田からの出馬なども考えられるが、補佐官退任後に、政治家になるにせよ、大学教授になるにせよ、執筆など記者経験を生かした「歴史的記録」をどこかのタイミングで公表していただければと思う。

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新田 哲史
アゴラ編集長、報道アナリスト

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