豪雨災害は「激甚化」「頻発化」などしていない

2020年11月03日 06:00

前回、防災白書が地球温暖化の悪影響を誇大に書いている、と指摘した。今回はその続き。

白書令和2年度版には、「激甚化・頻発化する豪雨災害」という特集が組まれているこれはメディアにもウケたようで、「激甚化・頻発化」という記事が毎日のように出てくる。

確かに、令和元年にも水害がいくつもあったのは確かで、白書にはその状況が詳しく書かれている。

けれども、本当に「激甚化・頻発化」しているかどうかは、統計を見ないと分からない。

じつは白書の附属資料には統計がきちんと載っている。見ると、自然災害による死者・行方不明者は、かつてに比べて激減していることが解る(附属資料p7)

図中左側には、枕崎台風、カスリーン台風、南紀豪雨、洞爺丸台風、伊勢湾台風などで、数千人の死者が出たことが示されている。

図中右側では阪神淡路大震災と東日本大震災が突出しているが、豪雨災害で何千人も亡くなることは無くなった。

次に、災害の被害額を見てみよう。附属資料p34に図が出ている:

これを見ると、被害額も減る傾向にあり、それは対GDP比でも減っている。平成7年の阪神淡路大震災と平成23年の東日本大震災は突出しているが、これは豪雨とは勿論関係無い。

なお被害額死亡数ほど減っていない。これは世界的な傾向であり、原因は災害に脆弱な土地に建築物等の資産が増えてきたことだ。

このように、被害の統計を見ると、豪雨災害が「激甚化」「頻発化」しているとは言えない。防災白書は、何を以て災害が「激甚化」「頻発化」していると言ったのだろうか。印象に残っている豪雨災害を列挙するというだけでは、科学的な報告とは言えない。

勿論、豪雨災害は無くなっておらず、防災投資は今後も必要である。だがその理由は、豪雨災害が「激甚化」「頻発化」しているからではない。地球温暖化のせいでも無い

歴史的に豪雨災害が減少したのは、防災投資の賜物だ。川辺川ダムが建設されていれば、今年9月の球磨川豪雨の被害は大幅に軽減されたと試算されている

平成年間に、日本の治水事業費は大きく減ったとされる(下図)。いま為すべきことは、必要に応じて、ダムや堤防などへの投資を進めることだ。

防災白書は、誤ったレトリックで人々の不安を煽るのではなく、正攻法で治水事業のあり方を論じるべきだ。

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杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

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